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第366話 貴族子女の護送とソフィアの決意

 ヒッポのピストン輸送で、無事に貴族子女達を王都に送り帰した。貴族の親たちは、非常に心配していたようでひしと抱き合っている。既に西の様子は王都にも伝わっているらしく、無事に帰ってきた娘達にホッと胸をなでおろしたようだ。


「では、子爵これにて」


「う、うちの子は何か役に立ちましたでしょうか?」


「ミステルはよくやってくれました。これからもよろしくお願いします」


「そうですか」


 そして俺はソフィアに言う。


「あとはソフィアが最後だよ」


「私はお供いたします」


「いや、ソフィアのお父様が許さないと思うけど」


「ですので、家に寄らずにまいります」


「だめだめ」


「いえ、私は行かねばならないような気がします」


「ひとまず家に行こう」


「行ってもよろしいですが、おそばを離れませんよ」


 とにかく俺としては勝手に連れまわすわけにはいかないので、ソフィアを家に連れ帰った。


 公爵邸にヒッポが降りた俺達に、ドタドタとソフィアの父親が走り寄って来た。


「おお! ソフィア! よく無事で帰ってきたね!」


「ええ。お父様、ですが私はもう発たねばなりません」


「なっ! 何を言っているんだ! 西は危ないと聞いておる!」


「私は聖女様と戦います。シーノーブルの理事長として、その責任があるのです」


「そんな……第一騎士団が向かったと聞く。ソフィアが行ったところで何になる!」


「いえ。私には予知夢の力があるようなのです」


 するとソフィアの父親は、ハッとした顔をして黙った。


「そうですよね? お父様も知って居らっしゃいますよね」


「それは……だが、あれはいつ来るか分からぬお告げのようなもの。予知夢かどうかは…」


 だがそれには、一緒に来たシーファーレンが言う。


「予知夢で間違いないかと。この度の西で起きた出来事は、ソフィア様が先に見ておりました」


「そ、そうなのですか」


「具体的にではありませんが、ある程度はその光景を、先に見る事が出来るようでいらっしゃいます」


 そしてソフィアが言う。


「そうですお父様。そのおかげでお父様もお母様も助かったのではありませんか?」


「それは…そのとおりだが」


「私は聖女様と共に行かねばなりません。国の一大事に、家に閉じこもっている訳にはいかないのでございます」


「で、では私達もつれていっておくれ!」


「お父様! マルレーン家を終わらせるつもりですか? 根絶やしになったらどうするのです!」


「それは……」


「ですから、私を見送ってくださいまし。必ずお国の為にお役に立つと誓います」


「わ、私はお前さえ無事で居てくれればいいのだ」


「お父様! 貴族らしからぬ発言でございますわ。ノブレスオブリージュを果たさねば」


「うう」


 流石に平行線だ。けどソフィアの言う事に一理ある。それに、俺とソフィアは一緒に戦う仲間だ。


 そして俺が言う。


「恐れ入りますが。マルレーン公爵様、ソフィア様のおっしゃることはごもっとも。そして彼女にはその力がある。国の為にいま立たねば、いつ立ちますでしょうか?」


「聖女様……」


「騎士達もおりますし、今のところは膠着状態です。もしかすると東スルデン神国は兵を引くかもしれませんし、ソフィア様の予知夢が私達を導いてくれる事も考えられます」


 するとソフィアの母親が言う。


「あなた。見送ってあげましょう。もうこの子は使命を持っているのです」


「おまえ……」


「ソフィア。国の為に役に立ちなさい。あなたにはその使命があります」


「はい。お母さま! そしてお父様も、私は行かせていただきます」


 するとマルレーン公爵がようやく頷いた。


「仕方あるまい。ならば! 少し待て!」


 そう言ってマルレーン公爵が屋敷へと戻っていく。しばらく待っていると、とても美しい装飾がなされた短剣を持って来た。


「家宝である! 昔から代々伝わる短剣で、お前の身を守ってくれるであろう!」


「ありがとうございます! それでは行ってまいります」


 そう言ってヒッポの馬車に乗りこみ、大きく羽ばたいて大空に舞い上がる。そしてソフィアはワインレッドの髪の毛をキリリと後ろに束ね、父親からもらった短刀をバッグに仕舞いこんだ。


「いいお父さんとお母さんだ」


「はい。そう思います」


「とにかく無事に帰ってこよう。きっと何もおこらないよ」


「そう願います」


 俺とアンナとシーファーレンが、ソフィアの覚悟を知りじっと見つめるのだった。


 そして俺達は数時間かけて、ヴィレスタンの城へと戻って来る。直ぐに仲間達が駆け寄ってきて、俺がみんなに聞いた。


「何か起きた?」


「変化は無いようです」


「じゃあ。関所に行こうか」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


 そしてウェステートが言う。


「私も参ります!」


 それに対してシーファーレンが俺に口添えした。


「彼女を連れて行きましょう。十三使徒には恐らく意味があります」


「よし。ウェステートも行こう」


「はい!」


 俺達はヒッポが引く大型の馬車に乗り込み、関所へと向かった。俺達が到着して直ぐ屯所に入ると、フォルティスとルクセンとレルベンゲルが話をしているところだった。


 俺が入って行き三人に聞く。


「状況は?」


 フォルティスが答えた。


「ドペルを捕らえた事については、密偵を使って喧伝しています。未だ敵は関所の向こうに集まっており、今はアルカナ共和国の東スルデン神国内の駐留兵について探っています」


「まだ諦めてないのですか。やはりドペルの仲間がまだいるのでしょう」


「じきに処刑の日取りが決まります。それまではにらみ合いが続きそうですな」


「万が一、火ぶたが切って落とされた場合は?」


「徹底抗戦です」


 一色触発の状況が続いているが、やはり膠着状態に陥ってるようだった。


「では、何かありましたお知らせください」


「はい」


 そして俺は十三人の仲間達を集める。


「引き続きソフィアも一緒に戦う事になった。一人も欠ける事無く頑張ろう」


「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」


 そしてその夜に、ドペルの処刑日が決まったのだった。

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