56.砂漠で野宿
「じゃあ、僕たちは次の宿場町に向かうので……お部屋ありがとうございました」
「うん。……本は次の五で返すのかな?」
「はい。それまでは今の本を読んでから返却します」
「分かった。……行ってらっしゃい」
「!……はい。きっとゼノさんならすぐですよ」
「いや、ごめんそんなつもりで言ったんじゃないよ」
夕方に差し掛かるまで図書館で本を読みながら、日が落ちてきた頃に四宿場町を離れることにした。これはお昼を食べてから相棒と決めたことで、砂漠で野宿をしてみようという挑戦だった。本来なら砂漠で野宿なんて無謀もいいところだが、この場所に至っては紋様の道がある。
この道は最低限の熱源を日中にため込む仕組みすら組み込まれているため、急な寒暖差を緩和してくれる役目がある。つまり日中はそのまま暑いけれどその熱を夜の冷えに生かしてくれるということだった。この仕組みがあるからこそ、補助道具は細かな装飾がしてあるんだろう。そして暗くなってくると安全に歩行できるように補助道具の杭に小さな光が灯るようになっている。光源は小さくても、宿場町から宿場町へと伸びている無数の補助道具から成り立っているため、この紋様の道は近くからも遠くから見ても、とても幻想的に人々の目に映るだろう。
この道があるからこそ、夜に移動する人もいれば、道の隅にテントを張って野宿をする人もいる。もちろんこの場所のこの仕組みがあってこそなので他の場所ではありえないことだ。そう自慢気に話すゼノは実はまだ自分も行ったことがないと言っていた。夜の道は図書館の窓から見えるので知ってはいるけれど、行く前に契約が完了してしまったようだった。
「よし、この辺にしようか」
場所を確認しながら相棒に声をかけテントの設営に取り掛かる。星人は基本的に放浪するので野宿などの基礎知識は必須であり、これまでも旅をしてきたこともあってテントを張るのはお手の物だ。……料理は素朴なだけで。相棒が借りてきた本の威力を発揮するのは次の宿場町を出た先かもしれない。なんたって今日の夕飯はゼノから持たされたお弁当だからだ。
「よし、テントの設営完了。カンテラ吊るして、毛布も敷いたし……本と、あと……」
相棒がくいっと僕の袖を引っ張り上を指さす。そうだ、見渡す限り何もない砂漠だと星の煌めきを遮らない絶好の場所だ。テントには上部が窓のように開く仕様になっているため、そっと開けて上空からの明かりも取り入れる。
早めに夕食のお弁当をとり、静寂と夜のとばりが落ちるまで静かに本を読む。ちなみに本は相棒のものも含めてほとんど読み終わっている。……実用的な話ばかりでとても勉強になった。本題は……頭ではたくさんの案が出ては消えている。悩みすぎはよくないと分かっているので、きっと一番初めに考えついたものになるだろう。そう考えつつ、そっとテント内で横になる。
上空には見渡す限りの星空で、いままで見てきた空がいかに小さかったかが分かる。この空の下では、すべてがちっぽけで何の力も持たない。ただの個として上も下もない。目を瞑るとまるで世界の一部に溶け込んだような怖さがある。でも暗闇じゃないだけでこんなにも安心感がある。そう、星神はずっと見守ってくれているんだ。
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昔オーストラリアで見た外套がない星空が今まで見た中で一番綺麗でした。




