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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第406話 街角に現れた突然の強敵

 邪神ネメシスが、この町に来ている可能性がある。それは、非常に危険な状態であるという事だった。俺とアンナは急いで、騎士団を追いかける。


「とうとう、尻尾を現したね」


「ああ」


「ここに居るのかな?」


「ネメシスの血を見つけたという事は、可能性が高いという事だろう」


 繁華街は普通に人々が行きかっており、その平和さが俺の胸を騒がせた。騎士達は散り散りになって、どこに行ったのか分からなくなっている。人ごみの中を走りながら、領主の姿を探した。人と人の間に、フルプレートメイルが走り去るのを見る。


「あそこ!」


 俺とアンナは、走り騎士団の影を追いかけた。


 すると、ドガ!っとどこからか、何か倒壊する音が聞こえて来る。俺が立ち止まり、アンナに言った。


「どっち行った方がいいだろう」


「音のする方」


 騎士を追うのをやめ、俺達は角を曲がり路地を走り抜けていく。


「うわああああ」

「ぐお!」


 更に角を曲がると、騎士が吹き飛ばされて転がって来る。


「おっと」


 飛んできた騎士をかわしつつ先を見ると、ボロボロのマントを来た、ボサボサの長髪をした奴がいる。そいつは騎士達に囲まれているが、何やら余裕の様子で佇んでいた。


「アンナ。騎士を吹き飛ばしたの、あれだよね」


「ああ、だいぶ手練れだ」


 騎士達が囲み、一人が言った。


「一斉に行くぞ!!」


 三人の騎士が一気に間合いを詰め、そいつに剣を差し込むが、次の瞬間、ボロ布は上空にいた。


「ギャア!」

「うわぁ!」


 攻撃した騎士が顔を覆って、頭を下げた所にドン! とボロ布が落ちた。すると一人の剣士が兜ごと、一気に地面にたたきつけられる。そして鎧兜の上に立ったまま、ボロ布が言った。


「ウケケ! もろいっケ! よわよわー」


 舐めた口をきいているが、明らかに騎士を圧倒していた。


「きさま! そこから降りろ!」


「ん? ああ。なんか高いって思ったッケ。乗ってたんか」


 だが、確認をしても、降りなかった。めり込んだ騎士の兜の上に立っている。


「この!」


 シュッ! 騎士が剣を突き入れるが、そいつは持っていた短剣で、鎧の開いた顔部分に突き入れる。


「グア!」


 目を突かれて、騎士がのけぞったところに、ドガンと蹴りを入れた。騎士は、質量がないかのように吹き飛んだ。


「異常だね。あのチカラ」


「だが、さっきの剣士とは違う」


「だねえ。狂ってないし、冷静だ」


 俺達が品定めしていると、そいつもゆっくりと品定めでもするかのように、俺達に目をとめる。


「ケケケ。なーんか面白いのがいるなあ……」


 騎士が振り向いて、俺達を見た。


 シュッ! と騎士の間を取り抜けて、俺に向けて短剣を突き付けて来る。


 ガキン! アンナがそれを弾いて、すぐに追撃を行う。


「ななっ、止めた?」


 空中を飛びながら、そいつが不思議そうな顔をする。俺も驚いていた。


 アンナの攻撃をかわした??


 俺はしゃがみ込み、吹き飛んで寝転がってる、フルプレートメイルの騎士に手を当てる。


「メギスヒール」


 ジュオオ! と音をさせて傷が治った。


「蘇生、筋力強化、脚力上昇」


 騎士がムクリと起き上がり、ブンブンと頭を振った。


「やりやがったな。ボロ雑巾」


「おっ、起きた? 治ったのケ?」


「もとより! お前の攻撃など効いておらん!」


 なるほど、一瞬で飛ばされて気を失っていたとみえる。自分がやられた事に気がついていない。


「ケケケ。舐めてかかっちゃイケないようだぜぇ」


 一人なようだったが、そいつの髪の毛の中から、もぞもぞと何かが出て来る。


 なんだあれ?


 それは黒い毛の塊に、人間の手足が生えたような猫より小さな生き物だった。小さな鎌を持って、肩に乗っている。


「何をぼそぼそと!」


 他の騎士二人が、ボロマントに斬りかかる。だが、次の瞬間その黒い毛の塊が、ビュンと飛び去って、飛びかかった騎士のプレートメイルに入り込んだ。


「なっ!」


 叫んだものつかの間、騎士が動かなくなり、プレートメイルの下からぼたぼたと血が滴り落ちて来る。


 ヤバイな……あれ。


 シュ! 黒い毛の塊がプレートメイルから出てきて、ボロマントに戻った。もう一人の騎士の喉には、ボロマントの短剣がつき立っている。


 そこで、アンナが言う。


「攻撃をやめろ。お前達じゃダメだ!」


 それを聞いて騎士達が、動きを止めた。喉に剣を突き立てられた騎士は、絶命して崩れ落ちてしまう。


「ケケケ。わかるんだ。やっぱりお前ら、変だな」


 かなりヤバイ奴だ。アンナの力量を見抜いている。


「だったらなんだ?」


「だったら? ケケケ。お前を先にやらないとだな」


 だが、騎士達がアンナの静止を聞かずに、また飛びかかってしまった。


「やめ!」


 ザシュ! ザン! 騎士達は血を流して倒れてしまった。


「近づくな! 殺しに来るぞ!」


 ようやく危険性に気が付いたのか、騎士がじりじりと下がる。そして騎士が言う。


「こいつは危険だ! 皆でかからねば、やられる!」


「お前達の力では、無理だ!」


 アンナがここまで言うって事は、あれは、そうとう危ないって事。


 んじゃ……新技しこんどこっと。


 ボロマントが転がった死体を蹴り飛ばし、凄い勢いで建物の壁に激突した。


 とんでもない威力だ……まともに喰らったらヤバイ。それに、あの黒い毛玉。なんだあれ。


 キモ!


 黒い毛玉が再びボロマントの中に入り込み、ボロマントがじりじりと間合いを詰めてくる。


 俺がアンナにボソリと言う。


「多分、ネメシス関係」


「だろうな」


「動かないで」


「わかった」


 するとボロマントが、高笑いする。


「ケケケ、怖気づいて身動きもとれねえぜ。ボタラ!」


 すると、甲高い声が聞こえて来る。


「そうだなカタラ。こっちの力が分かったみたいだ」


 挑発されても、アンナは動かない。それだけ俺とアンナの信頼は厚い。俺が隣から、大きな声で言う。


「いやいや。さっき、躱されたでしょ! ボロ雑巾! お前の攻撃なんて当たらないから!」


「ケケケケ! さっきは、小手調べだっケ!」


「それに、お前の切り札かなんかしらないけど、そのペット気持ち悪いね。ドブネズミ?」


 ピクリ。少し雰囲気が変わった。


「ケケッ、ボタラの悪口は許さねえ」


「ああ、ボタラっていうのか、そのネズミ。ボロ雑巾みたいなお前のペットに相応しい」


 すると甲高い声が言う。


「カタラの悪口はゆるさないぃ!」


「いや。臭うね。ほんと、鼻が曲がりそう。駆除しないとダメだこりゃ」


「「……」」


 目つきは悪いが、髪の毛で表情が分からない。怒っている雰囲気は、バッチり感じ取る事が出来た。


「駆除業者は……」


 俺が、次の挑発をしようかと思った次の瞬間だった。カタラとボタラが、まるで縮地のような速度で突っ込んできた。


 バカメ。


 バシィ! ビリビリビリビリ!


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」」


 ドサドサ!


 二匹が、アンナの目の前の地面に倒れる。


 アンナが聞いた。


「見た事無い魔法だな」


「新技」


 そう。これは、飛ばす電撃では無く、防御と攻撃を兼ね備えた電撃。飛ばしても、超強力な電撃だが、それを見えない結界の周りにぐるぐると帯電させて、電圧を何千倍に上げた技だった。そして強すぎて、目の前のボロ雑巾が、じりじりと燃え出した。


「一応、留め刺しとく」


 至近距離から魔法を撃つ。


「ライトニングボルト!」


 バシュゥゥゥ!


 二体の怪物は、一瞬で消し炭になってしまった。俺は一目散に、死んだ騎士達の下へと駆け寄る。


「生命蘇生!」


 シュウシュウと音を上げて、今死んだばかりの三人が息をし始める。


「か、神のお力だ……」


 騎士の一人が言った。だが、そこで俺は言う。


「おそらくもっと恐ろしいのが入り込んでいる可能性がある! 領主はどこへ?」


「一緒では無かったので分かりませんが、恐らくは色街へ向かったかと」


 俺とアンナはピンときた。たぶん俺達が一度進入したことがある娼館だろう。やはり、あのあたりに、敵のアジトがあるのかもしれない。


「そこに敵はいる! 動ける者はついてこい!」


 アンナが言うと、動ける騎士達も俺達と一緒に走り出した。角をいくつか抜けると、侵入した事のある娼館街の入り口につく。すると、裸に布を持った女達や、小姓たちが一斉に逃げてくるところだった。


「あたり」


「ああ」


 逃げて来る、裸の女を横目にしつつ、俺達は先を急ぐ。


「こっち」


 俺達が忍び込んだ事のある、娼館が見えてきた。でも逃げて来るのは、もっと先の方からだった。


「ここじゃないんだ……」


 すると騎士の一人が言う。


「恐らくは、元締めの所かと」


「元締めか……ありがと」


 俺とアンナと、数人の騎士達がその先へ走って行くのだった。

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