30.また
「元々俺の手には余るものだったし、俺の星人の力は何かを対価にしなければ発現しない。里の奴等のお前への気持ちが、この水晶なんだ」
洞窟の鉱石が反射して光り輝く水晶は神秘に満ちていた。どれほどの価値があるか計り知れない、きっとエルフの家宝は何にも代えられないものなんだろう。
「それにお前が見つかったらそのうち返したかったし……。もしかしたら俺たちがお前を見つけたこの流れも、星の導きだったのかもな」
アルドは手の中で転がしていた水晶を今度こそフォーリスにしっかりと手渡した。彼女は昨夜のように拒むでもなく、その水晶の重みをしっかりと理解してゆっくりと握り込んでいた。
「……あの、本当にありがとうございます。こんなにも、良くしていただいて。貴方がたに出会えなければ私は……死んでいたでしょう」
震える手を水晶ごとぎゅっと握りしめてフォーリスは前を向く。起点となると言われた水晶へ自分を奮い立たせているようだった。帰ることができるかもしれない安堵と、空間魔法を失敗して見知らぬ土地に転移してしまった不安が押し寄せるのは無理もない。
「……リノ」
そんなフォーリスを見たアルドは、不意に僕の名前を呼ぶ。
「アルド?」
「あー久々に会えて嬉しかったけど、ここでお別れ、だな。……またどっか飛ばされるかもだし、このエルフ女に俺たちは付いて行くよ」
「え?」
「次会うのは星人の集まりの時か、また別のところか、リノは取り敢えず都市まで行くんだったっけ?また、会えたら話そうぜ」
「……うん、アルドもディルも、気を付けて。フォーリスさんを無事に送り届けてね」
こんなにも不安そうなフォーリスをアルドは放っておかないと思っていた。僕たちを道連れにしないのは僕も相棒が指差した目的地があるし、今回はアルド自身の儀式から発生した責任からだろう。星人は基本個人行動なので、旅は道連れ……になることは僕が知る限りほとんどない。別れはいつも案外あっさり、またの機会にというぐらいの……この広い世界で生き続ける僕たちはそれぐらいで丁度いいのかもしれない。
「ちょっ、ちょっと待ってください!そんな私の都合でそのようなことをさせられませんっ!」
「んだよ、お前……転移、自信あるのか?」
「それは……」
「フォーリス様、甘えておいて大丈夫ですよ。こちらとしてもエルフの里の皆さんに貴女が見つかった旨、最後まで責任を持ってお伝えしたいですし」
フォーリスが遠慮するのも分かるけれど、ここはアルドとディルに頼ったほうが僕もいいと思う。この2人が付いていて万が一別のところに転移したとしても何とかなる。でも、きっとそうならない。
「で、でも……!」
「あーもーうるせーな。一緒に行ってやるって言ってんだからさっさと準備しろ。ディル、ノームに伝えてくれ」
「分かりました」
「んじゃ、リノ、また」
「うん、また」
ノームたちへフォーリスに力を貸して欲しいと伝えたところやはり想像以上の力が集まったようで、転移には充分すぎるほどだった。
フォーリスの左手には水晶、右手にはアルドの左手が、アルドの右手はディルの左手へと繋がっている。複数人と転移する際は暴発の危険性も鑑みて身体接触をしながら行うと全員一緒に場所へ飛ぶのが確実らしい。
簡単な別れの挨拶をすると、三人を覆うように光が輝きだした。




