11.ネーベルフの群れ
群れを抜け出して旅をしたい、冒険したいという願いは、とても難しい願いだろう。
願いを叶える、ということは各星人に裁量を委ねられている。どれだけ願いが強くても叶えていい願いとそうでない願いがある。物事の善悪はどこかの国や街の決まり、法律などでは収まらない。星人としての生き方、考え方を星人として目覚めた際にしっかりと学んでから僕たちは旅立つ。その考えは強制ではないけれど、自分自身の善悪の基準を持て、というそんな教育だった。
僕にとっての仔ネーベルフの願いは叶えてあげたい願いでもあり、難しいことも分かった。
「そっか、この森を出て冒険したい……格好いい夢だね」
仔ネーベルフは尻尾をぶんぶんと振りながらものすごい勢いで頷いている。それが可愛くてつい撫でてしまうけれど、考えれば考えるほどネーベルフが森から離れるということは現実的ではない。
僕が知っているネーベルフの習性では、ネーベルフという種は仲間意識が強く、基本的には群れでの行動、強い雄が頂点に立ち統率が行われる。狩りでは、獲物を狩るために囮役・囲い役・狩る役などの分担意識があり、仔育てに関しても群れで行われる。そして一生をその群れの一員として過ごすという。まれに、群れを外れ新たな群れを作る個体もいるようだが、身の安全も保障されない孤独な状態な為群れを成す前に命を落とすことが多いという。
「君はまだ仔どもだしね……ねぇ、どうして冒険したくなったの?」
仔ネーベルフはワウワウと話し相棒がその言葉を伝えてくれる。曰く、この森を通った冒険者が護衛として守っていた依頼主に旅の話を聞かせていたようだ。そしてその話を隠れ聞いて、自分も興味を持ったということだった。
「君が思うよりもずっと外の世界は危険だよ。それに、親や仲間は許してくれる?」
滅多に見られないことから仔ネーベルフの価値は想像以上に高い。そして、仔どもであれば危機察知能力も低く戦闘能力も十分に育っていない段階だ。成長するまでにこういった願いが育つことは稀であり、群れからは過保護にされるか放逐されるかのどちらかのはず。今こうして一匹でいるということは、群れから離されている可能性もある。ただ、この仔ネーベルフはネーベルフ独自の能力、霧の能力が長けているようなので、その価値は計り知れない。僕と相棒を迷わせるほどの能力は成長次第ではとても強い個となるだろう。
「もしよければ、両親に会うことはできるかな?」
「ワウ!」
今のはきっと着いてきて!だと思う。元気な鳴き声で前に進みだしたので、親の放逐ではなさそうでひとまず安心した。きっとこの仔がやんちゃなだけなんだろう。
暫く歩くと、小さい水場に出た。そこには十数匹いるネーベルフの群れがいて僕たちに気づくと一斉に頭を下げた。ネーベルフは誇り高く警戒心が強い……そして賢く聡い存在なので、僕が星人であるということは少し前から気付いていたようだ。
「頭を上げてくれると嬉しいな。君たちの仔どもが僕を見つけたから、あまり会うことがない種族同士の交流ということで仲良くしてくれると嬉しい」
伝わったかな?と思いつつも、静けさが残るなかで仔ネーベルフはぴょんぴょんと跳ねながら両親であろう二匹のネーベルフの元へ向かっていった。両親はそれはもう難しい顔をしながら我が仔が辿り着くのを硬直して待っているようだった。
本題に入るため、僕は静かに群れを見回す。
「この群れの頂点、長はいるかな?」
動物は本能で生きる願いが強いのでリノの存在にはほんのり気付けます。願いが強ければ強いほどハッキリと感じられます。




