42魔獣が多すぎる。浄化をやるしかない
魔樹海につくと先についた隊員がもうすでに準備を整えていた。
「いいか、準備できた奴から西側Bブロックに入る。体制が整ったら隊長が空からいつものように魔獣を一方向に集めるからな。油断するな」
「「「「はいっ!」」」」
隊員たちもいつにも増して気合が入っている。
騎士隊では魔樹海をエリアごとに区切っている。東西南北それぞれAブロックBブロックⅭブロックに分けている。
なので西側Bブロックは西の中心部辺りになる。
私は魔獣が多いと聞いて騎士隊はある程度の成果を出すつもりなんだろうと思った。
先に入った隊員が奥側、後から入る隊員が手前側という事かと私は判断した。
「アリーシアさんは俺達とBブロックの手前側で応援ですので俺達から離れないようにして下さい」
「はい、わかりました。ですが私今日は防御もやりますけど浄化をやろうと思っています。でもこれをやるのは今日が初めてなのでうまく行くかどうかわかりません。皆さんにも協力お願いします」
「浄化ですか?」
「はい、やってみる価値はあると思うんです。魔獣だって元はただの獣ですよね?だったら無益は殺生はなるべく…」
「ええ、でも無理はしないで下さい。相手は魔獣ですから」
「はい」
そうやって隊員たちが持ち場についた。
ガロンが上空を旋回していたが西側の真ん中あたりを目指して急降下を始めた。
いつもの翼をはためかす動作ではなく、今日は大きく口を開けて青白い炎を吐き出している。
「おい、見ろ!ガロンが火をはいている。まずいだろう。火が燃え広がれば俺達もやばいぞ」
隊員が声を上げる。
(そりゃそうだ。でもそれは心配ないはず)
「見て下さい。炎は赤くはありません。あれは浄化の炎らしいんです。それより来ました」
暗い魔樹海の中に赤い目がいくつも見えてくる。数にして10近くだろう。
(それにしても多すぎる。でも、やるしかない!)私は覚悟を決める。
「来たぞ。油断するな。全員攻撃準備!」
騎士隊員が間合いを取って魔剣を抜刀する。
私は騎士隊員の前に出て両手を前に押し出した。
向かってくる魔獣にぐっと魔力を押し出すように力を込める。
「浄化!」
(神様どうか力をお貸し下さい。魔獣を元の姿に戻りますように…浄化!お願い。元の姿に戻って…)
力の限り魔力を押し出す。
手からガロンと同じ青白い光が広がり向かってくる魔獣の一団を覆いつくす。
魔獣はいきなり霧状の空気に包まれ一瞬動きが鈍る。
そしていきなりもがき始めた。
うなり声をあげ身体をくねらせ中には地面の転がってのたうち回るようなものまで。
魔獣は黒狼や大猪、熊のようなものまでいた。
私はさらに追い打ちをかけるように「浄化!」と声を発して魔力を発動させる。
空からはガロンが立て続けに浄化をしている。
私達の周りは青白い霧状の靄に包まれて行く。
魔獣はもうこちらに敵意剥き出しで向かってくる場合ではないらしく、その場でうめいている。
ゆっくり辺りの霧が晴れて行く。
黒々していたまわりが何だか薄い色に変わった気がした。
「おい、見てみろ!魔獣が…」
「嘘だろ。あれは熊か?」
「あれはイノシシだろう?」
「こっちは黒狼が倒れているぞ」
「それに木が何だか茶色になって、嘘だろ…葉っぱが緑色になって…」
そこにいた隊員全員が絶句した。
そこには森が。あの美しい樹海が広がっていた。
「信じられん。魔樹海がなくなった」
「ああ、魔獣が普通の動物に戻った…おい、信じれるか?」
「アリーシア、もしかして浄化ってこういう事なのか?」
「…見たいですね。私だって驚いてます。まさかここまでとは…」
「それにガロンがあんな技が使えるなんて…ってあれももしかしたアリーシアがいるからか?」
「くはっ!聖女ってすごいじゃないか!」
「「「「聖女様~」」」」
その場の隊員がアリーシアにひれ伏した。
その後リント隊長も降りて来て樹海を見て驚いたのは言うまでもなかった。




