13.またいつの日か
星に願いを届ける為に必要なものの一番は夜。夜の帳が降り、星が光り輝く時こそが真価を発揮する。
今はまだ、お昼下がりであり星は上空にあるけれど存在感はほとんどない。ただ、今回に限りむしろこちらのほうがいいかもしれない。
この仔ネーベルフの意思の強さを活かしつつ、星は見守るぐらいにするならこの明るさが丁度いい。
「こっちに来てくれる?」
いつの間にか近くまで来ていた仔ネーベルフを手の届く範囲にまで来てもらう。略式であり、力が強くなってしまう為、ミレイユの時のような模様は下に書かない。
周りのネーベルフたちは僕が仔ネーベルフを呼んだことによって若干の警戒を見せている。
長が大きくなって試練を受けた後、外への許可を出したということはこの仔の願いは不可能ではないということ。この仔が僕を見つけた強さを信じて、少しばかりの願いを僕からも。
仔ネーベルフに触れるよ、と伝えてそっと額に触れる。
「君の願いを思い浮かべて……」
相棒は僕の手の上に自分の手のひらをかざして願いを集める。僕は僕で願いが多くならないように調節をする。これは星が願いを叶えるんじゃなくて、願いを見守るようにする為に。
相棒と目配せして言葉を発する。
『エティリオス』
細い光が上空へと吸い込まれていき、僕はそっと相棒へお願いする。強い力じゃなくていい、この仔の願いを見守ってくれる星を、と。
じわりと温かいものが流れたため、額に触れていた手をどかしそっと手のひらを開けると小さな石が転がっていた。真ん中に穴があいており、こういう形にした星になるほどと思うばかりだ。僕はこの叶え石の穴に布を通し仔ネーベルフに聞いてみることにした。
「この石を身に着けておくと、君の願いを見守ってくれる。脚か首元に着けるのがいいと思うけど……まず着けていいかどうか、だね」
ここは大人しく相棒に頼り、内容を伝えてもらう。
「前脚に着けるでいいんだね?」
仔ネーベルフはブンブンと首を振っている。脚は動きづらくなるからどうかなと思ったけれど、見えるところに着けておきたいということだった。
「よし、これで完了。この先の未来、試練を通ることを僕からも祈ってる。この叶え石は、君のこれからの行動と選択を見守っているよ」
キュッと結んだ叶え石がキラリと光って見えた。仔ネーベルフも嬉しそうに触っている。ちなみにこの布は僕の力が加わっているので、基本的には外れないし痛くもない。取りたいと願えばこの仔だけが取れるようになっている。
ネーベルフの群れにはいつも通りに接してあげてほしい旨といつかの試練の際、試練を受ける受けないも、この仔自身の選択なので特に大人たちが今このやり取りを気にする必要がない旨は説明する。
さて、この仔の霧もずっと晴れているし、このグラデーナ森林を抜けさせてもらおう。
「僕たちはもう行くね、君はあまり霧の力をいたずらに使わないようにね」
ゆっくりと仔ネーベルフを相棒と一緒に撫でて、出発をする。
「わっ!」
ふいに長が僕たちの前に立ち塞がったかと思うと、そっと伏せをした。……どうやら背中に乗せてくれるようだった。本来なら僕たちはもうグラデーナ森林を抜けているところだったので、有り難くその背に乗せてもらうことにした。
長の背を撫でて準備完了を促すとゆっくりと立ち上がり歩いてくれた。
「いつの日か、君とまた会えたら僕も嬉しい」
じゃあ、と仔ネーベルフに向けて伝え、僕たちは長とともに森を駆け走り始めた。




