52ジョイナス王太子の力
デオロイはすべて話した。
その話はすごかった。
グロギアス公爵はというか公爵の部下が、浮浪者だったデオロイを雇ってやると言ってデオロイはバカルで占い屋を開いた。
そして客が病が治ったとか予想が当たって大儲けしたとか、怪我をしなくてすんだとか、そんな噂を流したのも雇われた連中だった。
それをザイアス国王の耳に入れて、ちょうどその頃重い病だったザイアス国王がわらをもすがる思いでデオロイを頼る。
その病も実はグロギアスの息のかかった国王の側近が薬を盛っていたせいで、そこに魔術師と名乗るデオロイが現れてあっという間にザイアス国王の病を治してデオロイは信頼を得ることに成功。
すべての支持はグロギアス公爵から出ていて、国王の異常なまでの行動はザイアス国王を追い落とすための作戦。
ザイアス国王がそこまでデオロイを信じたのも悪いがそれでもやっとデオロイの言うことがおかしいと気づき始めたのがここ最近。
そして極めつけがザイアス国王毒殺。
デオロイはグロギアス公爵に眠らせる薬草だと渡された薬だった。困ったらこの薬草を飲ませると言いと言われて。
なのにいきなりそれを飲んだザイアス国王は苦しみ始めてあっという間に死んだ。
そこに都合よく表れたグロギアス公爵。デオロイが殺害したと近衛兵に捕らえられたと。
「何を言っている。こんないきなり現れた男が!こいつはジョイナスではない。そんはずがあるわけがない。ガロンと一緒に墜落したんだぞ。生きているはずがないだろう。おまけにいきなり現れて私を貶めるうそを言わせて…お前デオロイに何をした?まやかしの術を使って嘘を言わせて私を失脚させる気なんだろう。そして偽物のジョイナス。お前が次の国王になる気だろう?近衛兵いいからこの男を捕らえろ!こんな奴がジョイナス王太子のはずがない!」
近衛兵はどちらの言うことを信じていいか分からず狼狽える。
私はジョイナス王太子の目を見つめる。
「ジョイナス王太子!あなたの目は魔眼じゃないんですか?」
「ああ、さすが聖女。俺は4年前に女神に助けられてから人の嘘を見抜けるようになった。相手の瞳と吻合すると相手は本当の事しか話せなくなる。嘘はつけないんだ。だからデオロイが言った事はすべて真実だ。信じてくれるか聖女アリーシア」
「もちろんです。皆さん。聖女の名において彼が嘘を言っていないと断言します」
「「「「おおぉぉぉぉぉ!!」」」」
そこにいたすべての人間が声を上げた。
そしてすぐにグロギアス公爵も拘束される。
「ジョイナス王太子。これですべての真実がはっきりしました。って。本当にジョイナス王太子ですよね?ほんとパシュのイメージが強くってなんだか実感が湧きませんが…」
リント隊長が少し調子が狂うみたいな態度で尋ねる。
「ああ、俺も困惑している。何せ4年も自由に生きてるとこんな堅苦しい場所は…ハハハ。でも、俺は間違いなくジョイナスだ。ほら、これを見ろ!」
それは王太子しか身につけられないリングだ。
彼の胸元には鎖に通された王家に代々伝わる紋章の入ったリングがあった。
紋章は翼が3つ交差している三翼のマーク。間違いなく王家の紋章だった。
「間違いありません。失礼しました王太子。これでコルプス帝国は安泰です」
みんなが首を垂れる。
だが、ジョイナスはそんな態度をされると困るみたいな態度だ。
「俺、国王なんて嫌だけど…仕方ないよな。まあ、ロイドはミリアナに魅了されているみたいだから、アリーシア、今度ロイドの魅了浄化してくれる?あいつ後でお仕置きだから、あんな女の魅了にかかるなんてくそだな。それのロイドが正気に戻ったらおいつに王位を譲ってもいいし、そうだ。アリーシアに話があるんだ。アリーシアが王妃になりたいなら俺このまま国王になってもいいと思ってるからさぁ…ねぇアリーシアの気持ち聞かせてほしいんだけど…」
「はっ?今こんな所で一体どんな神経してるんですか?」
私の脳内はフリーズする。
(こんな所でムードもへったくれもないところで、みんなが見ている目の前で。って言うかジョイナス王太子、私あなたの事友人をしての好意は持ってますけど恋愛感情は全くないんですよ…ここではっきり言ったら傷つくわよね。なんて言えばいいんだろう?)
「ジョイナス王太子、お言葉ですがアリーシアと俺はすでに婚約しております。どうか諦めて頂けませんか?王太子にはもっとふさわしいご令嬢や他国のプリンセスなどもより取り見取りでございますので」
リント隊長が私の腕をぎゅっと取って反対の手で腰をぐっと引き寄せて私ににっこり微笑んだ。
私はああ、そういう話にしようって決めてたと思い出して微笑みを返した。
(隊長…私も今すぐにでもあなたの事が好きなんですと言いたくてたまらないんですよ~)とその瞳に心の声を発するが。
リント隊長は一瞬視線を合わせるとすぐにジョイナス王太子を氷のような視線で射抜いたらしい。
「リント!お前、いつの前にアリーシアに手を出したんだ?お前おっさんだろう。子持ちだよな。お前こそアリーシアにふさわしくないだろう。いいからアリーシアの事は諦めろ!これは命令だ」
ジョイナス王太子が私の愛ている反対側の腕をぐっととる。腰を引き寄せて自分とくっつけようとしてリント隊長と取り合いになる。
「この件に関してはどんな命令も聞く気はありません。例えこの命に変えても私達の愛は不滅です。諦めて下さい!」
私はふたりに引っ張られて…
「もう、ふたりともやめてください!こんな所でだいの男がみっともないです。いいから放して下さい!」
そこに騎士隊員が駆け込んで来た。
「大変です!アギルが檻から逃げ出しました。アギルは魔獣化しています」
もうひとり騎士隊員が駆け込む。
「アギルが他の聖獣、いいえ、他の聖獣もすでに魔獣化しているようです。こっちに…王城を突進してきます!逃げて下さい」
エクロートさんが「閉まった。先にアリーシアを行かせるべきだったか」と言った。
「ああ、そうかもな」リント隊長。
「そんなに切迫詰まってたんですか?」
「神官たちがなかなか教えてくれなくて名。オークの森にある神殿の魔源石がすでに相当穢れているらしいんだ。もう手遅れかも知れん」
「そんなことありません。ジョイナス王太子。魔源石持ってます?」
「ああ」
「すぐに神殿に。急いで!」
「そうか。魔源石がありましたね。行きましょう王太子」
ジョイナス王太子とエクロート他数人が出て行く。
私は大声で叫んだ。
「ガロン~声が聞こえたら私の所に来て~」
「きゅぅぅぅぅ~」(今すぐ行くよ~)
「皆さんは退避して下さい。後は私とガロンに任せて下さい」
(きっと浄化できるはず!お母様力を貸して)私は心の中でそう祈った。
「俺はアリーシアと行く。さあ、急ごう。ガロン~来い!」リント隊長が叫ぶ。




