52.諦めるのをやめる
星人の大きい円形模様の中心に立ったゼノ。そしてもう一つの円の上にリノが立つ。
「ゼノさん、手を出してください」
「……手を?こう?」
「はい」
リノはそっとゼノの手を取る。ゼノが両手を出したため、その両手をそっと合わさせて、さらにその合わせた両手を自分の両手で包んだ。その行動に驚いたのか、ゼノの肩が不自然に上がったので今度からは声を掛けて行おうと思った。
「……ゼノさん、目を閉じてください」
「わ、分かった」
緊張しているだろうゼノを落ち着かせるようにゆっくりと話す。
「叶えたい願いを強く思い描いてください。僕に言ったこと以上の願いがあなたにはあるはずです。言葉にしなくても、星には伝わります。そして、これからはその願いに見合った選択をしていってください。あなたは今まで何度も何度も試して、それでも出られなくて諦めたかもしれません。でも、ここには僕たちと、上には星と、強い願いを持つあなたがいる。諦めるのは終わりにしましょう」
「…………っ」
ゼノがすぐに諦める性格とは思えない。どれだけのことをして、そして心を折られてきたんだろうか。自分自身の契約だったのにも関わらず自分で解けない歯がゆさは想像を絶するだろう。
出ることを諦めてしまった彼にはこの図書館という場所の、自分がいなくても大丈夫だという不安をなくしていかなければならないはずだ。
「選択のアドバイスですが、まずあなたは働きすぎです。人に頼ることを覚えた方がいい。あなたを心配している人は思ったよりもすぐ近くにいますよ」
「……ぅ……」
顔色もそうだし、仕事量も尋常じゃない。さらには休みがほとんどない。一体どれだけの時間を過ごしてきたのかは想像できない。ただ、そこには少しの優しさがあったはずだ。きっとゼノを見て、仕事を手伝ってくれる人。なにより、炎都の厨房の人。きっとゼノのことを知って、いつでも温かい料理が出せるように工夫しているとしか思えない。ゼノが転移させる時間は決まっているわけじゃないのだから。……図書館から出られないゼノにとって、それらはどれだけ心休まる事柄だろうか。
「これは僕からの提案なんですが、あなたがヴェンディーと図書館に救われたと言っていましたが、今でもヴェンディーには子どもたちが店をだしたりしていました。そういう子どもたちに図書館のお手伝いを頼むのもいいかもしれません。報酬は字や知識……ゼノさんが出会えた人のように、今度はゼノさんが彼らにとってのその人になるかもしれません」
「…………できるだろうか」
「あなたがずっとここにいて、きちんと図書館の責任を全うしたから、だからこそ僕がここに辿り着いて、今あなたと話しているんだと思います」
星人は、願いが強い場所へとスフィに導かれる。目的地は炎都だったけれど、確実にこの図書館を通ると見越しているならば、彼の願いを叶えたいと星が思うには十分すぎるほどの流れだった。
どこまで相棒が分かっていたのかは分からないけれど、すべてを見通すかのような瞳で彼女はそっとゼノを見つめている。
ここからは彼女の力が必要だ。
「相棒、出番だよ」




