12.未来の試練
「この群れの頂点、長はいるかな?」
一匹が静かに前に出た。身体も大きく、大の大人を自分を乗せられるぐらいの大きさのたくましいネーベルフだ。
「始めまして、星人のリノです」
「ワウ……」
自己紹介してみたけど、少し警戒されているみたいだ。というかどうしてここに?のような気がする。仔ネーベルフはどこ吹く風で楽しそうに遊んでいる。
「僕たちは、この仔の霧の力によって出会いました。群れの皆さんは、この仔が旅に出たいということは聞いていますか?」
仔ネーベルフを手のひらで指しながら、そう伝えてみた。長や群れの複数は旅に出たいということは聞いていたらしいが、霧の力を扱えるようになっているとは知らなかったらしい。
どうやら霧の力は本来の成狼にならないと使えないものなので、幼体でできたという驚きと期待がこめられて仔ネーベルフを沢山の目が追っている。そして優秀な個を群れから放したくないという視線も同時に感じられる。
「僕を見つけたこの仔の願いは本物です。僕が言うのもなんですが、この仔の未来はずっとここ、というわけにはいかないとも思います」
群れの保護者である成狼たちがグルグルと喉を鳴らして威嚇している。こんな状態であっても仔ネーベルフはあちらこちらに飛び跳ね自由気ままだ。この仔自身、ここにずっといたくないという意思表示であり、我が道を貫き通す胆力がある。
二匹のネーベルフ、恐らくこの仔の親であろう二匹が仔に向かってキツめに声をかけているが仔どもはまったく応えていない。なかなか強かなようだ。
「僕から言えるのは、ある日突然いなくなる……よりかは相談してくれるだけこの仔はいいと思いますよ」
他のネーベルフも僕とのやり取りや長とのやり取りを見て、傍観するものが増えてきた。
長はこの仔の親になにか話しかけているようだった。
暫くするとどうやら話し合いは終わり、群れの長が僕の前に進んできた。
静かに話しだした内容を相棒が訳してくれる。
「もう少し大きくなって試練を乗り越えることができたなら、それでも外に行きたいという気持ちがあるのなら、外に出ることを許可する……か……」
すぐに、というこの仔の希望通りにはもちろん通らないだろうとは思っていた。むしろ、これは最大限のの譲歩ではないだろうか。
この仔の願いは星に叶えてもらうような弱いものじゃない。
むしろ他者を頼ろうとすると弱くなる恐れがある。
だから、僕の力の少しを……君に託そう。未来に向かって歩んでいけるように。




