53.輝きの石
相棒が存在感を強くしてふわりと浮いた。浮遊することは妖精のスフィにとって自然のことなのでう少し浮いて僕とゼノの手をふんわりと覆う。
ゼノの手が意外と大きくて僕の手じゃ覆い切れていなかった部分に相棒の手が当たったらしく、ゼノは激しく動揺していた。
「っえ!?リノ君??あの、僕と君以外に誰かいる?さっき小さい声で相棒って聞こえたけど、あ、相棒さん??なの?」
ゼノは律儀に目を瞑ってくれていたけれど、もう開けたくてしょうがないと言わんばかりに瞼がぴくぴくと動いている。相棒を見つめると、今回は姿を見せていいということで、許可ももらえたのでゼノにも目を開けていいことを伝えた。
「……美っていき過ぎると目が痛いって今知った」
いつものゼノに比べたら格段と語彙が少ないと感じたけれど、相棒の姿がよほど衝撃的だったようだ。相棒をちらちら見つめながら目をしぱしぱとさせている。
相棒も嬉しかったのかいつも以上ににこにこしながら手を覆っている。
「リノ君、こういうことはちょっと早く言ってくれないと心の準備が……」
「?すみません。彼女は星人の相棒の妖精のスフィです。相棒は僕専属?って言っていいのかな?儀式のときはいつも相棒が姿を見せてもいいかどうかで変わるので、言えなくてごめんなさい」
「あ、うん悪気がないのも分かってるからいいんだ。ただ驚いただけで」
ゼノはどうやら契約の時から外界との接触が少なく、図書館は静かで話すときは貸出と返却ぐらいなので女性に免疫がないようだった。僕が妖精と言っても見た目が女性ならどうやら緊張してしまうようで、しどろもどろの様子だ。
「儀式を終えたら相棒は少しだけ控えててくれる?」
「いや、その……大丈夫、です。彼女に他意がないのも分かってるんだ。僕が……緊張しているだけだから気にしないでほしい」
「……分かりました。じゃあもうすぐ日が昇ってしまうし、相棒……」
相棒に声を掛けると、目を瞑ってゼノの手に凝縮されていた願いの塊を僕を通して吸っていく。いつもこの通り抜けていく感覚は人によっても、願いの種類によっても異なる。ゼノの願いはすごく複雑で、僕が理解でいる範疇も超えているぐらいに絡み合っているように感じた。
目を瞑っていた相棒がゆっくりと瞼を開いていき僕と真っすぐ視線を交わす。
お互いが十分に願いが集まったと感じたため、いつもの言葉を発する。
『エティリオス』
明け方近い図書館には人は誰もいないようで、静かで凪いだ砂漠特有の空気があった。月と星明かりに照られた僕たちの足元から星人の模様の陣に沿って光が立ち上る。相棒によって集約された願いの光は。上空へと放たれる。窓があっても星が見えていれば問題なく光は通過するため、暗闇の砂漠に一筋の光がまるで流れ星かのように上空へと昇っていった。
「綺麗だ」
じっと僕と相棒を見ていたゼノだが、相棒が放った光を目で追って上の窓……さらに奥の満天の星へと目を奪われていた。
相棒もいつものように上空の星神と会話をしていたようだったけれどすぐに僕に伝えてきた。ものすごく早く決まったと。今までで最速なんじゃないだろうか。それだけ星もきっとゼノのことを心配していたんだろう。
「ゼノさん、手を開いていいですよ」
「……あ、あぁ……」
相棒と僕がそっと手を放して、両手を握ったままのゼノに伝える。ゼノは先ほどの光景が忘れられないのか反応が鈍かったけれど、僕に言われるがままにゆっくりと手を開いた。
「……綺麗だ」
そこにはとても小さい、小粒ながらに光輝く叶え石があった。




