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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第403話 ハチの巣をつついてみる事にした。

 領主邸の門前に到着した俺達は、守衛が見える場所に位置する。そこでは、物々しい雰囲気が漂って、警戒しているような様子が見てとれた。それは、守衛の人数の多さ。


「多いね」


「なにかを、警戒しているのだろう」


「やっぱ、あれかな」


「あれだろうな」


「私達がやった、教会の件は耳に入ったと思う?」


「いや、それは、もみ消したんじゃないだろうか?」


「人が死ねば、もう動いててもおかしくないもんね?」


「ああ」


 ならばすぐに、嘆願書を出した方が良いのだが、俺たち二人の素性をばらすわけにはいかなかった。


「じゃあ、当初のとおり?」


「そうしよう」


 書いて来た羊皮紙の嘆願書で石を包み、紐で固く縛った。それをアンナがぐるぐるっと頭の上で回し、ヒュンヒュンと音をさせる。


 シュッ!


 嘆願書はアンナの手を離れて、勢いよく領主邸の中へと飛び込んでいった。


 ガシャーン!


 草野球のボールが飛び込んで、ガラスを割ったような音がする。その音を聞いて、通りにいた人達が周りをきょろきょろしていた。俺達は人ごみに紛れつつ、様子を見る事にする。


「おっ。守衛たちが慌ただしくなった」


「中で騒ぎが起きてるんだろう」


「敵の攻撃だと思ったかな?」


「かもしれん」


 すると中からぞろぞろ、騎士達が出てきた。それが人ごみにばらけ、一人一人に声をかけている。


「あ、犯人捜しだ」


「だな」


 何食わぬ顔で、俺達が歩いていると騎士が声を駆けて来る。


「お嬢さんがた、ここらで怪しいものを見かけなかったかい?」


「怪しいもの? ここらじゃないけど、商人の家が火事になって、ごろつきがウロウロしてましたねえ。おー、こわいこわい」


「火事……確かにあったな」


 アンナはうまく話を出来ないようで、だんまりを決め込んでいる。アンナは、嘘も上手ではない。


「そっちのお嬢さんは?」


「あ、なんだかわからない」


「そ、そうか。すまないね」


 騎士が行こうとした時、俺が引き留める。


「何かあったんですか?」


「いや。何でもない」


「じゃあ、いい機会だからちょっと、聞いておくれよ」


「なにをだ?」


「友達がさ、怪我をして教会の診療所に行ったんだって。そしたらさあ、教会におかしな男達が出入りしてるって言うじゃないのさ。だから私達は怖くて、おちおち祈りも捧げに行けないのさ」


「わかった」


「お願いしますよ。騎士様達が守って下さらなきゃ、私みたいなか弱い女は酷い目にあうんだからさ」


「肝に銘じておこう」


 そう言って、騎士は俺達の側を通りかかった人に、話を聞き始めていた。


「じゃ、いこっか」


「ああ」


 次に俺達は、少し離れに置いてあった馬車の近くに行く。


「わるいけど、あれにする?」


「そうだな」

 

 馬車の上には御者が乗っているが、その馬車には人が乗っていない。どうやらお偉いさんが買い物でもしているらしい。そこで俺が、そっと馬の尻に痛い痛い魔法を放つ。


「ライトニング」


 パシィ!


 ヒヒーーーーーーン! パカランパカラン!!


 馬が暴走しはじめ、御者が慌てて手綱を引くが収まらなかった。それは、領主邸前の人ごみの方に走り出してしまう。騎士の一人が大声で叫んだ。


「止めろー!!」


 だが、馬が暴れて、言う事を聞かない。


「お、騎士が出てきた出てきた」


 敵襲だとでも思ったのか、領主邸からぞろぞろと騎士達が飛び出してきた。


「裏に回ろ」


「よし」


 二人はいそいそと、領主邸の裏に回りこむ。少し高めの壁だが、アンナなら問題ない。


 俺を抱いてシュッと、壁を飛び越えて茂みに着地する。


「よし、行こう」


「ああ」


 俺達が様子を見ながら、領主邸に潜入すると、中も慌ただしい感じになっていた。


 隠れながら先を急ぎ、部屋の扉を確認していく。


「ここ。がいい」


 俺達が中に入ると、そこには誰もいなかった。そこはだだっ広い舞踏会場で、俺達はそこに置いてあったピアノに近づいて行く。


「立派なピアノだ」


「金があるのだろうな」


「じゃあ、これが良いね」


「わかった」


 そしてアンナが剣を抜き去り、物凄く高額そうなピアノに切りつけた。


 シュパン! シュパパパパパ!


「どうだろう?」


「いい感じ!」


「はい」


 俺はアンナからナイフを受け取って、ピアノにまた刻み込んでいく。


「これでよしっと」


「じゃ、行くか」


「まって」


 俺はピアノの蓋を開いて、鍵盤を弾いた。


 ジャジャジャジャーン!


「じゃ、いこ!」


「よし」


「身体強化! 筋力増強! 金剛! 結界!」


 二人が強化され、俺はアンナに抱かれてガラスに突っ込んでいく。


 バリン!


 そのまま屋根に飛び特級冒険者の力をフルに使って、俺を抱いたまま屋根を走り込んで飛んだ。


 バッ! と飛び上がり、あっというまに、隣の家の屋根に飛び移る。


「下ろしていいよ」


 アンナが俺を降ろし、二人は身体強化されたまま。一気に、領主邸を離れていく。


「どうかなー!」


「流石に緊急で動くだろ!」


「だよねー!」


 そう、今ごろ、誰かが舞踏会場のグランドピアノの蓋に刻まれた文字を読んでいる。


 書いたのは……。


 ・足無蜥蜴団参上! 家族の命はいつでも奪える。商会の火事補填金、金貨千枚を持って教会に来い。さもなくば、まず見せしめに孤児院の子供を一人ずつ殺す・


 路地に降りた頃、バンバン! と銅鑼が鳴り響いた。どうやら、騎士団が招集をかけられたらしい。


「派手に騒ぎ始めたね!」


「見ものだな!」


 そして俺達は再び、何食わぬ顔で人ごみに紛れた。


 すると馬に乗った、騎士がパカパカと領主邸に走るところだった。


「おー。集まってる」


「行こう」


「だね。先に行って、見物の場所を確保しなくちゃ」


「ああ」


 俺達は足早に、あの孤児院へと向かうのだった。

 

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