あわよくば死にたい君と、見てるだけの僕の青い春
「あわよくば死にたい」
なんて君は歌うように、口から吐き出す。
階段でうっかり足を滑らせて死にたい。歩いていたら、植木鉢が頭の上に落ちてきて死にたい。横断歩道を渡っていたら、車が突っ込んできて死にたい。ご飯を食べてたら、喉に詰まって死にたい。
多種多様な死因を飽きもせず夢想する彼女は、確かに生きることに積極的ではなかった。
確かに生きることに積極的ではないけど、だからといって"あわよくば死にたい"だけで、死ぬことに積極的というわけでもない。
彼女いわく「わたしはめんどくさがりなんだよ、少年」と、ポツリと零した言葉は、僕にはちっとも理解できなかった。
だけど、彼女からすれば"あわよくば死にたい"、"生きることに積極的ではない"理由なのだろう。
「少しでも早く死にたい」
「少しでも早く……」
彼女の夢想は、運が必要になる。
だったら確実に寿命と呼ばれるものを削っていくしかない。
「タバコと、酒を始める?」「………少年。まだわたしは君と同じ未成年なのだが?」「毎日ひじきを食べる?」「効果があってないようなものじゃないか」なんて案を上げては、ことごとく却下してくる彼女は、本当に寿命を削りたいのだろうか?
「いいかい少年」
「はい」
「心臓の鼓動回数は、決まっているんだよ」
「そうなんすか」
「だから、心臓を早く動かす方法を考え給え」
え?
「運動とかですか?」「わたしは運動は苦手だ」「…………そうっすか」なんて我儘なんだ。
でも所詮は"あわよくば死にたい"だけで、死ぬことに積極的ではないからしょうがないのかもしれない。
「可愛いのに、どうして死ぬことばっかり考えるんですかね? もったいない」
「――――――は?」
「え?」
口に出ていたのだろうか? いや、まぁ、それは別にいい。
だけど、
これは、
あまりにも、
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!