12誰の声?
『ねぇ、アリーシア。あなたはフローラなの?だったら僕の事わかるよね?僕はフローラが助けてくれた時にやっと気づいたんだ。あなたが僕のご主人だと…ねぇ?僕の声聞こえてる?』
いきなり私の脳にガロンだろうと思われる声がする。
(ガロン?えっ?これは夢?……)
『もうぉぉぉ~じれったいなぁ。これでも思い出さない?』
不意に聞こえて来た別の話し声に私は無意識に気を向ける。
『リジェク。アリーシアを何とか助けなきゃ』
『ああ、きっとここももうすぐ包囲される。フローラ、君はアリーシアを連れて逃げるんだ』
『そんなのいやよ!リジェクと離れるなんて』
『いや、だめだ。君は生き残ってイエルハルドを再建するんだ』
『そんな事をしたらザイアスはもっとひどい事をするわ。これ以上国民を苦しめるなんて女王として出来るはずがないわ!私はもう覚悟している。でも、この子は…』
『君って人は…わかった。アリーシアを信頼できる人間に託そう』
『ええ、アリーシアさえ生き延びてくれるなら…この子をお願い』
『はい、女王様、王女は命に変えてお守りします』
『さあ、急いで、もう近くまで敵が迫ってるわ』
『はい……』
そこで話は途切れしばらくしてまた声がした。
『ねぇ?どう?僕はあの時一緒にいなかったけど、フローラの声が聞こえたんだ。バカルに連れて来られて離れ離れになったけど僕はフローラのしもべだよ。だからずっと待ってたんだ。僕を迎えに来てくれたんだよね?』
私は無意識だった。今はただに深い湖の底にいるような耳を塞がれているような感覚が脳内を漂っている。
(誰なの?一体何の話を…)
『ドーン!!ギャ~、助けて~…止めろ!彼女に触れるな!リジェク…いやぁぁぁ…』
私は身体が恐ろしいほど強張ってそんな声に恐怖と恐れを感じる。
(何が起こってるの?それにこの人達は誰なの?まさか…誰かに?…)
『最後にこんな声が聞こえてそしてあなたの声は途絶えたから。あれから僕がどんなに呼びかけても何も変わらなかった。ずっと心配していたんだ。やっと迎えに来てくれたんでしょう?』
(なんの事?ガロンは何を言ってるの…?)
私はずっしり重だるい感覚がして目を薄っすらと明けた。
意識が朦朧としてそのうちだんだん靄が晴れるように目を覚ました。
(えっ?私どうして…ここはどこ?ガロン。そうだ。それにさっきの声はガロンだったはず…なのに?)
見たこともない美しい天井にべっどはふかふかで掛布はすべすべ気持ちがいい。
やっとガロンに治癒魔法をかけた事を思い出す。
(私…そうか。ガロンが毒を食べてそれでガロンを吐かせて…魔法をかけてガロンは眠った。そう、ガロンは助かったんだったよね?それで…そこから記憶がない。それよりさっきの声はなんなの?)
「気が付いたんですか?」声がした。
「えっ?…はい、あのここは」
「ここは騎士隊長のお屋敷です。あなたはガロンを助けるために力を使い過ぎたとお聞きしています。ほんとに大変でしたね。どうか、安心して下さい。そうだ。私はここで働いているネクノと言います。喉が渇いていませんか?」
「はい、少し…」
私は戸惑いながらやっと先ほどの出来事を思い出す。
「では、すぐに飲み物をお持ちします。それからあなたが気づかれた事も知らせないと」
「私は平気ですから、あの、私が気を失っている間に何かありませんでした?誰かが襲われたとか…」
「いえ、そんな物騒なことはありません。安心して下さい。ここは安全ですよ」
私は夢でも見たんだと納得した。そして起き上がろうとしたがまためまいがした。




