17.報告会
土埃に砂埃、色んな埃を落としてサッパリした僕は、恒常地域用の衣装は鞄の中に戻し、温暖地域用の寝間着を身に着ける。次の日の温暖地域用の着替えの準備をしてから部屋へと戻る。
「先にありがとう。すっきりしたよ」
「おーう!んじゃ俺も行ってくる」
「うん」
アルドが隣の部屋に入ると、ディルがソワソワした様子で僕の前に来た。僕はベッドに座りながら、隣のアルドのベッドにディルを座るように促す。
「あの、リノ様。……リリアルドが強引に申し訳ございません」
リノ様の相棒様も……と丁寧に頭を下げてくるアルドの相棒は、いつもアルドの代わりに謝っている気がする。ディルは巻き込まれているだけなので何も気にしなくていいんだけど律儀だなぁと思う。
「ディル、頭を上げてよ。アルドの勢いはいつものことだし、僕も久々で驚いただけだから気にしないで。……それに数年ぶりかな?同じ星人に会えるのは純粋に嬉しい。ほら、僕たちいつも日常に溶け込んでるから」
「ふふ……リノ様も相変わらずお優しいですね。リリアルドがいつにも増して甘えてますので、よろしくお願いいたします」
見た目では子供に見えるディルが保護者みたいに言っているのがなんだか面白い。
「もう少ししたらアルドが戻ってくると思いますので、僕は移動させていただきます。……あの、リノ様、リノ様の相棒様ともお話したいことがあり、一緒に移動しても構いませんか?」
ディルが相棒を誘うなんて珍しい。相棒に目を向けると頷いているのが見えた為、気にせず行っておいでと伝える。
「では失礼します」
そう言うと、ディルと相棒は姿を消した。いつ見ても驚くけれど、スフィには妖精界という場所に行けるらしい。妖精界はこの世界とは少しズレた場所に在ると相棒が以前教えてくれた。スフィ以外には入ることができない聖域と聞いて、当時の僕も安全面が確かだとわかり安心した。星人の旅で危険があった場合、相棒だけは助かると確約されたのだから。
「リノがいる!」
「うん。いるよ」
洗い場から出てきたアルドは持ち前の金の髪が濡れて輝いていた。
「リノがいるから急いだ!」
急がなくてもよかったのに、そうにこやかに笑いながら言われるとこっちも嬉しくなる。あと、早く乾かさないと体調を崩すよとディルがいないのでしっかり伝えておく。
「アルドの髪は綺麗だね。ディルが切ってるの?」
「おう!アイツ器用だからな!」
髪とかなんもしてないといつの間にか来て勝手に整えてる、とタオルで髪を拭きながらアルドがディルのことを話している。ディルは以前よりも世話焼きが板に付いているようだ。
「リノは……ちょっと伸びたよな。ディルに切ってもらうか?」
「髪は……ううん、いいよ。基本はしばってるし、暫くは切らないようにしているんだ」
「そっか!んじゃあ寝転がりながら旅の話聞かせてくれよ!そのまま寝たらごめんな!」
「いいよ。僕も疲れているから途中で寝ちゃうかもしれないから」
二人で頷きあってアルドが明かりを消し、それぞれベッドに横になった。
「リノは、旅に出てからどうだった?たくさん願いを叶えたのか?」
「僕は……星人が普通どれぐらい願いを叶えたりするのかは分からないけど、人や動物、獣人族、今日だと仔ネーベルフの願い事かな」
今まであった願い事をひとつひとつ思い出しながら伝えていく。特に今日の仔ネーベルフの件は、アルドが目を輝かせて聞いていた。ネーベルフに会ったことがないから会ってみたいそうだ。
「ネーベルフってでっかくて格好いいんだよな?」
「うん、すごく大きくて格好良かったよ。僕と相棒を物凄く速く運べるしね」
「俺も乗ってみたいっ!!!俺はー……珍しい種族にもそこそこ会ってる気がする。龍族にもあったし、あと……少し前にエルフの里にたどり着いた時が一番大変だったな」
「龍族も珍しいけど、エルフって幻の?すごいね」
人から幻や奇跡と呼ばれている僕たちが幻のエルフの話をしているのは少し面白い。アルドはその時に相当苦労したらしく遠い目をしながら話している。
「俺って星人の中では力が弱い方だと思うんだけど、今までで一番大規模な儀式をしたから、地面に模様を刻むのも一苦労だった……」
エルフの里は、巨大樹を中心にあるそうだが一族全員がアルドのことを見えたということはよっぽど強い願いだったんだろう。隠されていたはずの里が星人に開かれたことも考えると願いの規模が大きそうだ。
そんなアルドの苦労話が続いて暫くしてお互いがいつの間にか眠りに落ちていた。




