23.地の妖精
フォーリスは手の中にある水晶を見つめると、顔を上げてアルドの方へ一歩進んだ。
「……と、取り乱してごめんなさい。私は、仰る通り里長の娘、フォーリスと申します。……あの、星人、様、こちらはいただけません。感情のまま話してしまい勘違いをしていたようです。里の皆が私の為に、貴方に贈ったもの……なんですよね」
だから、いただけません。水晶を握りしめながらつぶやくフォーリスは、アルドの手に水晶を押しつけていた。アルドは面倒臭そうにフォーリスを見つめている。再び話そうと口を開けたフォーリスだけれど、段々と呼吸は荒くなっていきうまく話もまとまらずに体調の悪化が感じられた。
「すみません、安心したらまた眠気が、……少し、横に……」
そう言いながらフォーリスは崩れ落ちた。すんでのところでアルドが受け止めていた。
「こいつすげー熱」
「味方と分かって安心したのかもしれませんね。一旦休ませましょう」
ディルの言葉に全員が頷く。フォーリスが一体何日この場所にいたのか分からないが相当張り詰めていたはずだ。相棒がフォーリスの頭を撫でている……相棒もフォーリスの無茶な部分を感じ取っているらしく熱が出たのはいいことと言っている。
「あー……こんななんの装備もしてない状況だったら身体がもたねぇか……むしろよく耐えた方だよ」
崩折れた際にローブの下が少し見えたが、かなりの軽装のようだった。エルフの、特に女性はなるべく自然と肌が接しているようにすることが基準になっていると聞いたことがある。薄着すぎる衣装は、この砂漠の寒暖差には堪えるだろう。
ぐったりとしたフォーリスをアルドが横抱きにしてそっと湖の近くへ移動させる。僕もディルも相棒もフォーリスを運ぶ身長や力がないため、その分できることをしていく。ディルは既に湖の水へハンカチを浸して絞っている。
アルドと僕はお互いのローブを地面に引き、そっとフォーリスをローブの上に横たわせる。
「本当は外で治療した方がいいんだろうけど……このまま洞窟を出ても星人とエルフの女だと、認識がエルフだけになって面倒だ」
エルフというだけで希少なのに、エルフの女性が一人で出歩くなんてほとんどない世界だ。何が起こるのかも分からない。慎重に慎重を期したほうがいい。
「あー……暫く洞窟でもいいか?リノ」
「アルドならそう言うと思ってたよ。僕からはもちろん大丈夫」
「……やっぱリノはいい奴だな」
「アルドもね」
話しながらも、フォーリスの体調がよくなるため暫くはこの洞窟にいると決めたので、野営の準備を僕とアルドでしていく。まずは寝床の設置と、食事をするための火の元の場所、お互い旅慣れている為素早く動いていく。
その間にディルはフォーリスの汗を拭い相棒はディルの身体の上空に手を当てて痛みを和らげているようだった。
設営をしていると、小さな何かが足元をよぎった。気配は先ほどと似ているものだと分かったので警戒は一瞬だけですぐにとける。
足元にいたのは地の妖精、ノームだ。
複数のノームはフォーリスの元へと駆け寄りその身を心配しているようだった。




