51.実在の人
「ゼノさんは、無意識に契約をかけてしまったんですよね」
「あ、あぁ……そうなんだ」
もう答えに辿り着いているであろうゼノの言葉を遮りながら僕は事実確認をする。僕の能力では選択をしてもらうことになるので、ゼノの今の立場を知る必要がある。
「管理者はどのような仕事をしているんですか?」
「……前も話したけど、この五箇所の砂上図書館の管理……主に、貸出・返却・整理・修繕。それに加えて違反者への注意喚起、本の発注手配……他にも、かな」
「……思った以上に大変ですね。手伝ってくれる方がいらっしゃるんですよね?」
「あぁ、ただそれも各図書館に一名がほとんど。彼らの休憩やいないときはすべて僕が担っている」
「……それは睡眠時間も減りますしそんな顔色になりますよ」
人よりは体力があるみたいでね、とさらりと言ってのけるが、顔色が悪いため説得力はあまりない。確かに図書館の管理は人の手が入った方がいい部分もあるだろうけれど、ほとんどが元からの魔法の力でどうにかなるはずだ。だから、ありていに言えばゼノの奉仕が強いのだろう。
「僕は、……すでに気付いているかもしれませんが」
「あなたの契約を解除する一助になれればと思っています」
深夜、最も光り輝く夜明け前……力が強い時間だ。
「それは、そのための……?」
「はい。これを下に置くので、その上に立っていただけませんか?」
「……分かった」
僕は描き切った星人の模様を並べていく。大きい紙に書いた円形を二つ、僕とゼノの足元へ。小さいものはゼノの大きい円の上五箇所に置いていく。並べ終えてゼノの方を向くと、緊張のせいか深呼吸しているゼノが見つめてきた。僕はどうぞ、と紙の上に立つことを促す。
「では、改めまして、僕は星人のリノ。あなたの願いを星に繋ぎます」
やっぱり……そう小さな声でゼノが呟いていた。
「本当なら僕を見ることはとても難しいんですよ。それなのにゼノさんは初めから普通に話しかけてくれました。……僕は純粋に嬉しかったし、驚きもしました。あなたの願いの強さに」
「見えないって本当なんだね。こんなにしっかりと、そこに君はいるのに」
「見えなくはないんですが認識しづらい存在なんです。僕たち星人は」
「どういう原理なんだろうね」
「分かりません。それこそ星のみぞ知るということかもしれないです」
知識欲の塊であろうゼノは僕たちの存在に興味津々のようだった。一生に一度会えたら幸運ぐらいに言われている存在……その言葉は恥ずかしながら知っている。見えないほうがいいと思う人もいれば見たい人もいる。ただ実在しているということがまことしやかに噂される存在だった。そういう言葉は一度でも僕たちと話したことがある人が伝承として残していることがある。
ただ、……こうだった、ああだった、は実際に会っていない限り信じてもらえる可能性は低い。だから幻の、とか奇跡の、とか言われているんだろう。




