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星人の旅路  作者: 華世
道すがらⅡ
57/89

57.美しくも可愛い貴女へ

寝る準備は整えたけれど、まだ睡魔は訪れず、暫く空を見上げていた。

こうやって何も遮らない空は次にいつ見れるだろうか。砂漠では比較的に見やすいとしても、雲があったり、雨が降ったり、雪が降ったり、自然の気候は容赦がない。今見ているこの星空が、最近では一番綺麗だった。……そう思うと居ても立っても居られなくなって、思わず頭で算段をつける。近くの小高い丘に行くにはどうするか。


「相棒、まだ起きてる?」

少し浮遊しながら空を見上げていた相棒は、こちらを向いてこくりと頷いていた。

「今から少しだけ冒険しない?」

すぐそこだから……そう言って、僕は相棒を連れ立ってテントから抜け出した。すぐ近くのテントが見える距離の小さな丘。そこからならさらに綺麗に星空が見えるだろう。

すぐ戻ってくるつもりなので、簡易的な補助の力をテントにかけておく。この時間、外を歩く人はめっきり減ったがいないわけではない。寝袋をテントの中で少し経たせておいて、人型へと偽装させておく。ここまでしておいてなんだけど、星人は認知されにくい……持ち物のテントも。いわゆる護身用だと言い聞かせておく。

丘へ行くためには紋様の道を少し外れることになる。大切なことには能力を惜しまないようにしているので、ここぞとばかりに自分自身と相棒に魔物害獣避けの補助をかけていく。他者からの認知はお互いに極限まで下がっているだろう。そして、紋様を外れた瞬間突き刺すような寒さに襲われた。相棒はあまり感じられないようだったのでひとまずほっとした。僕自身は、ある程度予想していた為少しは厚着をして対策したけれどあまり意味はなさそうだ。これは早めに目的を達成させるしかない。


「こっち」

テントから見た先の、丘へと登っていく。砂と岩で登りにくいけれどこれも旅の醍醐味というゼノの言葉が思い浮かぶ。ちょっと滑っても、足を取られても、関係なく進んでいく。僕は、今日、これから伝えるのだから。


「ふーーー……到着」

凍てつく寒さに紋様の道の恩恵をしっかりと感じた。そして丘から自分たちのテント、紋様の道、遥か先まで広がる広大な砂の大地を、夜闇がしっとりと染め上げ、地平線を中心に上下で綺麗に分かれているその景色はまさにここでしか見れない景色と言えるだろう。その上に点々と続く紋様の道の灯が平和を象徴しているようだった。この光の道は悪しきものは踏み込めない。そう、伝わってくる。


「相棒……心配しなくても大丈夫。うん。ここに」

相棒はこの寒さを心配してくれているようだった。たぶん寒くてどんどん熱を奪われているせいで顔色が悪く見えるんだろう。あと、急に連れられてきたのも困惑しているみたいだ。でも、今日、この景色、空の綺麗さを逃したくなかった。

「寒いからこそ、星は綺麗に見えるって聞いたことがあるけど……本当だね」

「……?」

早くテントまで戻ろうと伝わってくる。うん、これを伝えたら。




「シェリィラ」



夜空を見ながら言ったから分からなかったかもしれない。相棒もシェリィラ?と伝えてくる。

「うん。相棒の名前。どうかな……」

目をぱちぱちとしながら、シェリィラ……と反芻しているようだった。僕は僕で少し緊張する。嫌だって言われたらどうしよう、とか……あと意味とか聞かれても恥ずかしくて答えたくない……。でも響きはすごくいいかなって思ってる。

ちらりと相棒の反応を伺ってみたら、笑顔で星空を見ていた。これは喜んでもらえているんだろうか。すぐに嫌と言われないということはつまり良いということで……一人空回っている気がする。


「え……?嬉しいから自慢したって……え!??」

あ、相棒!???空を見上げているなと思っていたら、星神たちとお喋りに興じていた、と……。そ、そんな……普段儀式の時しか話さない星神たちに!?僕はもう驚きと恥ずかしさで、もう、もう、勘弁してほしい。

「相棒、ちょっと……あの、嬉しいのは分かったから……落ち着いて…………」

相棒に星神に自慢するのをやめてほしくて、限界なことを必死に伝えているのに、またしても相棒は爆弾を落としてきた。


「長にも……伝えた?」

もう、もう僕耐えられないかも……長に伝えたら必然的にアヴェルティにも伝わってしまう……ゼノさんの恥ずかしい気持ちが初めて分かったかもしれない。ごめんゼノさん。


「あいぼうっっ!!もう、本当にっ!え、なに、違う?」

珍しく怒った顔をしてにじりよってくる相棒は、ばしばしと僕に伝えてくる。今は相棒と呼ぶなと、気分がいいから、と……。うぐ。


「~~ッシェリィラ!」


もう戻ろう!そう伝えると笑顔でシェリィラは頷いてくれた。


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