50.読み解く
ゼノは大きい紙と小さい紙どちらも用意してくれていた。僕はそれらの紙を抱えながら、天井近くの小窓のある部屋へと運んでいく。
書くものは案内してくれているゼノが持っていてくれているので、あとは星人の模様を書くだけだ。
「何をするつもりかは知らないけど、僕は少し残っている仕事があるから片付けてくるよ。少ししたら見に来るから、ごゆっくり……?」
あとあまり汚さないでね、と言いながらゼノは梯子を下りて行った。用意してもらったものは紙とペンなのでここで何かを書くのは明白だった。
ゼノが少しの間離れたのは僕にとっても都合がよかった。その間に相棒と相談しながらじっくりと模様が描ける。
「よし、ミレイユの時みたいにすごく大きくなくていいけど、今回のは細かくなるかな」
こくりと頷く相棒と目を合わせて、丸くまとめてあった大き目の紙を広げる。本当は大きい紙だけを使おうと思っていたけれど、ゼノが小さい紙も用意してくれたため、それも使ってより細かく繊細に描いていこうと決める。
「いつもの模様を書いて、星の神に対する文言を刻む……契約をなくしたいから…………呪縛、この場合は呪いではなくて呪いの解除の刻印を基準にしていこう」
相棒は刻印に間違いがないかを確認してくれる。こういった複雑な模様の時の見直しをしてくれるのでとても助かっている。
「いつもは僕のことを星人と気付いての儀式が多いから、なんだか不思議だな……」
ゼノはまだ僕が星人だと気づいていない。それがなんだか普通の人みたいに扱われて僕は嬉しいんだ……うん。この儀式で星人だと気づいてしまうと思うけど、ゼノはあまり驚かない気がする。僕の願望なのかもしれないけど。
あの落ち着いた黒髪眼鏡の青年は、ずっと一人でこの契約と向き合ってきたんだ。だからこそ、僕はここへ呼ばれて、彼を解放したいと思った。そう思うと、模様を描く手に力が入った。ひとつひとつの刻印に星人の力が入る。
大きい紙へと模様を描き終え、別で描いた小さい紙の模様を大きい紙の上に五箇所置く。ゼノの制約は砂上図書館の管理者の為、砂上図書館の役目をこの五枚の紙に現した。
暫く熱中して描いていたため、ゼノが隣で床に座りながら見守っていたことに気づかなかった。
「……ゼノさん」
「うん。やっと気づいたね。結構前からいたんだけど……すごく真剣に描いていたから声を掛けられなかったよ」
「すみません……」
床一面に広がる模様は見る人が見ると奇妙に映るだろう。ただ、ゼノの眼には恐れではなく好奇心の輝きが宿っていた。
「この模様……僕でも見たことがないよ。でも少しだけど知っている文体に近い文字が隠れている……」
そう、彼は図書館の管理者だ。
本が好きで小さい頃から読み漁るほどなので、隠された星人の古語に通じるものを読み取れるのかもしれない。
「全部が分かるわけじゃないけど、色々な言語のほんの僅かな片鱗が感じる……」
これが少しでも分かるならゼノは優秀以上の天才だ。
「リノ君はさ、もしかして」
そして、自ら答えに辿り着くんだ。




