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第4話

 玄関先に居るカイトに、サナが気づき真っ先に話しかける。


「あ……カイト」


「ようサナ。久しぶりだな。変わりないか?」


「うん……。元気にやってるよ」


「そうか、それは良かった」


 二人の間に気まずそうな時間が流れる。


「おい、カイト、何しに来たんだ」


「アラタ……。俺が組織の隊服を着てここに来てるって事に、お前もなにか心当たりはあるだろう」


まずいな。俺が居たことは最悪話しても良いが、あやめの素性が不明な分、洗いざらい話すととてつもなく面倒な事になる気がする。


「大規模な災害が起きたことは知ってるが……特に話せることはねぇよ」


「オイ……すっとぼけるなよ。お前、さっきまで東地区の住宅街に居ただろ。あそこは今見るも無惨な状況だ。あんな大規模な能力行使は黎明期以来無い。んで、犯人と思われる人物は花びらに包まれて10km先の泉ヶ岳までぶっ飛ばされてた。色々と不可解なんだよ。極めつけはお前らしき人物の目撃情報が出てると来た。どういう事か、説明してもらおうか」


 更にまずいな。情報を手に入れるのが早すぎる、ほぼバレてる。にしてもムッスリ顔しながらベラベラよく喋るなこいつ。

可能ならアヤメの情報は伝えずに乗り切りたい所だが……。


「俺に話すメリットが無いな」


「勘違いするなよ、今までのは昔のよしみで見逃してやってたんだ。やろうとすればお前の事はいつでもしょっぴけるんだぞ。お前は組織の人間じゃあない。一市民として、事件の情報を提供するのは当たり前ってことを弁えろ」


「相変わらず俺には上から目線なの腹立つんだよなお前。わかったよ、全部話す。その代わり俺とサナ、園長先生に迷惑はかけないと約束しろ」


「……お前の事は、話を聞いてから考える。が、他の条件は飲んでやる」


「まず、あの巨大男だが、何者かは俺にも分からん。東地区を散歩してたら、上空に俺らと同じ歳くらいの2人が空中に居るのが見えた。そいつらが男に何かを注射してから、巨大化した男が降ってきた」


「空を飛ぶ能力と注射器……」


「ああ、それに『この一帯はこいつが破壊する。俺らが手を下すまでもない』って言ってた」


「……あの地域の破壊が目的か? それとも注射器で打った()()の実験か……」


「さあ、そこは計りかねるな。注射打ったあとは『アクティベイト』って唱えたら例の男が巨大化したって訳だ」


「注射に呪文……。過去にない例の事件だな。俺らと同い歳くらいの連中についての情報は?」


「背格好と声的に2人とも男だろうな。1人は少し声高めだったけど。遠かったしフードしてたから顔は見えなかった。向こうも俺の顔は見えてないだろうな。暗視とかの能力がない限りは」


「聞いてない事まで喋るな、主導権は俺だ。巨大男にあった無数の切り傷、そして花びらは一体何だ?」


「あ?イチャモンつけんなよ、俺が喋んないと先進まねぇだろうが。あの花びらは俺の能力だ。つい最近覚醒したんだよ」


「……」


 カイトさすがに驚いたか、黙りやがった。

サナもアヤメも何も言ってないが顔は驚いてるな。もう少し隠せ。アヤメの存在がカイトにバレるのは新たな面倒を産むっていう俺の意図を汲み取ってくれ。


「能力の詳細は」


「手から花びらを出せる能力だ」


「……それであの巨大男を吹っ飛ばしたと」


「ああ」


「つい最近覚醒した割には出力がありすぎじゃないか?」


「そりゃお前……あれだ。火事場の馬鹿力ってやつだ。常日頃戦いに身を置いてるんだ。お前も経験あるだろ?」


「まあ確かに窮地に追い込まれた能力者(ホルダー)は稀に能力の変化や異常な出力を示す場合があるが……」


「それそれ、そういうやつだよ」


「まあいい、聞きたかったことは聞けた。最後に、お前の能力見してみろ」


「え?」


 嘘付くと、こういう時困るよね。あの能力はアヤメの借り物だから今の俺じゃ出せないのでは……。

アヤメの方を見ると、腕を組んで仁王立ちしていた。『お主ならやれる!』的な顔してるな。なんだその表情。表情から考えを推察するのは割と得意だが、出会ったばっかなのと天然っぽいとこあるから心の内が読めねぇ。

 その表情そのまま受け取っていいのか?どうなんだ!?


「おいアラタ……。どうした、能力覚醒したってのは嘘か?」


「んああ……、覚醒したばっかで出す時にまだ時間がかかってな、ほら見てろ! ぅおらァ!」


 俺は手に力を込める。なんと、さっきのグラジオラスの花が俺の手から勢いよく出てきた。

だが俺は2つミスをした。1つはを力込めすぎたこと、もう1つは室内で能力を使ってしまったこと。


『バゴォン!』


 玄関ドアが花びらによって勢いよく吹っ飛んでいく。


「あ……」

 やっちまった。

 吹き飛んで行った玄関ドア、そして吹き込んでくる風、静かーな時間が流れ、ここにいる全員が唖然としている。


 そして、俺とサナとカイトは、この後に起こることを想像して更に血の気が引いてゆく。


「ウォォォイ!! なんだァ今の音ァ!」


 あー来た。これは流石にサナにゴメンだわ。まあカイトもついでにゴメンだわ。

『ドドドドドドドド』


「ぉお前らぁ! こんな夜中になにしとんのじゃあ! 子供がまだ寝てるでしょうがァ!」


「あー、来ちゃったよ……、どうするのアラタ?」


「俺知らねぇぞ、アラタお前どうにかしろよ」


「わーってるよ。んあー。マジ面倒なことになった」


「って、アラタ! カイト! サナ! お前ら何してるんだァ! (はよ)う寝んかい!」


「園長、これは実は……」


「言い訳無用! アラタはその様子を見るに点呼後の無断外出とグラマラスな友人の連れ込み、サナはその扶助、カイトは園を出た身でありながら園長の許可無く夜中に無断に侵入! 全員、園内掃除の罰だ。何か言う事は?」


「待ってくれよ園長、俺はアラタへの捜査の一環で来たんだ、俺には警察権もある。社会のルールには」


「社会のルールは社会のルール! 今俺は園内のルールの話をしてるんだ、警察権は関係ない。はい次。サナ」


「私は、アラタが帰ってこないことを心配して……」


「俺が聞いているのはアラタの外出の扶助の件。それは弁明になってない。はい次。アラタ」


「あ〜、俺は……」


『スコォン!!』


「ってかオメェんな事よりいつになったら非公認のパトロール活動辞めんだバカ野郎ォ!」


 スリッパで頭ぶっ叩かれた。痛ってぇ。

今ガチフルスイングしてきたのは、俺とサナが住み、カイトが一昨年までいた「ひだまり園」の園長ホンゴウさん。

 誰にでも分け隔てなく平等にお節介も焼くし、今みたいに怒ってくれる。月並みな言葉だが、厳しくも優しい俺らの尊敬する人だ。


 でも怒ったらマジで怖い。


「痛っ……」


「ああん? なんだ?」


 あと多分元ヤン。怒ると巻舌で喋るし、めっちゃガン飛ばしてくるし。


「なんでもないです……。明日掃除やります」


「やります?」


「やらせてください」


「おーそうだそうだその意気だ。」





そういえばお前、能力の登記はもう済んでるのか?」


「え、登記?」


「覚醒後は速やかに、組織(ディアシオン)に能力の詳細について届出を出すって。原則2週間以内」


「んだよそれ、そんなんあんのかよ」


「授業でやっただろ。高3なら超常科学特論で」


「サナ、やったか?」


「うん、一昨日の授業で聞いた。でもアラタその時寝てたからそりゃ覚えてないよね」


「ダメだろアラタ〜! 授業は真面目に受けんとな!」



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