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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第411話 邪神ネメシス再び

 聖水を持った冒険者たちが、魔獣を狩るため次々に都市に散らばって行く。騎士達は市民を守りつつ、戦いの音がする方向に誘導する。その先に、数体の鬼みたいなのに混ざり斑紫大蛇みたいなのまでいて、それに対峙している冒険者と領主と騎士団がいた。


 アンナが言う。


「オーガ……進化するとあそこまでなるのか」


「マズいの?」


「オーガが三体。ヴェノム・エロシオン・バイパー。あの冒険者と騎士団では討てない」


「えーっと、エロ?」


 そんな、やりとりをしているうち、騎士達が聖水を片手に突っ込んでいった。


「「「領主様!」」」


「あ、まって。だめ」


 あらかじめ身体強化を、かけていればよかった。ツッコんだら、エロのデカい尻尾で弾き飛ばされる。騎士達はそのまま飛ばされ、周りの住居の壁を突き破る。


 言わんこっちゃない。


 すると、領主が俺達を見る。


「こ、ここは危険だ! 市民は近寄ってはならん!」


 その声に反応して、エロとオーガが領主に向かう。


 こりゃヤベえ。


「アンナ!」


「ああ!」


「ライトニングボルト!!!」


 ビシャアアアア!


 エロと、オーガに、強大な雷が落ちる。動きが止まったところで、アンナとリンクシルが飛びかかり、聖水をぶつけつつ領主を退けた。アンナがそのまま着地し、煙を上げてのたうち回る魔獣を見て叫ぶ。


「もっと聖水を!」


 使用人らが柄杓で聖水をまき小さくなったところで、アンナとリンクシルがオーガとエロを仕留める。


「なんと……」


 領主と、騎士達が唖然としていた。そのとき、俺の耳に突然小さく声が聞こえた。。


「おいおい……なんで、魔獣が戻った?」

「わからん。どうなってやがる」


 ああ……あれだ。ステルスで、敵がどこかにいる。すると、シーファーレンが俺に耳打ちをして来た。


「聖女様……聖魔法をエリアで放てますか?」


「わかった」


 俺が杖を掲げて、適当に考えた新しい名前の魔法を叫ぶ。


「エリア・ホーリー・スプレッド!」


 まるでスプリンクラーのように、聖魔法があたりに飛び散っていった。聖魔法は、結構魔力を使うが、このくらいならば問題はない。すると散らばった聖魔法が、ある一帯に揺らぎを起こさせた。


「あそこです」


「ライトニング!」


 ピシャアア!


 そこにあった透明なヴェールが消え去り、デビドと長身の男、そして足無蜥蜴達が浮き出て来た。


 領主が叫ぶ。


「なっ! どこから!」


 デビドも叫んだ。


「くそ! なんで、こんなところに聖女がいやがるんだ!」


「聖女?」


 男らの視線が俺に向いており、すぐさま、アンナが俺の前に立ちはだかった。


 こっちもバレたか……。まあ、破れかぶれだ。


「あなた達の悪事は、いつどこにいても、まるっとお見通しだ!」


 いきなり緊張感が漂って、敵も味方も身構えていた。


「クソが……東スルデン神国との小競り合いをしてたんじゃなかったのか」


「ああ。それは、優秀な士官らが何とかしてる。ようやく、お前達の尻尾をつかまえる事ができた」


 一触即発となり、お互い睨みあう。だが、その時デビドが言う。


「ガジ……あいつがドペルを殺した敵だ」


「なんと……ただの見てくれだけの女ではないのか」


「侮るな。ネメシス様が一度封じられている」


「なるほどねえ」


 デビドとガジ。こいつらをやってしまえば、ネメシスの活動は弱体化するはず。


「やるか」


 俺が、魔法の杖を構えた時だった。ガジの側にいた足無蜥蜴の男が、いきなり大きくなり始めた。


「また……ネメシスの血」


 ガジが動くほどに、次々に足無蜥蜴の下っ端が変わっていく。いきなり動揺し始める、下っ端たち。


「な。なんで、俺達を!」


「馬鹿野郎。お前達は、俺達を守る駒だろうが!」


「そ、そんな!」


 チンピラたちが、ガジから放れようとした時だった。


「パペット・テラー」


 ガジの魔法に、チンピラが動きを止めこちらを睨みつける。ガジは次々、ネメシスの血を打ち込んで、バケモノたちを作り始めた。


「いけ!」


「「「「「うおおおおおお」」」」」


 変わり果てた手下が飛びかかってきたところで、シーファーレンが叫ぶ。


「ありったけの、聖水をかけてください!!!」


 仲間と市民が、柄杓で聖水を投げるようにかけ始める。かかった奴らが、収集と煙を上げ始めた。


「操られてます!」


 シーファーレンが叫ぶ。そこで、領主が叫んだ。


「止めろ! バケモノを市民に近づけさせるな」


「「「「「おおおおおお!」」」」」


 そこで、乱戦になってしまった。


「もっと、聖水を!」


 乱戦になっているところに聖水がかけられ、少しずつ弱体化してチンピラたちが切り伏せられ始めた。アンナが、俺の前に立ち言う。


「しまった! 奴らが逃げた!」


 いつのまにか、デビドとガジが居なくなっていた。チンピラたちを盾にしている間に、逃げたらしい。そこで俺は、声を張り上げる。


「敵が逃げた!」


 チンピラたちが次々に倒される中で、領主や騎士達があたりを見渡す。


「逃がすな!」


 また騎士達が、追いかけ始めた時だった。


 ゴン! ゴゴゴゴゴ!


 地鳴りがして、地震が置き皆が足をとられる。


「地震?」


 ズン!


 街道の一部に、いきなりクレーターが出来上がり、ひび割れて落ちていく。


「な、なんだ!」

「地割れだ!」

「どうなっている!!」


 ピタッと地震が止み、シーンと静寂が流れる。


「な……なにこれ」


 だが、また揺れ始めた。


 ゴゴゴゴゴゴ! パリン! グシャ!


 ガラスが割れ、脆弱な建物が崩れる。するとその時だった。


 オオオオオオオ! と呪詛のような声が響き渡り、皆が耳を塞いだ。


 俺が叫ぶ。


「何か来る!」


 クレーターになった地面が、ボゴンと膨らんで、いきなり巨大な黒い手が出てきた。


 あれは……。


「邪神だ! みんな! 逃げて!」


 いち早く察知した俺が叫ぶと、市民達は一目散に下がっていった。俺とシーファーレンが杖を構えて、アンナとリンクシルが剣を持つ。


「ぐるるるるる! ぐるるるるる!」


 ヒッポが恐怖で怯え、マグノリアが必死に押さえつけていた。


「大丈夫! 大丈夫だよ! ヒッポ!」


 巨大な手に続いて、ズルっと黒い体が這い出てきた。巨大な真っ黒い顔が、牙をむく。


「聖女……お前は、どこまでも邪魔をしてくれる」


 あまりにもデカくて、恐ろしい顔だが、何故か恐怖はそれほど感じない。


「みんな! まだ、完全に復活してない! こいつは、未完成!」


騎士達も後退り、市民達には腰を抜かす者もいる。


「まだ……貴様と戦う時ではない……」


 ズルゥ! と体が出て来ると、前と違って蝙蝠の羽のような物が生えていた。


 何か……前世の漫画でも見たなあ。成長するごとに、体が変わる奴。


 全身が現れるが、以前より小さいようだった。だが、龍くらいの大きさはある。


「どうする? 聖女!」


「市民を巻き添えにする! 領主様! 私達が足止めをするから、皆を逃がしてください!」


「わ、わかった!」


 領主が動いたのを見て、俺は魔法の杖に魔力を込めた。


「サンダーボルト!!!!」


 バッバッバ! と放射状にネメシスに向かって、雷が発せられる。一瞬動きを止めたように見えるが、こいつにはさほど効かない事は分かっていた。


「アンナ! リンクシル! シーファーレン! いくよ!」


 四人に身体強化をかけ、突撃していく。俺がサンダーボルトを撃ち、シーファーレンが火の玉を撃ち、アンナとリンクシルが斬りかかった。


「あれは……」


 ネメシスの狙いは俺達には無く、大きく顎を開いて、黒い液体を仲間達に向けて吐き出した。


「ヤバ!」


 身体強化で走り、仲間達の前に立つ。


「聖結界!」


 結界にぶつかった黒い液体が、とびちりあたりに散らばると、騎士達の一部にもかかってしまう。


「う、う、うがあああ」

「おおおおおお!!!」


 これはヤバイ。


 アンナとリンクシルが素早くネメシスの足元に斬りかかり、何度も蹴散らされそうになりながらも、ダメージを与え、シーファーレンが火魔法を打ち込んでいた。仲間を守りながらでは、俺が参戦出来ない。


「みんな! 逃げて!」


「そう言う訳にはまいりません!」


 真面目なソフィアが叫ぶ。


 アンナとリンクシルは素早く黒い液体を避けつつ、シーファーレンは結界で守っていた。


 ヤバイな……。魔力がほとんど無くなるけど、あれ、やるしかないか。


 俺は魔法の杖を掲げて、魔力をため込んでいく。雷と電磁が溜まり、粒子が俺の周りに集まって来た。


「せ、聖女様!」


 うう、ごっそり魔力が抜けていく。するとソフィアが、仲間達に言う。


「みなさん! 聖女様に祈りを!」


 仲間達が跪き、祈りを捧げる。


 すると……。


「ん?」


 なんか、力が漲ってくる。……なんで?


 光の粒子が、どんどん光り輝いて来る。


「アンナ! シーファーレンを抱いて飛んで! リンクも逃げて!」


 バッ! と俺の指示に従い、アンナがシーファーレンを抱いて飛び、リンクシルが避けた。


「レールガン!」


 ズドン!


 俺の杖から、光の塊が物凄いスピードで飛び出し、ネメシスのどてっぱらに穴を開ける。


「ウギギギギギ!」


 腹に穴をあけたネメシスが、黒い血を噴き出してる。思ったよりも、物凄いエネルギーが放出された。だが、俺も膝をついてしまう。


「聖女様!」


 ソフィアが支え、仲間達が周りを囲んだ。


「し、仕留めなきゃ……ネメシス。逃がさない……」


「無茶です」


 俺たちの前から、結界が消える。するとネメシスは黒い血を、こちらに飛ばして来た。


「やば」


 そこにシーファーレンとアンナが戻ってきて、俺の代わりに結界をはった。それで仲間達が守られる。


 バサッ!バサッ!


 体に穴をあけたネメシスが、羽を広げて叫ぶ。


「忌々しい……。忌々しい女……」


 その両手には、デビドとガジが掴まれていた。


「逃げられる……」


「見ておれ……」


 そう言い残して、一気に空中に飛び上がった。そしてネメシスは、南に向かって飛び去って行った。


 そして俺が言う。


「黒い血を浴びた騎士達に、聖水を。早く……」


 仲間達が、聖水を汲んで騎士達のところに駆けつけていく。俺は、ネメシスを逃してしまうのだった。

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