60.入国騒動
星人は周りに認識されづらい。それはこの世界に生きる人の共通認識だろう。むしろ星人の存在を知らない人もいるかもしれない。そんな存在だけど、あくまで姿が見えづらいだけだ。願いの強さで僕の認識は変わる。そう、意識していないと見えないけれど僕以外は見える。つまり、星人専用の門が動くのは誰からの目からも一目瞭然なんだ。
「あれ、もしかして……そこ開いてないか?」
「はぁ?もう何年も開いていない。嘘を言っても列は短くならんぞ」
「お役人さん見てよほら!開いてるって!あそこから入っていい?」
「駄目に決まってるだろ。ったくそんなわけないだろ。この門が開くなんて……」
「あ、開いてる…………!」
そんなやり取りが後ろから聞こえながら僕は素早く入り、小走りに城門から離れる。そうしないと大変なことになるからだ。そう、以前の都市でも起きたことがここでも起こりうる……。それだけは避けたかった。
巨大な都市は防衛のために夜は城門を閉めるのが基本の為、姿を隠して出入りすることは難しい。それなら速く入って速く離れるのが一番だった。その計画を実行した矢先に、……やはり気付く人は気付くのである。
「ちょっと待て、入国審査は一時中止だ!」
「なんでだよ!こんなに俺たち待ったんだぞ!そこの門からでもいいから列分けて入れさせろ!」
「一大事だからだ!あぁどうすればいいんだ……どこの部署に報告だ。王侯貴族にも報告しなければいけないのか」
「ん?開かねえ……なんで?」
「勝手に開けようとするな!本来開かないんだ!そこは!」
「さっき開いてたじゃねーか!なんだよ!」
「……この門は、幻と言われる星人さまが開けられる門なんだ」
「は?」
「……つまり?」
「今その星人さまがここを通った可能性がある」
「はぁ!????」
「誰かここに通った人を見たか?」
「いーや?」
「見てなーい」
「……少年が通ってなかった?」
「まじか!」
「たぶんだけど……」
「まさか星人さまが炎都に!なんて幸運なんだ」
「あなた星人さまを見ることができるなんて一生にあるかどうかよ!おめでとう」
「星人ってあの絵本の?」
「え、実在する?」
星人に対して伝承ベースで一から十まで語り合っている入国審査列は大いに盛り上がっていた。この程度ならまだいい。以前向かった場所では門を通った瞬間に鐘がなり響き暫くはお祭り騒ぎが続いた。そう、門を、通っただけなのに!星人はある種縁起ものと思われている節がある。以前の土地はそういった風習が強いんだろう。出会うことができない存在がそこにいるという証明がいわゆるあの門にはある。あの門が動いた、つまり星人がこの土地に入ったと同義なのだから。
じわじわと広がっている言葉に不安を覚えながら、僕は黄昏色に染まりつつある街並みへと足を踏み出した。
火の都、炎都にて拠点を置く場所を探すために。
そして、この土地で僕たちを呼ぶ……願いが強い誰かに会うために。




