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第352話 武器が足りない

 武器を集めろと言っても、そんなに簡単に集める事は出来ないだろう。しかもあまり派手に武器を集めまくっていると、足がついてバレてしまう可能性がある。それにもまして俺は、逃がしたドペルの事も気になっていた。待っている間も、俺達はずっと娼婦たちが慌ただしく働いているのを見ている。


 ええなあ…。


 色っぽい女子たちを見ているだけで、鼻の下がビローンと伸びて来る。俺が…男だったなら、俺が……男だったなら! ずっとそうやって、半裸…もしくは全裸の女性を眺め続けていた。


 するとミリィの姿のシーファーレンが言う。


「ガキ…と言われましたわ」


「本当はガキじゃないのにね」


「でも…彼女らからしてみれば…お子ちゃまなのは確かでございます」


「そんな事無いでしょう。だって…」


 もう少しで下品な事を言うところだった。


 いや! パイオツもでけえし! うずめたいよ!


 こういうエロ系の職場にいるだけで、だんだん下品になってきている自分がいた。むしろもとの世界ではホストからヒモになったような男だ、こういった場所の方が落ち着く。


「シーファーレンはとにかく大人だから」


「あの…でも…」


「どうしたの?」


「まあ聖女様もそうだと思うのですが、殿方を知りません」


 えっ! うっそ! シーファーレンって、あんなに色っぽいのに処〇なの!


「あっ……そうなんだ」


 だがもちろん俺も男など経験は無い。てか一生経験するつもりはない! ゲロが出るだけじゃなく血反吐を吐いて死んでしまうだろう。


「はい……」


「気にしないで。私もだから」


「はい。存じ上げてます。聖女様は一生純潔で居なければなりませんから」


 あ、そうだっけ? それはそれで違う気がするけど。


 するとアンナが言う。


「心配するな。わたしもだ」


「えっ! そうなんですね!」


 それはそうだろうなあ。剣の引きこもりだったアンナは、ダンジョンとかに籠りっぱなしだったし、今もいっつも剣を振り続けているし。そもそも男が嫌いで、俺と一緒にいるんだし。


「そうだ。なんの支障も無い」


「そうなんですね!」


「あの。ウチもです。尻尾が生えてる女なんて相手にされません」


「獣人ですものね」


「でも、師匠と同じで支障はないです」


「なんだか落ち着きますわ。でもこう言う場所にいると、なんだか不安になってきます」


「じゃあずっと私達と一緒に居ればいいでしょう」


「はい! そのつもりでございますわ!」


 そうか…うちは処〇集団だったんだな。娼婦がシーファーレンをガキと言ったのは、それも関係しているのかもしれない。


 だって間違いなく娼婦の人達は、お色気がハンパないもの。


 そんな女子トークをしている時だった。ようやくマロエとアグマリナの姿をしたロサとパストが帰って来る。そして俺に報告して来た。


「恐れ入ります。聖女様、どうやら市街で敵の騎士達が嗅ぎまわり始めたようです。派手に動くのが厳しくなってきました」


「武器はどのくらい集まった?」


「きちんと全てを装備したとして、十人分と言ったところです」


「三分の一か」


「はい」


「ヒストリアから運ぶのは何日もかかってしまうし、そもそも国を超えられない」


「かと思います」


「わかった。ちょっと待ってて」


 騎士達の納屋にいるプーリャに話しに行く。

 

 コンコン。


「はい」


「武器の事で」


「どうぞ」


 入ると近衛騎士達が期待するような顔で見ている。


「残念ながら、十人分ほどしか集まっていません」


 騎士達は難しい顔をする。なんとか薄手の服は手に入れたが、それでは戦う事は出来ない。


「そうですか…」


 するとヴェールユが言う。


「となると、市中には敵の監視がでましたか?」


「そのとおりです。自由に動き回る事が難しくなってきました」


「そうですか…」


 そこで俺が言う。


「敵から武器を奪いましょう」


「えっ……」


「十人に装備をつけてもらい、うちの仲間達と討ち入りましょう」


「討ち入り……」


「そうです。そして敵の騎士から奪取すればいいのです」


「上手くいくでしょうか?」


「その為に私達が行きます」


「あなた方が…確かにあの力ならば」


「それに、まさか直ぐに王城に戻って来るとは絶対に思っていません。装備を固めた皆さんを前面に進み、敵から武器を奪いつつ城を奪い返しましょう」


 近衛達がそれについて話し合う。志が高いようで、どうすればそれが可能かを相談していた。そして答えが出たようだ。


 ヴェールユが言う。


「やりましょう。ワイバーンを退けたあなた達なら、きっとそれも可能でしょう。一緒に来ていただけるのですか?」


「ちょっとやり残したこともありますので。特に、あの足無蜥蜴の男は裏切りものですから」


「なんと……」


「味方面して、こちらの兵団に潜り込んでいたのです」


「わかりました。まだ国のどこかにいるでしょう。城を奪取し腑抜けた奴らの目を覚まさせてやります」


「プーリャ殿下とヴァイネン殿下は、仲間達と安全な場所に避難していただきます」


 だがプーリャとヴァイネンが言う。


「私達も行きます!」

「姉上が行くならば僕も!」


 だがそれをヴェールユが制した。


「われわれが必ず国を取り戻します! 何卒、堪えていただけますようお願いします」


「しかし!」


 だがそこで俺がはっきり言う。


「恐れ入りますが殿下。むしろ殿下達を守らねばならない状況では、戦力が低下してしまうのです」


「…わかりました」


「姉上?」


「確かに我々は足手まといです。ヴァイネン、近衛がまだ私達を王族だと思ってくれています。ここは彼らを信じて任せましょう」


「……わかりました」


 そして二人は静かになった。


 すぐに二人を連れ出し、ロサとパストに伝える。


「ペンダントを彼らにつけて」


「はい」

 

 ロサとパストが身代わりのペンダントを外し、元の冒険者の姿になる。それを見て二人は目を見開いで驚いている。


「これは‥…」


「説明はあとで。ペンダントをつけてください」


 プーリャとヴァイネンは、マロエとアグマリアになった。


「では、二人を安全な場所に」


「わかりました」


「武器はなんとか、ここに運び入れて」


「既に荷馬車に乗せて用意してあります。イドラゲアとシャフランがここに向かっています」


「では。二人をお願い」


「「はい」」


 そしてロサとパストは二人を連れて、娼館を出て行った。しばらくするとジェーバとルイプイに化けた、イドラゲアとシャフランが入って来る。


「武器を持ってきました」


「運び込もう」


 俺達は手分けして、近衛騎士達の装備を運び込むのだった。

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