03 物資を確保
ホビットたちは俺のことを、この辺り一帯の領主だと考えているらしい。
しかし、領主というのは、あんまり俺のガラではない気がする。
バイトリーダーぐらいが適当じゃなかろうか。
「よし、今日はいよいよコー〇ンを探索するぞ。
道具と資材の確保が第一目標だ。保存食なんかもあれば良いがな。
じゃぁお前ら行くぞ!」
「「「はい、領主様!」」」
ホビットたち十数名を率いて、俺は最寄りのホームセンターを目指すのだった。
市庁舎周辺のコンビニなどは、すでにホビットたちによる発掘が終わっていた。
俺は市内の住宅地図を丹念に調べて、めぼしい施設をピックアップ、近い所から順番に発掘していくことにした。
発掘というのは、建物が瓦礫に埋まっていることが多いからだ。
市内の道路はどこもかしこも草木が生い茂っていて、ちょっとした距離を行くのも大変だったりする。なので、まずは道路の草刈や邪魔な木や瓦礫の撤去など、とりあえずはリヤカーが通れる程度に整備することにした。
まずは市庁舎からコー〇ンまでの最短コースを整備することにした。
その距離およそ二キロ。バンパイアの俺が夜間作業、昼間はホビットたちが続きの作業を担当。一週間後には、だいたい通行できる程度になったのだった。
「ふぅ、到着!」
市庁舎にあったリヤカーを引いて約ニ十分、俺たちはコー〇ンに到着した。
一応、ホビットたちを護衛するためにポチも連れてきている。
外から見た感じでは、建物自体の傷みは少なそうだ。
俺の超感覚にもポチの鼻にも異常はとらえられていない。たぶん大丈夫だろう。
正面入口が壊されているので、商品は略奪されているのかもしれない。
俺たちは広い駐車場を横切って、正面入り口に近づく。
ポチが立ち止まってフガフガと鼻を鳴らした。俺もほぼ同時に何かを察知した。
「止まれ! 中に何かがいるぞ」
俺はホビットたちを少し下がらせて、その場に待機させる。
妖魔の恐ろしさを知っている彼らは青くなって固まった。
「「「ヒィィィ」」」
「危ないから下手に動き回るなよ。
そこでジッとしていれば大丈夫」
俺とポチが正面入り口の前に立って、しばらく店内をうかがっていると、中から低い唸り声が響いてきた。
「グルルルルル……」
「こいつは、魔狼じゃないなぁ。魔熊か、面倒だなぁ」
魔熊には俺の魅了術が効かないのだ。しかもこちらが退散しても執念深く追ってくる。遭遇してしまったら、物理的に叩きのめして撃退するしかないのだった。基本的に群れないのが救いではあるが、一匹でも手ごわい。
俺は背に担いでいた長いバールを構える。
「コイツが効くかねぇ」
魔熊相手だとバールがひどく頼りなく感じる。
「グゴォ!」
店内にいた魔熊は一吠えすると、俺に向かって突進してきた。
この突進はヤバい。
俺はギリギリで身をかわすと、すれ違いざまにバールを叩きこんでやる。
ドムッ!
粘土の塊を殴ったような手ごたえ。あんまり効いてなさそうだな。
「グワァ!」
俺の攻撃に怒った魔熊は後ろ足で立ち上がった。
低く見積もっても四メーターはあるだろう。
「「「キャァ!」」」
ホビットたちは大パニックだ。
それでもジッと踏みとどまっているのは偉い。腰が抜けてるのかも知れんが。
魔熊は腕を振り回して爪で俺を引き裂こうとするが、ギリギリで回避してやる。
ポチは魔熊の後ろに回り込み、奴の後ろ足を噛んだり引っかいたりして嫌がらせをする。
いらだった魔熊がポチの方を振り向いた瞬間、俺は垂直に五メートル程ジャンプし、魔熊の脳天に体重をのせたバールを突き立ててやった。
しばらく不思議そうにしていた魔熊は、ズシンと音を立ててひっくり返った。
「「「おぉぉぉぉ!」」」
ホビットたちはやんやの喝さいを上げる。
「さてさて……」
俺はまだピクピクと体を痙攣させている魔熊のノドに食らいつき、じゅるじゅると血をすすった。この体になってからというもの、流れ出る血潮に強い食欲を感じるようになったのだ。逆に人間の食物には関心がなくなった。
「うん、美味い! やはり血は温かいうちにいただくものだな」
ゴクゴクとのどを鳴らして魔熊の濃厚な血を飲み込む。
強い妖魔の血を飲むと、体が更に強化されていくのを感じる。
これこそまさに、五臓六腑にしみわたるというやつだな。
「「「ヒェェェェ」」」
ホビットたちは俺がバンパイアだということは知っているが、やはり血をすする俺の様子は恐ろしいらしい。後ろに控えていたポチはホビットたちの心情など知らず、尻尾を盛大に振りながらよだれを垂らしている。
「よし良いぞ、食え食え」
ポチがわふわふと声を上げながら魔熊の腹に食らいつく。降ってわいたご馳走に大喜びだ。やはり内臓が美味いらしいな。
店内からはもはや何の脅威も感じられない。
「店の中はもう大丈夫だ。選び放題だぞ。
まずは道具の確保からかかれ!」
「「「やったー!」」」
ホビットたちは喜び勇んで店内に突入するのだった。