59.火の都、炎都ソルヤ
僕たちが火の都、炎都ソルヤに着いたのは五宿場町を出発してから三日ほど経った頃だった。この砂漠地域の村や街のどこよりも大きく、砂漠地帯すべてを収めているその名の通り巨大な都市である。
ぐるりと城塞で囲まれ、外から見ると無骨だが、堅牢さが見て取れる。人の流れを見る限り三方に城門があるだろうと予測される。
驚きなのは、奥に見える聳え立つ山。その山をくり抜くかのように、いや、建物がそのまま山と一体化しているといったらいいのか……色合いは派手ではないが、細かな装飾が施してある。そして山の色と壁の色は近しく、遠くから見ると山にしか見えないそこはまさにこの都市の頂点が住まう場所だろう。
砂漠地帯ではオアシスの近くに生活を興すことが基盤になる。すべての生物にとって水は命の糧となるため、カルゾンが賑わっていたのも比較的大きいオアシスがあったからだ。
ただ都市は規模が違う。水源が豊富であり、近くには川が流れきっと地下には水脈があるのだろう。
「入国は並んでくださいー」
「身分を証明するもの、滞在日数、理由、入国金をご準備ください」
「仕事で来ている者はこちらの列へ」
「身分の高い方は別の門をご案内しています」
城門の近くまで足を運ぶと、そこは入国待ちの人々で溢れかえっており、忙しなく国境警備官が出入口を行き来し、声を張って各人を割り振り案内していた。
「これ今日中に入るには難しいんじゃ……」
「近くで野宿して手続きは明日にするか……幸い夜には一旦城門が閉じるから朝に並んだ方が効率がいい」
近くからはそんな会話が聞こえてきた。夕暮れが近づいてきているため、急いでいない人たちにとっては早朝に挑戦したほうが並ぶ時間も短縮できるだろう。
僕たちは、というと……実はこういう大都市には専用の門がある。
もちろん星人専用の門である。
目的がない状態であれば並んでいる人と同様に長時間並ぶことも視野にいれたけれど、この都市に呼ばれたという名目がある。その場合は星人の名を使うことが許されており、むしろ使わないと長からお叱りを受けることもある。……僕自身、こういう特別扱いみたいなことは好きではないし、これから起こることを予想するとあまり使いたくはない方法だった。
「あ……見つけた?シェリィラ」
あの日から、相棒と呼ぶと睨まれるのでなるべく名前で呼ぶようにしている。だけど、まだ慣れないのでたまに相棒と呼ぶのも許してもらっている。僕自身、彼女を相棒と呼ぶことに慣れ親しんできたし、旅の相棒の意味でももちろん好きだったのでそう説明した時にたまには呼んでもいい……とシェリィラが納得してくれてよかった。
シェリィラは星人専用の門を探し出してくれたようだ。この手の門は星の妖精の力を借りると見つかるようにできている。
「案外近くにあったんだ……」
その門は、一番大きな門の隣にそっと備え付けられていた。普通なら厳重に管理されている城門だが、この門だけ誰もいない。星人以外には絶対に開かない門だからだ。ポストと同様に、大都市にはこういった星人特有の作りがある。
長蛇の列を横目に、そっと星人専用の門へと近づく。
星人である証を手に持ち祝詞を呟くと、城門は静かに開き僕たちを都市へと招き入れた。




