65.水音の導き
「相棒も感じる?」
こくりと頷く相棒に、お互いが何か違和感を感じているということは、やはりこの場所になにかあると思う。
「目に見える範囲では一から五番のみ……少し周りを歩いてみよう」
さらりと乾いた土は水も弾きやすい粘土質の材質のようでしっかりと水に対しての場所が考えられている。こういったオアシスがある街は、元々オアシスが存在した場所に人々が水を求めてそこから街が発展していく場合がほとんどなので、この場所も加工はしてあるけれどほとんど自然の環境化で工夫されてできているようだった。
山と土と川と……すべてがうまく融合されてこの都市はできているんだろう。そうでなければ城を山と同化させて作ったり、城の前に川が流れていたりはしないだろう。
五番の水管近くまで歩いた時、ふと……なにか音が聞こえた。
すぐさま音の位置を確認しようと耳を澄ませる。相棒も感じたようで、辺りを散策する。
小さな水音だと思われる音が、目の前の水管の群からではなく別の場所から聞こえる。
微かな音を頼りに、小さな音一つも逃さないようにその場を縦横無尽に歩く。
音はどうやら下から聞こえるようで、地面に耳を近づけて確認したところ少しだけ音が大きく感じた。この場所自体が地下なのに……さらに地下があるということの証明だった。
相棒がこの広い空間の端の方で立ち止まり手招きしている。なにか見つけたんだろうか。
「相棒……なにか見つけた……?うん?これは……」
どうやら地面にわずかな切れ込みが見える。この四角い切れ込みがどうやら開く仕組みのようだった。近づいたとしても、何かが地下にあるという意識がなければ気付かないかもしれない。かなり巧妙に隠されていた。
「開け方……うーん」
四角い場所に手を置きながら、擦っていく。なんの変哲のない地面にしか見えないけえど、少しだけへこみを感じられて息を吹きかけながら手で土を払うと、その場所には刻印が押されているようだった。土を書き出し刻印の細部が見えるようになると、その刻まれた文字を読む。
『 』
◆
「毎日毎日やめましょう。お身体に触ります」
「私が勝手にやっていることだ」
「ですが……御身に何かあれば……」
月光に照らされて、長身の男と声高な少年が話している。
「……私を守りきる自信がないのか?」
「そんな訳ありません。この命に変えても」
「やめよう。そんな命に関わる話はしていない」
「ですが……」
長身の男が少年の護衛のようで、少年は主君特有の堂々とし佇まいで落ち着いていた。
この場所にいること自体が本来危険なのは少年自身も気付いているようだった。
「……これは、私の意地なのだ」
意地。それは少年以外には到底分かるものではなかった。
「それに聞いただろう?城下の噂を……」
「門が開いた、と……」
「そう、まさに今日このときいらっしゃるかもしれないだろう」
ガコン……
「後ろへ」
夜闇の静けさに岩音が突然響いた。
護衛の男はさっと少年を自分の後ろへと隠し、前方へと剣を構えた。
「……私はなんとしても、会わなければならないのだ。星人に」
小さな……小さな声が水音に響いては消えていった。




