54. 知らずに擦り減っていた
こんなにも小さい叶え石は初めて見たかもしれない。ただ、小ささの中に底知れない力が宿っている。そう感じるぐらいには透き通りながらもしっかりと輝き続けている。
「これは……?」
「それは叶え石と言って、ゼノさんの願いを星が聞き届けて具現化したものです」
「これが……星が……」
「そうです。ゼノさん、星ってずっと僕たちを見守っているんですよ。……夜の暗闇には目立つだけであって、日中もずっと。この叶え石はゼノさんの願いを叶えたい星の意志が詰まっているんです」
「すごい……」
ゼノは叶え石を右手の人差し指と親指でつまみながら星にかざし、叶え石の綺麗な断面によって光が乱反射していた。
「この叶え石はゼノさんの願いそのもの。ゼノさんは、できる限り毎日、星が見える場所でこの叶え石に触りながら願い事をしてください」
「願い事って、あの流れ星に三回みたいなああいう感じでいいのかな」
「そう……ですね、地域によってそのあたりの表現は様々ですが……この石は流れないです。真剣に祈ってください。それを星が見ています。 あなたの選択と行動を」
「願っただけ、その分見合った行動をしないといけないってことだね」
「物事の選択には必ず取捨選択があります。やる、やらないも、あなた次第。ただ、自分の信念に基づく行動を星は見て、あたなの力になろうとすると思います」
「そう……」
ゼノは今の説明でこの儀式が絶対ではないと分かったようだった。自分の行動次第。それこそ、本当なら僕と出会わずに自身が行動を起こしていたらもしかしたらなんとかなったかもしれない。そこまで考えても、その行動に移すかどうかのきっかけと言えばいいのだろうか。星人はそういう存在だと僕自身も思っている。確かに能力の強い星人であれば、願いは叶えられるかもしれない。ただ、能力の強い星人には制限が必ずある。物事は簡単に進むということはないんだ。
ゼノの頭の回転の速さには目を見張るものがあり、星人である僕と出会うことで今までの抑圧されてきた感情が表に出ればいいと思う。きっと外に出た彼は、今以上の実力を発揮することだろう。
「僕は、…………何度も、何度も、それこそ気が狂いそうになるほど、初めは外を切望していた。でも、出られないと分かってからは、法則を考えた。自分自身の契約だから、考えれば考えるほど仮説が出た。時間だけはたくさんあったし、幸いにも図書館……書物を読み込み、仮設をひとつひとつ潰していった。そうしているうちに、別の砂上図書館に移動できると分かり、行動範囲が広がった」
きっと想像を絶する日々だっただろう。
「ただ僕はそこで、満足してしまったのかもしれない。外に出たかった気持ちはどんどん擦り減ってしまっていたんだ」
きっと図書館の管理者への役目へと知らず知らずに転換していっていたんだろう。
「だから」
「リノ君、君に出会えてよかった」




