20ロベルト神官迎えに来る
夕方になってやっと魔獣がいなくなったと確認出来た騎士隊は見張りを残して一旦引き上げることになった。
村長にも連絡をして20数人の村人も里に戻る事にそれに合わせて私はエクロートさんや隊員と一緒に騎士隊に戻る事になった。
騎士隊に戻ると私は隊長室に行くよう言われる。
リント隊長は先にガロンに乗って帰ったので私たちより帰りが早かったらしくロベルト神官が騎士隊長室にいた。
私が隊長室に入るなりロベルト神官がやっと会えたという顔だ。
「アリーシア無事ですか?魔獣退治に行ったと聞いて心配しました。それにあれから何度も君を引き渡すように頼みに来たんですが取り調べ中だと言われて…それで今日も催促に来てみたら…」
神官は心配顔で尋ねた。
私はほっとして神官に微笑んだが。
(それにしてもやっぱりロベルト神官が引き取りたいって来てくれたんじゃない。それなのにこいつ…でも、神官は悪くないんだから)
私は心配しているロベルト神官に大丈夫だと話をする。
「ロベルト神官。ご心配をおかけしました。でも、私はほら、この通り大丈夫ですから」
「良かった。魔獣なんて初めて見たんじゃないんですか?それなのに平気でしたか?」
「まあ、最初は驚きました。恐かったし足もすくんで「だから魔樹海には来るなと言っておいたはずだ!」
リント隊長が迷惑そうな顔で眉を顰める。
「でも、少しはお役に立てましたよね?怪我をした人もすぐに治癒魔法掛けれたし、隊員の方は喜んでましたけど」
(まったく、隊長は私をすぐに悪者にしないと気が済まないみたい。ふん、嫌な奴!)
心の中でべぇ~と舌を出す。
「でもアリーシア。隊長が心配するのは当然です。何しろ相手は魔獣なんです。騎士隊員は魔剣を持っていますが、いくら聖女だからと言っても攻撃は出来ないんですからね」
「いえ、それが、どうも私力が増幅したみたいで、防御魔法なんて使った事もなかったのに出来たんです。ほんとに驚きました」
「そうなんですか。もしかしたらアリーシアにはここの土地があってるのかもしれませんね。ここは女神の加護がある土地ですから…これからはずっとここで暮らせるんです。良かったじゃないですか」
神官とのんびりと話をしていたら突然リント隊長が怒り始めた。
「アリーシア。さっきから聞いてりゃ、使えるかどうかも分からずに魔樹海に飛び込んだって事なのか?ったく。勘弁しろよ。もし防御魔法が使えなかったらどうするつもりだったんだ?騎士隊員がまずってお前が大けがをするかも知れなかったんだぞ!」
私は一気にふにゃふにゃ縮こまる。(ええ、確かにビビりました。恐かったです。ほんとに)
「そうですけど…でも」
「でもじゃないだろう。いいか、もう二度と魔獣退治に同行しなくていい。わかったか!」
「わ・か・り・ま・し・たっ!」
私は隊長にふてくされた返事をする。
神官様が一度私に優しく微笑んで、抑えて抑えてと手で制する。
そして隊長の方を向くと話を始めた。
「アリーシア。いいかい隊長は君を心配して言ってるんだよ。あっ、それで隊長…今日こそアリーシアを連れて帰ってもいいですよね?」
「あっ、そうだな。その代り先日のような治癒行為をしない事。約束できるか?」
「そのことに関しては私の方できちんと管理しますのでご安心を」
「でも、ロベルト神官。せっかく治癒魔法が使えるんですよ。使わないなんて勿体ないじゃないですか!」
「いえ、決まりは決まりです。アリーシアにはちゃんと守ってもらいますからね。では隊長これで失礼します」
「でも…」
私がまだ何か言おうとしたら神官に腕を掴まれて無理やり隊長室から連れ出された。
「アリーシアはずっとここにいたいんですか?」
「とんでもありませんよ。早く返してほしいと何度も頼んだんですから、それなのにあの石頭。まったく融通が利かなくて」
「そんな人に逆らっても仕方がありません。さあ、とにかく帰りましょう。みんな心配してたんですよ」
「ほんとにすみません。いろいろ心配かけて…ロベルト神官。帰ったら聞きたいことがあるので」
「話は帰ってからにしましょう。いつ、隊長の気が変わるかもしれませんから」
「ええ、そうですね」
私達は騎士隊を出て行こうとした。そのとき不意にアランの事を思い出した。
そう言えばアランの様子を見てみようと思っていたのに、魔獣騒ぎですっかり忘れてたわ。
「ロベルト神官、ちょっと寄り道してもいいですか?」
「ええ、どちらに?」
「騎士隊長のお宅にお子さんがいるんですけど、先日ブリド病にかかったばかりで少し心配なんです」
「ブリド病ですか…それは心配ですね。いいですよアリーシア行きましょう」
(さすが神官。そう言うところはリント隊長とは大違いだわ)




