41.雑転移
前回の宿場町は本を借りる際に一宿場町と知ったので、今回は二宿場町だ。中心の砂上図書館は前回と同じで注意の紙を読んだ途端、本の塔が現れた。
構造が一緒なら本を読む場所は入り口から左方向の奥にあるはずなので、奥まで行ってからその場所を探してみる。
図書館では静かに本を閲覧をしている人が数人いた。人間と人の耳ではない、獣の耳の人がちらほら。
この共存できている環境がこの図書館の素晴らしいところだと思う。
そう思いながらも足を進めていると、本当に蔵書が違うだけで配置が一宿場町と同じことが分かる。確か前にゼノという管理者の青年はこの辺にいたような……と思い、ふと同じ場所を眺めてみる。
眺め……たところ……いる。
全く同じ様相のゼノが。
むしろ机の上には本や書類が更に積み上がっているのではないだろうか。この二宿場町の図書館での作業スペースなのか……既視感でしかない。あまりにも同じ行動すぎて、ここは前の図書館だったのか錯覚してしまうほどだった。
ゼノからは静かにそして素早く書類を捌く音が聞こえる……。
暫く相棒と見つめていると、一息ついたのかゼノが伸びをしていた。そしてその瞬間にお互いの視線が混じり合った。
「あ……」
こちらに気づいたゼノに僕はぺこりとお辞儀をした。ゼノは少し驚いた様子だったけれど、手で僕たちを自分の方へ来るように促す素振りを見せたため少し近づく。
「驚いた。リノ君、ここに来るのがかなり早くないかい?ゆっくり休みながら来ないと疲れて倒れてしまうよ」
「……ゼノさんも……あまりにも同じで僕も驚きました」
「?……同じ?」
ゼノはよく分かっていないようだったので、目の前に広がる本や書類の束を見つめてみる。そうしたところ合致したのか、頷いていた。
「……あぁ、これか……」
ふむ、と考えた素振りをしたかと思うと、ゼノはそっと微笑み僕が考えていた通りのことを口にした。
「これが一の机と同じか、それともこの場所に同じような机と書類を並べたのか、といった具合かな?」
思った通りの言葉だった為、こくりと頷く。
「……君はどちらだと思う?」
「……現実的に可能かどうかは分かりませんが、僕は一宿場町の時と同じ机な気がしています。ただ、難しいだろうなとは」
「難しいとは、それは重さかな」
「……はい」
その受け答えが出てくる時点で、答えは決まったようなものである。
「つまり、ゼノさんは転移ができる……」
「……正解。といっても忙しすぎて、触れた物ごと移動しているだけなんだけどね」
重さとかそういう法則ではなく触れた物、だったことも珍しいけれど、忙しいから……その理由はあまりにも難しい転移をこなしているとは思えないほどに雑な回答だった。




