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第3話 自称"神"

 都ノ杜市、児童養護施設『ひだまり園』にて。


「た、ただいま〜。アラタで〜す、帰ってきました〜」


 俺は、現在自分が暮らしている孤児院(いまは児童養護施設って名称に変わっている)の玄関の戸をこっそりとゆっくりと開ける。夜中で子供たちはみんな寝てるからな。


 戸を開けると、腕を組みながら仁王立ちしているサナが居た。


「あ、アラタ! 無事でよかった……! 急に通信途切れたから心配したんだよ〜!」


「悪い、サナ。あの通信のあと、突然降ってきた巨大人間に襲われて、この女の子を拾って、それで謎の超能力で巨大男を撃退してきてだな……」


「うん、なんかもう状況意味わかんなすぎて色々と聞きたいことあるんだけど、まず、そのお姫様抱っこしてる女の子はいったい誰かな?」


 サナは無理やり笑顔を作っているが、顔がひきつっている。これはサナが怒っているパターンだ。


まあ、お年頃の高校生(俺)が巨大男に襲われた後、15歳くらいの女の子をお姫様抱っこして持ち帰ってきたらそりゃ状況理解できないよな。


「んーと、潰されそうになってたところを拾った……」


 言葉を選んで喋らないと火に油を注ぐことになる。だが上手い言い訳も思いつかない。ただ事実を言うのみになってしまう。


「人を拾った。って、ありえないよアラタ……。その辺の小石じゃないんだから」


「ん〜と、俺、結構ヤバイことしてる?」


「してるね」


「どうしたらいい? 俺」


「とりあえず警察」


「俺、捕まる?」


「状況によっては」


「まさか、この施設初の逮捕者?」


「そうなるね」


「まずくね?」


「アラタ今気づいたの? 普通にまずいよ、誘拐だよ? 園長に顔立たないよ」


「……自首してくる」


「付き添うよ」


「「……」」


 焦った俺と、冷静なサナのやり取り。

そしてこれからの流れを想像し血の気が引いてる俺らの間に。静かな時間が流れる。

 永遠にも感じる静寂の中、少女が目を覚ます。


「う〜ぅ〜!」

 

 のびをする少女。


「起きたか……」


「お主、なかなか良い寝心地であったぞ。褒めてつかわす!」


 ドヤ顔プラスやたらと満足気な表情してるな。

俺はお先真っ暗になる可能性があるっていうのに。


「ああ。褒めてくれてありがとうよ」


「して、ここはどこじゃ?」


「俺の住んでるところだよ」


「ふむ。お主の家、大きいのう。裕福じゃな」


「別に俺の所有物って訳じゃないよ」


「ふむ?」


 ここでサナが少女に質問する。


「ねぇねぇ。 あなた、お名前は? 私はサナ。機嶋(きじま) 作奈(さな)


「う〜む。名前とな。恐らくわしにもあったのであろうが、覚えておらんのじゃ」


「え〜! 記憶喪失!? じゃあなんて呼べばいいのかな……」


「う~む」


 そこでサナが俺の手元にある何かを発見する。


「ねぇねぇ。アラタ、それってもしかしてグラジオラスのお花?」


「ん、おお、グラジオラス? それはわかんないけど、さっき巨大男をぶっ飛ばした時に俺の手から出た花だな」


「手から花が出たって……なにそれ」


「恐らくこの少女の能力を俺が一時的に借りたって感じだと思う」


「なにそれ! もしかしてあなたお花の能力者(ホルダー)なの!?」


 少女を覗き込むサナ。


能力者(ホルダー)とな? 確かに誰かを依り代にすれば能力は発動可能じゃが……」


「すごい! お花を出すなんて可愛いらしい能力ね!」


「フッフッフッ、そうかのう?」

 口をすぼめてほくそ笑む少女。めっちゃ嬉しそうだな。かわいいは魔法の言葉、ってやつか?


「んじゃあお名前は、思い出すまでとりあえずアヤメちゃんって呼ばせてもらうね!」


「アヤメ? 何でだ?」


「アラタは昔っからお花とか興味無いから知らないよね……。実はこのひだまり園でも育ててるんだよ? グラジオラス。別名"唐菖蒲"、"オランダアヤメ"」


「なるほど、そういう」


「アヤメとな……! 悪くないのう! かわいいか?」


「うんかわいい〜! それにかっこいいんだよ~! グラジオラスは長く伸びた茎にいっぱいお花が咲くからまるで剣みたいに見えるんだよ! 花言葉は色々あるんだけど、私が好きなのは"勝利"と"努力"だね!」


 熱弁するサナ。


「かわいい、そしてかっこいい、勝利と努力。良いのう、良いのう! アヤメで決定じゃ!!」


 興奮する少女、アヤメ(仮名)。


「ところで、アヤメちゃん。あなた一体どこから来たの?」


「思い出せん!」

 キッパリと言うアヤメ。


「思い出せることは?」


「無い! 能力の使い方と、わしが神であることのみじゃ!」


「「神?」」

 突然のカミングアウトに俺とサナの呼吸が合う。

ふたりで首をかしげる。


「そう。神じゃ」


「なんで神ってわかるんだ?」


「う~む。それは覚えとらん。じゃが、今感覚的に分かるのは、この肉体はわしの能力の一部で創り出したものに過ぎんということじゃ。少年、もうそろそろわしを降ろしてくれ」


「お、おう」


 俺はアヤメをゆっくりと降ろす。立っているところを改めて見るとただの背が小さい(身長150cm)中学生くらいにしか見えない。


「さて、わしがこの肉体を創り変えれるところをお見せしようかのう。ほれ」


 サナの肉体がみるみる間に大きくなっていく。 ものの数秒で今の俺と同じ身長(180cm)の女性に変化した。

服はパツンパツンだな。サナがいる手前『思春期にそれキツイから止めてくれ』とも恥ずかしいから言えない。


「マジでか」

「え~っ!! すごい……! 何その能力!」


「ふふん! これぞ神じゃ!」

 高身長女子となりドヤ顔をするアヤメ。スタイル良すぎてなんかコエーよ。


【ガチャン】


 と、その瞬間、急に玄関の戸が開く。

扉の向こうに居るのは、俺の幼馴染ふたり目。険しい顔をしている天羽(あもう)戒人(かいと)だった。

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