23アリーシアの真実1
私は教会に帰って来るとクレアが出迎えてくれた。
「ああ、良かった。心配してたんです。騎士隊長は融通の利かない方で有名ですからなかなかこちらの言うことを聞いてくれないってレベルと神官も嘆いていたんですよ」
「ええ、ほんとに、話の分からない方ですよ。ちょうどロベルト神官が来て下さっていなかったらまだあそこにいたはずです」
「そんな事よりおなかが空いたでしょう。アリーシア夕食にしませんか?」
ああ、そう言えば魔獣退治で帰って来たのは夕方、あれこれしていてもうすっかり日は暮れていた。
「そうですね。今日は疲れました。でも、クレアさん夕食の後で話があるんですが…」
「ええ、わかりました」
「クレア聞いてくれアリーシアハ凄いんだ。騎士隊長のお子さんが具合が悪くてね。それをあっという間に治したり、魔獣退治にも同行したらしい。まったく、すごいとしか…」
「ロベルト神官!恥かしいからそんな話は…」
「ふふ、これは後でじっくりアリーシアに聞かせてもらわなければいけませんね」クレアさんが楽しそうに言う。
そして夕食を済ませて部屋に戻った。
すぐにクレアがお茶を持って現れた。
「お茶を持って来たんだけど…話にはまだ早かったかしら?」
クレアも気になることがあると言いたげな顔だ。
「いいえ、どうぞ入って下さい」
私は部屋の中にクレアを招く。小さな部屋で椅子は一脚だけなので私はℬ向かいにあるベッドに腰かけた。
私は何から話せばいいのかと考えを巡らせる。緊張で喉が渇いてカップに手を伸ばす。
それはクレアも同じで互いにお茶を口に運んでカップを置いた。
「それで話って?」クレアが聞いた。
「ええ、実は私の生まれの事なんです。クレアは私が赤ん坊の頃からここにいましたよね?教会の外に捨てられていた私を見つけたのもクレアだったはず。だから、私が誰の子供か知らないかと思って…」
いきなりこんな話おかしいって思われるだろう。でも、他に尋ねる相手もわからない。
クレアは少し驚いたのかはっと私を見た。
私は悪い事をした子供みたいな気になった。
(ああ、どうしよう。何だかいけないことを聞いたのかな?でも、それが分からないと困るし‥そうだ。聖獣の事を話してみようか…)
「あの…実は…聖獣のガロンって知ってますよね?赤竜の」
「ええ、もちろん。黒翼騎士隊に配属されているガロンですよね?」
「はい、実は私、聖獣と話が出来るんです。あっ、と言っても考えていることが分かると言った方が近いでしょうか」
私は驚かせてごめんなさいって気持ちでそう言った。
が。クレアはあまり驚かなかった。
「あの…驚かないんですね」
「えぅ?いえ、驚きすぎて…」
「そうなんですか。すみません。とにかくガロンとも意思の疎通が出来るんですが…それでガロンから驚くことを聞きまして」
「ゴクリ。驚く事?」
クレアは私のそばに詰め寄る。
「あの…ガロンは私をフローラと言う女性と勘違いしまして、彼女はイエルハルド国とどういった関係なのかご存知ですか?それに女王がどうとか…」
クレアの顔から血の気が引いて行く。
「ガロンが貴方をフローラ様だと…」呟くように言葉をこぼす。そしてクレアの瞳から涙が零れ落ちた。
「アリーシア。いえ、アリーシア様あなたに本当の事を話す時が来たようです」
「クレア…」今度は私がごくりとつばを飲み込む。




