38.目印
図書館から借りた本に砂が入らないよう、布に包めてから鞄に詰めた。今日は次の宿場町へと移動することに決めていたので、早々に移動することにする。
ヴェンディーを通っていき、次の宿場町への目印を探す。人々の進行方向に流れがあるため、道なりに紋様の端まで行くと地面の紋様が一部伸びていた。
その先には補助道具の数時間で効果が消えるような簡易的ものではない、正式な作りの高価で持続時間も長いであろう細かな装飾の杭が見えた。一定の幅でその補助道具が打ち込んであるので、まるで砂漠の中に長い橋が架かっているように感じ、人々の表情からも安心して歩いていることが伝わる。
この紋様の続いた先に次の宿場町があるようだけれど、視界には行き交う人々しか見えず、後ろには先ほどまでいた宿場町のヴェンディーが並んでいる。この砂漠地帯……カルゾンやこの宿場町で活気のある声が聞こえてくる度、豊かさを感じられて治世の行き届いた光景を何度も見た。
この砂漠地帯一帯は火の都の管轄のはずなので、統治者の才能には舌を巻くばかりだった。
僕と相棒はこの先の宿場町へと向かうため、紋様の道へと足を踏み出す。
周りからの視線は感じず、特に旅慣れた風貌の人たちはこの後の道のりからか皆体力を使わないように心がけているようだった。家族連れも多く連れ立っていて、微笑ましいやりとりも見られる。
この場には星人である僕が見える人はいないようだったので、この場の誰もが目指す願い、次の宿場町へ行くという願いの為に少しだけ力を使う。
『皆の旅路に星からの加護がありますように』
そう口ずさむ。
これは星の力の儀式ではなく簡易のものであり、僕自身の星人の力を、下の紋様を補助として練り上げたものだった。一時的なものだけれど、この旅路への安全性が上がったはずであり、更には人々が気づくことはない。
こういった力は星人の気休め……または気まぐれという星人もいる。所詮は一時的、この場限り、そういった補助に特化したものではあるけれど、人数が多いと不確定要素が重なりやすいため……保身の意味も込めて僕はこの力を使うことがある。ただ、目的地がこの場にいる人全員が宿場町という名の目的地だったからこそ、力を使いやすかったという面もある。
安全面が向上し、僕の姿を見える人もいないので小さな声で相棒と話しながら歩いていく。
主に、ゼノという青年と、……気になっていた相棒の借りた本の話だ。




