表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/59

56 ドワーフの出張修理


 人手が足りない。

 村民たちの頑張りによって、一気に農地が広がったのは良いのだが、農作業をするための人員が全然足りていないのだった。

 俺はハメルンの街に人を探しに行ったのだが、そこには見捨てられた人間しかいなかった。彼らには農作業は難しい。



「どうしたものかな」


 ちょっとやそっとでは解決できない問題に、俺は頭を抱えていた。

 また街でも飛んでこないだろうかと、非現実的かつはた迷惑なことを考えていたら、ある村から朗報が入ってきた。



「これなんですが……」


 村長がそれを指さす。

 郊外の、おそらく農家の納屋にあったそれは、赤色だった。

 油のにおいを漂わせた無骨だが頼もしい奴。


「トラクターか!」


「とらくたぁ?」


 異世界から来た彼らとは普通に言葉が通じるが、外来語はいまいちなのだ。


「農作業用の機械だよ」


「やはり!」


 村長の周りにいた村民たちも色めき立つ。

 村民たちも、当然トラクターなどは見たことはなかったが、それが何かくらいは推測できた。置いてある状況や、物の作りなどから見て、彼ら同士でそうではないかと話し合っていたのだった。


「コイツを使えるようにすれば、一気に農作業が楽になるぞ!」


「「「おぉぉぉぉ!」」」


 村民たちから歓声が上がった。


「この周辺の家も探して見てくれ。

 納屋のある家を特に注意して探すんだ」


「分かりました、領主様」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 結局、それぞれの村から、結構な数の農業用機械が発掘された。


 しかし、各村には整備する設備もなく、知識のある人員もいない。仕方がないので、ドワーフたちに出張修理をお願いすることにした。

さすがに、大量のトラクターなどをドワーフの鉱山まで運ぶのは、あまりにも手間がかかりすぎるからな。


 普段から鉱山に引きこもっているドワーフたちだ。俺が頼んでも外出を嫌がるかと思ったが、意外にもあっさりと引き受けてくれることになった。


「こんな事もあろうかと、わしらはあれを作っておったのじゃ」


 ドルフが顎をしゃくった先には、一台のマイクロバスがとめてあった。

 バスの中には、各種工具が整然と納められており、他にもエンジン式の発電機や、エアーコンプレッサー、溶接機、ボール盤、ベルトグラインダーなど、様々な工作機械が備え付けられている。

 さらには、それなりの居住空間まで作りつけられており、下手なキャンピングカーよりも快適そうなのだった。

 小回りの利く小型バイクもバスの後部に積まれていて、出先でのちょっとした移動まで考えられているのには驚いた。


「なるほど。移動修理工場ってわけか。やるなぁ!」


「ガッハッハ、わしらは先の先まで考えておるのじゃ。

 せっかく作ったんじゃし、この機会に使ってみんことにはのぉ」


 幸いにして、マイクロバスが走れるくらいの道なら、もう整備されている。

 さっそく彼らに出動をお願いすることにしたのだった。


 マイクロバスにはドルフと数名のドワーフたちが乗る。残りのドワーフたちは普段の作業のために鉱山に残った。燃料を延々を作り続けないといけないので、完全に留守にはできないのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ふむ、これがトラクターというものか……。

 この後ろの部分を付け替えることで、様々な農作業に対応するわけじゃな。

 構造自体はさほど複雑ではなさそうじゃの」


 ドワーフたちは初めて見る機械に少しの間戸惑っていたが、すぐに構造を理解して、ほとんど流れ作業のように修理できるようになった。


「さすがだなぁ」


「当然じゃ。わしらに直せないものはないんじゃ。

 それに、これらの機械は持ち主が手入れをちゃんとしておった様じゃ。

 元々丈夫に出来ておるようじゃし、ほとんど壊れてはおらんの」


「燃料は軽油なのか?」


「ふむ、こっちのはディーゼルエンジンじゃが、

 あっちにあるのはガソリンエンジンじゃな。いろいろあるようじゃの」


「ガソリンが足りなくならないかな」


「確かにそうじゃのぉ。

 もったいないが、ガソリンエンジンのやつは置いておくかの」




 俺はドワーフたちが機嫌よく各村を回れるように、村長たちに指示を出した。


「彼らは少々気難しいが、ちゃんと話せば聞いてくれる。

 機嫌を損ねないようにうまいこともてなしてくれよ。

 強い酒に目がないのは知ってるな?」


「もちろんです。

 しかし、この銘柄で本当によろしいのですか?」


 村長は怪訝(けげん)な顔で、ウイスキーの入ったデカいペットボトルを持ち上げる。

 某スーパーのプライベートブランドのそれは、人間にもホビットたちにも評判が良くない。かなりの数が発掘されているのだが、誰も手を付けずそのまま残っていることが多いのだった。




「これじゃこれじゃ、ガッハッハ!」

「舌が痺れるような強さが良いのぉ」

「まったくじゃ!」

「ンゴゴゴゴ……。ぷはぁぁぁ、もう一杯!」


 どの村に行っても、大好きな強い酒をふるまってもらえるドワーフたちは、終始上機嫌で出張修理をやり遂げたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ