33.砂上図書館
目の前に現れたたくさんの図書に圧倒されながら、どんな蔵書があるのかだけさらりと見て、借りるのは明日にしようと決める。
どうやら分かりやすく項目ごとになっているようで、興味のある本の場所へ迷わず足を運ぶことができた。相棒も本は気になるようで、後ほど合流するということになっている。
相棒と少しの間離れることはとても都合が良く……といっても、相棒の名前を考えすぎて迷走してきたので、この機会になにか参考にならないかなと思ったからだ。
目的の言語の辞書、星、花等の蔵書を見ていく。気になる本は少し手にとって読めるかどうか、読みやすいかどうかを捲って確かめていく。
少し見ただけでも読み応えがあるものが多く、明日借りる本をどうするか迷うぐらいだった。
しばらく吟味しながら歩いていると、本がしまわれている塔や棚はそれぞれにぽっかりと空いたところがあり、誰かに借りられていることが分かる。
この広い砂漠の中の施設で、本を借りる人が多くいるという事実に嬉しくなる。少し広い場所には机と椅子も置いてあり、じっくりと読むことも出来るようだが夜になりつつある為か、今は誰もいない。
「そこの人、借りるなら僕に言うといいよ」
「!?」
誰もいないと思った矢先に、突然声をかけられたことへの驚きに襲われた。そして、僕に声をかけるという二重の驚きがそこにはあった。
ちらりと声の主を見ると、少し広めな机の上にたくさんの本が積まれており、その奥の椅子にその人は腰掛けていた。
肩ぐらいまである髪と眼鏡、そして全身を覆う白のローブが特徴的だった…ただ、とても顔色が悪く、目の下には隈が色濃くあるようで、初対面の僕からしても体調を心配してしまうほどだ。
「あ……えと、明日借りようと思って」
先ほどの言葉に返していなかったと気づき、今日は借りる予定がないことを伝える。
「そう…………じゃあ、明日、僕は今のこの場所にいると思うから声をかけて……あ、ここの司書なんだ僕」
司書……つまりはこの砂上図書館の管理者ということだろう、青年を僕はじっと見つめた。……暫くしても青年は何も言わず、僕を見つめる瞳は隈がありながらも爛々とした生命の輝きを纏っていた。
「なにか?」
「い、いえ……」
頭を傾げながらも青年から何も言われることはなかった。つまりこの司書の青年は、……僕が星人ということに気づいていないということだ。
僕が見えるというこんなにも強い願いを持っているというのに。




