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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第400話 騒ぎに乗じて人さらいに成功する聖女

  俺とアンナがフードを目深にかぶり、都市を歩いているとスッと紙が目の前にふってきた。


 パシッ!


「シーファーレンだ」


「流石だな。わたしたちの行動を掌握しているようだ」


 紙に指定されていた路地に入り込み、奥の建物のドアを開けと、フードをかぶった女が四人いた。


「聖女様。一連の事件は、掌握しております」


 流石、大賢者。


「凄いね。シーファーレン、良く察知した」


「はい。離れても監視は怠りませんわ」


「私が会いたいのも、良く分かったね」


「緊急だと思われましたので」


「流石だ。で、お願いがあるんだけど」


 だが先回りして、シーファーレンが言う。


「ソフィア様でございますね?」


「そう。むやみに動くなと言いたい。出来る事なら、領主の城を抜けて欲しい」


「今のところ、領主の城は比較的安全かと。それに、いきなり、四人がやめれば怪しまれますわ」


「それじゃあ、私とアンナでお灸をすえて来るから、タイミングを見て皆でこの都市を脱出してほしい。その指揮を、シーファーレンにお願いしたいんだよ」


「では、おりを見て、同時に行動できるようにしておきましょう」


「スティーリアは、ここにいるよ」


 そう言って、俺はさっきまでいた、ホテルの名前をいう。


「わかりましたわ」


「じゃあ、おおよその時間を決める。明日の夜までには、全員で抜け出せる?」


「聖女様が、そうなされたいのであれば」


「じゃあ、お願い」


「聖女様たちが、教会で騒動を起こしたため、奴らが血眼になって探しております。お気をつけて」


「知ってる」


「では、あと何も言う事はございません」


「ありがとう。じゃあ、お願いね」


「はい。確実に脱出させます」


「ウェステート・マロエ・アグマリナも気を付けて」


「「「はい!」」」


 俺が微笑んで、するりと裏木戸から外に出る。流石は大賢者のシーファーレン、二手三手先を読んで、次の動きを予測しているようだ。となれば、あとは俺達がやる事は決まっている。


「じゃ、あの商会に行こうか」


「わかった」


 アンナと一緒に街を歩き、商会が見える街角に来た。まだ店は閉まっており、周りに悪そうな奴らが、警備で立っているようだった。


「おー、いるいる襲撃を恐れてるのかな?」


「そうだろうな」


「じゃ、始めようか」


 俺が真上に向けて、黒雲を浮かべていく。それがするりと流れて、商会の上の空に黒雲が集まり始め、あっというまに建物に影を作った。雲が厚くなっていくと、ぽつぽつと雨が降り出す。


「さて、準備は出来た」


「敵がどうでるかが楽しみだ」


「どっちでもいい。スティーリアを怖がらせた分はきっちり返す」


 俺は、その雲に向けて魔法をかける。


「ライトニングボルト!」


 ピカ! ピカ! ドン! ドン!


 黒雲から商会の建物に、太い雷が降り注ぎ始めた。屋根や壁に堕ちて、木造の建物に穴をあけ始める。木のはじける音が響き、突然、町中に嵐が吹き荒れた。周りの建物から、慌てて驚いた人らが出て来て、その様子を見て呆然としている。


「おおー、やっぱりびっくりしてる」


「そうだな」


「庭に出た奴らは、たぶん感電してる」


「恐ろしい」


 外で見張っていた奴らも、慌てて飛び込んで行った。


「バカめ」


「ふふ」


 ピカ! ドン! ピカ! ドン!


 落雷の渦に飛び込んだら、どうなるかなど分かっていないのだろう。そもそも、他は天気がいいので、状況が分からずに不用意に入ってしまったようだ。魔力を送るのをやめると、黒雲が薄れて消えていく。 


「煙が上がってるね」


「焼けたのだろう」


 次第に黒煙が色濃くなっていき、あたりにモウモウと煙が立ち込めてきた。


 そこで俺が、大声で叫ぶ。


「火事だ!」


 家々から一斉に人が出て来て、慌てて水を汲みに走り始めた。すると、あたりに見物人が増え始める。俺とアンナは、するりと見物人に混ざって近づいて行く。


 見物人の一人が言った。


「なんか、いきなりカミナリが落ちたんだ」

「あの商会からは悪い噂しか聞こえてこないからな、きっと天罰が下ったんだろう」

「違いないわ。人相の悪い奴らが、周りを囲んでたから物騒だったもの」


 そう。天罰だ。スティーリアを怖がらせた天罰。


 すると、馬の蹄の音が聞こえて来る。見物人が慌てて道を開け、俺達も一緒に避けた。


「うわ! 焼けているぞ!」

「はやく! 薬を運び出せ!」

「火は消せぬのか!」


 馬に乗った男達と、走って来た男達。筋肉隆々で、どう考えても荒事に慣れてる雰囲気。


 俺は、こっそり耳打ちした。


「アンナ……あれ、どっちだろ? 悪党か騎士か」


「衣装が町民を装っているが、馬術は悪党の腕ではない。言葉づかいも乱れてない」


 たしかに、馬のさばき方が上手ではある。という事は、ズーラント帝国の騎士という事も考えられる。いずれにせよ、敵兵であることに間違いはないが。

 

 パカランパカラン!


 次々に馬に乗った屈強な男達がやって来たので、俺達は野次馬の後ろから抜けでた。周りを見渡すと、オープンテラスのある食堂が見える。


「あそこに行こう」


「ああ」


 店に行くと、店員と客が外に出て火事の様子を見物していた。


「あ、店。やってる?」


「は、はい。どうぞ! あれ、火事ですよね」


「そうみたい。火の用心だよね」


「そうですねー」


 俺達が店に入ると、がらんとしていた。どうやら全員が、やじ馬で外に出たみたい。


 だがそこに、店の主のような親父が出て来る。


「わりいが、火消しの手伝いに行かなきゃならん。料理は出せねえ」


「あー、じゃあ飲み物だけ。あの人に頼めばいい?」


「そいつは構わねえ。適当にやってくれ!」


 そういって主人が、店番の女に託して出て行った。


「な、なんにします?」


「果実系の飲み物があれば」


「はい!」


 俺達は窓際の席に陣取り、そこに果物の飲み物が運ばれる。それを手に取って、窓の外を見ていた。


「なかなか、本丸が来ないなあ」


「だな。いないのか、こんな事でわざわざ出てこないのか」


「だが、屈強な男らは集まってる」


「騎士が、何をやっているのか」


 焼け焦げた店の中から、木箱が運び出されて積み上げられて行く。火事で焼け残った、麻薬を取り出しているのだろう。だが、みながあちこち火傷を負っているようだ。


「あそこまでするかね」


「やらされてるんじゃないか?」


「なるほど」


 まあ簡単に、目当ての人間を見つけられたらいいんだが、集まって来たのは町人に扮した騎士ばかり。足無し蜥蜴っぽい悪党がいない。


「なぜ、騎士が麻薬を守るかだ」


「もしかしたらだが」


「なに?」


「ズーラントから運び込んだのではないか?」


「というと? あれは、ズーラント帝国の騎士?」


「だとすれば、駐屯する為の資金稼ぎか……」


 アンナの説明は、俺の中でも結構腑に落ちた。集まっている奴らはズーラントの騎士という事になる。ということは、アイツらの中に「ガジ」とやらがいるかも。


「まだ……顔を知らないんだよね」


「不用意には動けんな」


「ド……何某、なら、顔を見てるんだけど」


「ギルドに要請しないのは、やましいことがあるからだろうな」


「確かに」


 とかなんとか話しているうちに、商会は鎮火したようだ。結構焼けたが、半分は残っている。


「見物人が、はけはじめた」


「んじゃ、私達もでるとしようか」


「ああ」


 女の子を呼びつけて、金を払って店を出る。すると見物人たちが、ぞろぞろと戻ってくるところった。人ごみに紛れつつ、俺達は騎士が歩いて来る方角へと向かった。


「何処からきてるのかな?」


 二人は、何食わぬ顔で騎士とすれ違いながら、街の中をうろついた。


「アンナ、あれ」


「同じだな」


 何人もの騎士とすれ違って気が付いたが、騎士は腰に同じような短剣をぶら下げていた。その短剣を入れる鞘に、同じマークが入っているが間違いない。ズーラント帝国の紋章だ。


「じゃ、さらうか」


「めぼしいのを探そう」


 すると、一人で歩いている奴を見つける。俺達はそいつをこっそり追いかけ、人目のつかない一瞬の隙に、アンナが意識を狩る。ずるずる、と路地裏に引き込み、更に家と家の間の隙間に引きずり込んだ。


「さてと、どっかに連れ込みたいね」


「それじゃあ、わたしの変身ペンダントをつけよう」


 アンナが、男にペンダントを付けると女に変わった。アンナがフードを深くかぶり、その男を背負う。そして、二人は何食わぬ顔で路地に戻り、あのボロの宿屋に向かって歩いて行くのだった。

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