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4これで良かったじゃない


 そしてやっと自分の部屋でベッドに横になった。粗末で固いベッドだがそれでも今までいた場所より居心地がいいと感じた。

 はぁ、やっとせわしない一日が終わった。


 想えばロイド殿下の婚約者になったのもいきなりだった。

 アギルを救ったとか騒がれてある日突然王命だからと婚約者となった。

 そのせいでみんなからは嫌がらせや心ない言葉を突き尽けられてきた。

 それでも私なりに一生懸命殿下に気に入られようとしてきた。

 それなのに、またいきなりロイド殿下から婚約破棄されて…

 今までの私の2年間は一体何だったのだろうか?

 確かにアギルの世話が出来たことは良かった。でも、それだけ。

 私は沁みだらけの天井に向かってふぅと息を吐く。


 新たな婚約者は同じ聖女でもあるミリアナ・グロギアス公爵令嬢だと聞いてやっぱりと思った。

 教会には聖女の力がある女性が10人ほどいたが、その中でも高位貴族令嬢のミリアナ様の期待は高かった。

 聖女は白翼騎士隊や黒翼騎士隊の所に魔獣退治に同行するがミリアナ様は別格でそんな危険なところに出向くことはなかった。

 私も何度か魔獣退治に出向いた事はあった。聖獣も滅多ではないが怪我をする事もあるし騎士隊員の治癒を行く事もあったから。

 でも、2年前アギルの様子がおかしい事にいち早く気づき手当てをして命を救ったらしくそれからはアギルが私にすごく信頼を寄せてくるようになった。

 言葉がわかる私はアギルと意志の疎通が出来て周りから見れば何でも言うことを聞くようになったように見えたのは確かだけど。

 きっとそれがきっかけでロイド殿下の婚約者に選ばれたのだろう。

 あの頃はロイド殿下の為に頑張ろうなんて思っていたのに…笑える。


 婚約者になると正式に聖獣の担当者になった。アギルの世話と一緒に王都にあるオークの森での聖獣の飼育がメインになった。

 オークの森で飼育している聖獣は全部で5頭ほど。

 ユニコスの雌の成獣が1頭(名前はナナ)白翼騎士団にいるのは雄でこれから繁殖が期待されている。

 ダイアウルフの雌の成獣が1頭(名前はサラ)と赤ちゃんが2匹。これはアギルと番でとっても仲がいい。

 ラマンダーの雌が1頭(名前はエリー)まだ成獣になっていない。

 ダイアウルフは奇跡的に番、繁殖に成功したがユニコスとラマンダーはこれから番にして子を増やしたいところだった。

 どちらも相性の合わないものとは番になる種ではないので難しいだろうが。



 (まあ、もう私には関係ない事だから。それにしてもアギルに毒を盛ったのは誰なの?いったいどうしてこんな事に。いくらミリアナ様には聖女の力があるとわかっていたからって婚約していたのは私だったのに。確か婚約は王命だったはず。なのに…ひどくない?

 そりゃ、私にはそんな力がほとんどない。10歳で魔力判定をするこの国で私は聖石をほんの少ししか光らせることが出来なかったし、容姿だってミリアナ様方が数段きれいだって認めるわよ。

 ちなみに私は赤い髪だし目は銀色だし。ミリアナ様は金髪碧眼出るところも出て超美人。

 ロイド殿下が私を嫌っていたことだってわかっていた。

 この2年顔を合わせるのはアギルの獣舎でばかり。婚約者だったらお茶会だってあると聞いたけどなかったし、普通誕生日プレゼントとか頂けるはず…なのに。ったく。可哀想な婚約者だったわよ。でも、契約は契約でしょ?これは別問題じゃないの?それに伯爵家は今回の件がおおやけになると即、養女の話もなくなっていたけど。まあ、そんな事はどうでもいいんですけど…でも、なんだかスッキリしないわよね…)

 アリーシアは婚約してフェルゼン伯爵家の養女となった。この伯爵家は代々聖獣を育てる家だと聞いていたが後にも先にも交流は全くなかった。

 


 私は反転して寝返りを打つとさっき聞いた話を思い出した。

 今回キルベートの教会に来て知った。この教会では魔獣の赤ちゃんの飼育をしている事を。

 辺境には魔樹海があってそこには今も魔獣がたくさんいるのだが。

 東の辺境に駐在している黒翼騎士団が魔獣を退治して親とはぐれた赤ちゃん魔獣を保護した場合この教会でしばらく面倒を見るらしい。

 そしてその後王都近くの聖なるオークの森で育てる事になっているらしい。

 元々魔獣は聖獣から生まれたものらしく、穢れた場所で育ったものが魔獣になると言われているので、魔獣の赤ちゃんを穢れのないオークの森で育てると魔獣ではなく聖獣が育つと言う事らしい。

 私が王都にいるときにはそんな事例はなかったので知らなかった。

 だが、落ち着くまではここでしばらく面倒を見るらしいのだ。


 と言うことは…この教会で赤ちゃん魔獣の飼育が出来るって事で…

 いいかえれば私に動物のベビーシッターのような事をしろと言う事ではないかと私は思い始めていた。

 (考えようによっては聖獣の赤ちゃんが見放題。私は当然、教会の診療所で働くとしても聖獣となる魔獣の赤ちゃんの世話も出来るなら悪くはないのでは…だって聖獣の赤ちゃんは可愛いもの。

殿下。どうかミリアナ様と幸せになって下さい。私はここで幸せになりますからご心配なく)

 私はそんな事を思いながら眠りについていた。







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