1.見える人には見える
あなたの願いはなんですか?
一人で抱えていませんか?
どれほど切望していますか?
ーこれは、願いの物語。
この世界、ソーレイノでは多種多様な生物が暮らしている。
そのなかでもひと際珍しい種族が星人。
星人という種族はすぐ傍にいることもあれば、いない……霧のような存在であると伝えられている。どうしてこのように霧のようという表現になったかというと、実際に見える人と見えない人がいるからなのである。
「え?こっちに行きたいの?」
隣から聞こえてくる囁きに、別方向に行こうとしていた考えを改める。旅の指針は常に隣にいる相棒に任せているからだ。
「いや、君がこっちがいいならそうするよ。全然無理なんてしてない」
旅の目的なんてないのだから。いや、あることはあるけれど、いつか起こりうる為の旅である。
「じゃあ食料の補充をして荷物をまとめたら…えっと、さっき指していた…あっちは西かな?よし準備はいつも通り念入りにしよう」
今いる村はラウトーレという海が綺麗な村だ。小規模な民族が住んでおり、貝などの海産物を独自にアレンジして装飾などを作ったり、海からの新鮮な魚介類を売り買いし生計を立てているようだ。
「やっぱり干物かな~」
海が近いので長持ちする食料はやはり魚かなと思う。食べ物にそこまで執着はないけれど、美味しいに越したことはない。小さい村でも複数の屋台がありいい香りがするのでついつい足を向けてしまう。
「えっ?食料買いに来たんでしょ?って?そうだけど、でも美味しそうで……ダメかな?」
隣の相棒にはジトっとした目で見られてしまったが、この香りに抗うのはなかなか難しいものがある。
「おじさん、そこの串焼き一つ」
たまらず声をかけてしまった。しょうがない。美味しそうだったからだ。僕は悪くない。旅の醍醐味のひとつだと思ってほしい。うん。
「ん?わっ坊主いつからそこに!?……あー串焼きな?」
驚かせてしまったようで申し訳なくなる。体格がいい串焼き屋のおじさんは串を指に4本ずつ差し込み両手で炙っていて、これぞまさに職人技。
「ん…あぁ、30パレンだ」
30パレン…よかった丁度ある。
「はい、これ」
「あー…おう、熱いから気をつけろよ!」
「うん!ありがとう」
無事に購入できて僕はホクホクである。串焼き屋のおじさんはずっと頭を捻っていた。まぁそうだよね。でも食べれるから問題ない!こういうのは熱いうちに食べないと美味しくないからからどこか空いているところは……うーんいつもの旅の定位置がやっぱり安心するから、ここの村は……入り口の近くかな。
村の入り口の近くには思った通り、お誂え向けにベンチが置いてあった。流木で作ってあるようで雄々しく座り心地が良さそうだ。
「あっつ…おいし~…うわ、押さないで、いつも通り分けるから!」
相棒が食べたくてぐいぐい押してくる。いつも食べ物は分けているからもちろん分けるつもりだったけど、どうやらすごく美味しそうに見えたみたいだ。ちょっとしょっぱくてまさに新鮮な味で中はふんわり外はカリっとで大満足だ。
「あ、あのっ!」
呼びかけられた気がして、振り向くとかわいらしい黒髪の少女がいた。この村の出身であろう肌にペイントがしてあり独特な装飾が髪と絡みあっていた。
本当に僕を呼んでいるか分からなかったので暫く串焼きを食べて待ってみる。こういう時は偶然もあるので必要以上に話さないことが鉄則なんだ。
「星人さまですか!?」
「は、はい…」
勘違いかなって食べていて申し訳ない…。すごく間抜けな恰好で返事をしてしまった。