46.大切な出会い
色とりどりの料理が続々と転移し続け、テーブルクロスの上にはもうのせる所がないほどだ。転移された料理は料理人が腕によりをかけて作られたことが見てわかるほど力作ぞろいだった。
「ふ……今日は友人も一緒だと先ほどの紙で伝えたからか、いつもよりも気合が入っている気がするよ」
「……ちなみにこの料理って、……どこで作られているんですか?」
少しずつだが出てきた料理ひとつひとつに手をつけていく。すべてが絶品なのは言わずもがなである。
「あぁ場所ね、……炎都だよ」
「炎都……火の、都……からここまでを転移ですか」
「別に難しくない。もともと炎都にある厨房の場所が分かるように魔法刻印が刻んであって僕はそれを使わせていただいているにすぎない」
距離も重さも魔法刻印があるからできることだと、さも当然のように言ってのける。
それが当然じゃないことをゼノはきっと知らないんだ。
「その刻印を刻んだのはゼノさんじゃないんですね」
ふと思ったことを口にだしていた。ゼノならそういったことも簡単にやってのけそうだったから。
「……リノ君は、僕がどうしてこの図書館の管理者をしていると思う?」
「?……分からないです。……本が、好きだから?」
「うん、まぁ……それもあるけどね。僕は元々炎都の孤児だったんだけど、炎都に一番近い五宿場町のヴェンディーや砂上図書館にとても助けられてね。毎日のようにヴェンディーで自作した小物を売って、空いた時間は図書館に入り浸る生活をしていたんだよ」
ゼノは淡々と自らの経歴を話していく。彼が孤児だというのには驚きだったが、そこから図書館の管理者になる道筋が分からなかった。そしてここまでの魔法の使い手になったことも。
「……」
「あー、あんまりしんみり聞かなくていいよ。孤児なのに運が良かった男の話なだけだから」
受け答えに悩んでいるように見えたのかゼノはさらりと、食べながら聞いてくれればいいからと促してくる。
「どこまで話したかな……そうそう、図書館に通い詰める子どもって当時は少なくてね。砂上図書館も設立されて間もない頃だったらしくて定期的に責任者が視察に来ていたみたいなんだ。その責任者の人はね、視察に来る度に図書館がきちんと機能しているかぐるりと回るんだ。そうしているうちに気づくんだよ、来る度に図書館にいる子どもを。それが、子どもの頃の僕だった」
ぐるりと指先で円を描きながらゼノは懐かしみながら語っていた。
「夢中になって本を読む子どもなんて滅多にいないから、いなかったからこそ、その人は僕に声を掛けてくれたんだ。この砂上図書館はどうだい?って。護衛の人たちは慌てていたよ。どうしてそんな子どもに聞くのかってね」
くすくすと笑いながらゼノは思い出している。子どもの頃の記憶を。
きっと今語られていることはゼノにとって特別で、大切な出会いの物語だ。
「普通は僕みたいな孤児は一生話すことができないぐらいの身分の人だったんだよね。その人。まぁ当時の僕は身分制度についてなんら理解してなかったから臆せず答えたんだけど。今思い出すと恥ずかしい限りだけどこう言ったんだよ」
ゼノはにやりと笑いながら僕の口にスティック状の野菜を放り込んだ。
「タダで学べるなんて最高」
「そうしたら、その人はお腹を抱えて笑って僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でたんだよ。意味が分からなくて手を振り払おうとしたらその人は言うんだ。俺が思い描いた通りがここにいるって」
自分の黒髪を少し触りながら、あの頃の今もあまり髪は手入れしてないなって笑ってる。
「それが、僕の恩人であり魔法の師であり厨房に魔法刻印を刻んだ人だよ」
面白い人でしょ。そう言いながらゼノは今までで一番いい笑顔を見せてくれた。




