5.相棒のスフィ
「さぁ相棒、お待たせ」
ずっと横にいた相棒に呼びかける。
相棒はスフィという星の妖精であり、基本的には姿を隠している。そして一人の星人には相棒のスフィが必ずいる。星人として自覚したときには側にいる存在なので、隣にいるのが当たり前だ。
相棒はミレイユに姿を見られたくないようだったので目を閉じてもらった。
基本的にスフィは気まぐれな気質であり、星人の指針になる貴重な存在なので、相棒の気持ちを第一に考えるようにしている。
スフィの姿は様々であり、人の形から動物の形、予想できない形態だ。僕の相棒のスフィは20~30代ぐらいの女性の形態であり、僕より年上で背が高い……見た目をしている。そして基本的に話さない。話すことはできそうだけど、声を聞いたことがない。意思疎通などは見えない繋がりがあるためさほど大変ではなく、なんとなく言っていることが分かる感覚なので慣れてしまった。
ミレイユに見えないように極限まで存在を消していた相棒だけど、彼女が目を閉じた為少しだけ意識を強く表に出したようだ。
スフィの役目は星人の助け、というよりかは星人がスフィの助け、なのか……お互いを助け合う存在だ。
星人が対象の願いを知り、スフィが星に願いを届ける。そういう役割分担で僕たちは生きている。
相棒がミレイユの手を握っている僕の手の上に、自分の手のひらをかざす。
相棒の手から光がこぼれ始めると同時に、ミレイユの手に凝縮されていた願いの塊が僕を通して相棒に吸われていく。
この願いの導きがスフィの役目である。
十分に願いが集まったとお互いが感じたため、いつもの言葉を発する。
『エティリオス』
波の音さえ聞こえないほどの静寂が辺りを覆い、足元の陣からも光がこぼれる。集約された願いの光は相棒の手から上空へと放たれる。それは一筋の光になり地上から空へと昇っていく。
髪や服、装飾などがふわりと上空への奔流によって持ち上がるがそれも一瞬だ。相棒の髪は長いのでどこかの教会で見た女神像のように神秘的で美しい。星空に照らされた海が波しぶきの反射でキラキラ眩しい。そんな幻想的な空間がこの場だけにある。
相棒は夜になり始めている空を見つめている。以前どうして見上げているのかを聞いてみたら上空の星神と会話をしているようだ。本人曰く、無数の星たちの中に彼女の行動や願いを見てきたものが一定数おり僕たち星人が願いを渡すと同時に取り合いをしているらしい。それを収めるように星神と対話をしているとか。そんなところだけなんだか人間らしい。
相棒が僕の方を見て手で額を触ってくる。
ミレイユを一番見守ってきた星が彼女の守護を勝ち取ったようで一安心である。
「ミレイユ、目を開けていいよ」
おそるおそる目を開けるミレイユは何があったのかという顔をしている。