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アリーシアは婚約破棄されたので辺境で幸せになりたい  作者: はるくうきなこ


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40近づく距離


 私はパシュの事があってからも診療所は相変わらず忙しく毎日慌ただしく過ごした。

 ガロンとは毎日会うのでガロンの機嫌はすこぶるいい。

 おまけにアランの家が隣ということもあって、アランから仕事が終わると一緒に食事しようとか一緒に遊ぼうとか言われてついアランの家にお邪魔する機会が…いや、ほとんど毎日アランの家に行くのが日課になってしまった。

 そこで夕食を一緒に食べることになってリント隊長も帰って来て3人で一緒に夕食を取るようになった。


 今日もリント隊長は私を見るとなぜか機嫌が良くなるみたいなのだが…

 (実際はどうなんだろう?)そんな考えが浮かんでしまう。

 「アリーシア、今日もすまんな。またアランが無理を言ったんだろう?」そう言いながらも目尻にしわを寄せて頬の表情筋はふにゃりと緩む。

 「すみません。何だか毎日お邪魔してしまってアランとの大切な時間なのに私ったら、ほんとは迷惑ですよね?」

 「アリーシアだめ!帰っちゃダメ!ねっ、パパいいでしょう?」

 アランが焦ったようにそんな事を言う。

 「ごめんアラン。そう言う事じゃなくて…」

 「アリーシア気にしなくていい。アランも喜んでるんだし、俺も君がいるとにぎやかで楽しいんだ」

 「そうなんですか?じゃあいいんですけど」

 リント隊長の眉が上がる。

 「まさか、無理強いしてるとか?どうなんだアリーシア。嫌ならはっきり言ってくれて…いいんだ…その…アランの事は気にせず…」

 「いえ、違うんです。私は好きでここに来てますから…」

 (その言葉尻は何だかほんとに悲しそうで私、勘違いしそうなんですけど、もしかしてリント隊長は私に好意を寄せてくれているんじゃないかって。

 だから、思わず好きだなんて言ったけど…)


 「そうか。好きで…「僕もアリーシアがしゅきです!だいしゅきです!」ああ、そうだな。アラン良かったな」

 リント隊長の顔が赤いのはどうしてなのかわからないまま食事が進んで行った。


 食後のお茶も飲むころにはアランもうとうとし始めた。

 「私そろそろ…今日もごちそうさまでした。もう、ネクノさんの料理すごく美味しいからついつい食べ過ぎちゃって…アランも眠くなったよね。また明日ね。いい夢見てね」

 私はソファーから立ち上がり扉に向かう。

 「アリーシア帰っちゃうの?やだぁぁぁ~」

 アランは眠いせいなのだろう。ぐずり始めた。何だかガロンみたい。可愛い。

 私が手を差し伸ばすより先にリント隊長がアランを抱っこした。そして私を見送ろうとしてくれた。

 「さあ、アランはパパと一緒に本を読もう。なっ。アリーシア今日もありがとう。そうだ。明日は午後から魔樹海に行くから準備を頼む。パシュが言っていた通りどうも魔獣が苛ついて集まっているらしい。無理はしなくていいから後方支援を頼む」

 「はい、昨日から連絡貰ってますから明日の午後は診療所もお休みするとお知らせもしてますので、昼には騎士隊の方に顔を出します」

 「ああ、すまんな。だが、くれぐれも無茶はするなよ。君はすぐに無茶をするから…」

 リント隊長の空いた手が私の髪にそっと触れた。

 「それにしてもきれいな髪だ…」

 そう呟かれ、かぁぁと頬が熱を持つ。

 子供の頃はこの髪色の事で良くからかわれた。気持ち悪いとかみんなのと違うとか…だから私は髪には自信がなかった。


 「そんな…こんな髪色なんか「俺は好きだ。君の髪色もその吸い込まれそうな銀色の瞳もすべてが美しいと思う。君は清く美しい。俺はそんな女性が好みで…いや、すまん。余計なことを」

 「あ、ありがとうございます。そんなに褒められたのは初めてです。とってもうれしいです。でも私そんな清廉潔白じゃありませんよ。だって隊長のその琥珀色の瞳、初めて見た時から惹かれました。隊長こそ私の好みにドンピシャで…聖女なのにこんな気持ち…やだ。私…もう帰ります」

 恥ずかしくてその場を一刻も離れたくて私はくるりと身をひるがえした。

 リントの手が私の肩を引き留める。

 「アリーシア…俺は君の事が「パパぁぁ~」ああ、アランすまん。もう眠いよな…」

 「アランお休み。じゃあ、失礼します」

 アランがそんなの許さないとでも思ったみたいだとそんな考えが脳内でよぎる。


 私は急いで部屋を出た。一目散に玄関から飛び出し自分の家に走って帰った。

 玄関を入るとその場にうずくまった。

 脳内で思考がぐるぐる回る。

 彼の言葉の先を聞きたいとも思った。でも、その先を聞くのは恐かった。

 初めて感じる気持ち。胸の奥がどうにもならないほどもやもやして…

 相手は子持ちの40歳。騎士隊長で勇敢で律儀で実直で…それでいて強情な人なのに。

 私はそんな彼のそばにいたいと思うのは罪なのだろうか。








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