35.ヴェンディー
相棒に揺すられて目を開けると、見えるテント内は明るくてもう朝になっていることが分かる。眠い目を擦りながらも相棒に挨拶と起こしてくれてありがとうを伝え身支度を整える。
起きてからも身支度を整えている時も感じたけれど、テントの外……周りから聞こえる会話がとても大きい。
昨日の宿場町は日が沈む直前に到着したこともあり、静かな印象が強かったが、がらりと変わっているようだった。
恐る恐るテントの入り口を開けてみると、そこには色とりどりたくさんの露店が広がっていた。僕は紋様の端にテントを設置したけれど、見渡す限り一面、紋様を越えて露店は出ているようだった。
僕のテントや、他の人のテントがまだ残っていたりするけれどそのテントを避けて器用に露店が並んでいる。ふと斜め向かいを見ると、テントを畳んだ家族連れの場所にさっと露店が並んだり……あまりに手際がいい、慣れているであろう行動だった。
テントを畳んだばかりの家族連れも、この宿場町は初めてだったようで、目の前で華麗に拡げられていく露店の品を眺めながら質問をしていた。
「?あ、あの、……僕たちここは初めてで、この露店は、移動式なんですか?」
僕が聞きたいことを聞いているみたいなのでそのままそっと耳を傾けてみる。
「あんたら知らんかったんかね、ここは宿場町って言うけど真ん中に図書館があるぐらいだろ?ここから先にある宿場町も全て、こんな感じに露店が出るよ。俺たちはヴェンディーって言ってるから、覚えておくといいよ。朝早くに露店を拡げて、夕方には片付ける。それがヴェンディーさ」
「ヴェンディー!初めて聞きました!異国のこういうところが面白いんですよね!」
「お、あんたら遠いところから来たんかね?よかったらうちの商品見てきなね!」
家族連れと露天商の会話でこの色とりどりの露店がヴェンディーと呼ばれることが分かった。少し横を見ても、食べ物、衣類、小物、など色々な露店が並んでいることが分かる。これはカルゾンで準備を忘れたとしても、ここでほとんど旅の準備が揃いそうな勢いだ。
「ちなみに質問なんですけど、この下の紋様は害獣を寄せ付けないと聞きましたが……あちらの露店などは紋様外にあるようですが、大丈夫なんですか?」
一番知りたかったことを聞いてくれる素晴らしい家族連れのようだった。
「あっちの足元見てみると、補助道具が見えんかね?あの補助道具はかなり高価なんだがね、この下の紋様の効果を延長……場所を補助道具を打ち込んだ所まで伸ばしてくれるんだよ。だから安心して向こうに行っても大丈夫。大きい露店を出したい商人は範囲外にあることが多い。富裕層はあっちが多いね」
「はーそんな補助道具が……すごいですね」
補助道具……よくよく見ると露店を覆い囲うように杭のような物が地面に打ち込まれている。その囲った部分に薄く紋様が広がっているので、効果の延長ということだろう。中々に理にかなった仕組みがこのヴェンディーにはあるみたいだ。
知りたいことは充分知れた為、一度テントに戻り片付けていく。
少しこのヴェンディーをまわってから、砂上図書館で本を借りることにする。




