27リントのモヤモヤ
俺はアリーシアを前に乗せて馬を走らせた。
騎士隊までの距離はそんなに遠くはない。馬なら10数分ってとこだろう。
なのに。なんだ?このいい香り……
頬を撫ぜる彼女の髪はとんでもないほど柔らかでうっかりすると頬ずりしてしまいそうになる。
手を回したその華奢な身体には程よい肉が付いているのがはっきりとわかる。
(意外と胸が大きいんだ。おいおい、何を考えている。お前女はこりごりなんだろう?
ましてやこんなお転婆だし俺とは20歳も年が離れているんだ。相手になんかなるわけが‥そんなことより問題はガロンだ!)
脳内にこれ以上おかしな思考が沸き上がらないようにガロンの事を考える。
俺はここの所ガロンの様子がおかしくて参っていた。
ガロンの様子がおかしくなったのはアリーシアが帰ってからだ。
魔獣退治の時ガロンはものすごくアリーシアに懐いていた。あんなガロンを見たのは初めてだし甘えている姿は微笑ましいほどで…
湧き上がる嫉妬心だろうか?俺だってこの4年ガロンには愛情を掛けてきたつもりだ。
餌をやったり身体を洗ってやったり、いつだって怪我はないか体調は大丈夫かと心を砕いて来た。
それなのにあいつ。アリーシアを見た時からそうだった。
一瞬で恋にでも落ちたみたいに蕩けた目をしたよなあいつ。
でもアリーシアはアランにもよくしてくれた。あの帰りにアランの様子を見に行ってくれてたなんて知って驚いたしうれしかった。
アランは今度一緒にピクニックに行くと約束したんだといい張る始末で。
まったく、アリーシアはいきなり現れた太陽みたいな存在で魔獣退治でも信じられない活躍をして。
さっきは辺境伯まで…あいつは嫌な奴だからほんとにアリーシアを近づけたくなかったのに一体どこで知り合ったんだ?
あのくそじじい。もしアリーシアに手を出そうとしたら今度こそぶっ潰してやる!
俺は湧き上がる気持ちにおかしいとも思わず憤怒した。
あっという間に騎士隊に着いた。そのままガロンの所まで馬を走らせる。
「隊長ずるいっすよ。アリーシアさん乗せちゃって」
「あっ、いいですね。アリーシアさん今度は俺の馬に乗って下さいよ」
「今度も魔獣退治来てくれるんですよね?」
「「「俺達、頼りにしてますからアリーシアさんの事!」」」
アリーシアはみんなに手を振った。
「黙れ。お前ら人を当てにするんじゃない!ったく。アリーシアさんもそんな笑顔振りまかなくていいからな」
「ええ、安心して下さい。隊長には振りまきませんから」
なんだ?この脱力感は?どうしてこんな気持ちになるんだ?アリーシアに微笑まれなくたって俺はそんな事気にするはずがないのに…
もやもやした気分のままガロンの獣舎に着いた。
「とにかくガロンの様子を見てくれ」
「はい、ガロン?大丈夫なの~」
アリーシアの声がした途端ガロンが起き上がったらしく大きな音がした。
「どがっ!きゅきゅきゅ~ぎゅぅぅぅぅぎゅぅぅぅぅぎゃぐぅぅ~」 (あっ、アリーシアの声?やっと来てくれたの。僕ずっと待ってたのに。ひどいよ~)
俺は一瞬ガロンはアリーシアに恋をしているのではと思う。
まさか。おい、ガロンお前一体どうしたんだとおろおろするばかりだった。




