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23 ジャンヌの服


 バンパイアの俺は、できれば夜型生活を送りたいところなのだが、周りに合わせて昼間に活動することも多い。日に当たっても別に死にはしないし、たいした影響はないのだが、やはり眩しいのが苦手だ。


 最近は、日中にサングラスをすることが多いのだが、このサングラスをよくサラにパクられる。もう五つか六つくらいはパクられていると思う。ホームセンターやコンビニにあるような安いやつだが、それでもムカつく。

 今日も出かけようとして机を探したら、いつの間にかなくなってた。


「くそぉ、またやられた……」



 仕方がないので、そのまま外に出る。


「そろそろ服が出来てるだろう。一緒にドワーフのところに行かないか?」


 そう言ってジャンヌを誘うと、彼女はぱぁっと笑顔になった。


「確かに! そういえばそうだった!」


 ジャンヌはドワーフに、ワイバーン革の服と靴の製作を頼んでいた。

 ワイバーン革の服は恐ろしく頑丈で、俺の戦闘服としても申し分ないものだった。

 俺の服が本物のワイバーン革で作られていると知ったジャンヌは、ことあるごとに俺の服を触りにくる。


「はぁぁ、この革の服がいよいよ私のものになるんだな、なんという幸せ……」


 そう言いながら、また俺の上着を撫でさすっている。


「でも、騎士の装備と引き換えなんだろ?

 あれはあれで中々良い物だが、構わないのか?」


「確かに騎士の装備は、手放しがたいものではある。見栄えも良いしな。

 しかしな、甲冑は着けるのが大変で重いし暑いし、実用上は微妙なのだ。

 それに、鉄の甲冑はありふれているが、

 ワイバーン革の服など、今まで見たことも聞いたこともないほど希少だ」


「なるほどな」


 俺たちはリヤカーに届け物を満載して、ドワーフの鉱山に向かった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「うむ、服と靴じゃったな。出来ておるぞ」


 ドルフは棚から色々と持って来た。


「なんか、これって俺の服とずいぶん違わないか?」


「おぉぉぉぉ! これが私のものに……」


 服を抱えてジャンヌがワナワナと震えている。どれだけ嬉しいのか。


「まぁ、とりあえず着てみてくれ。

 細かいサイズ直しがいるかもしれんしの」


「わかった!」


 その場でいきなり服を脱ごうとするジャンヌを試着室に押し込む。

 それにしても、いつのまに試着室など出来たのだろう……。


「ど、どうだ?」


 試着室から出てきたジャンヌを見て俺は仰天した。


「なぁっ!?」


 俺の服はライダース風で補強なども控えめなのだが、ジャンヌの服はもう服というよりも、革の鎧と呼んだ方がしっくりくるようなものだった。

 華美すぎない質実剛健なデザインで、それが長身でキリッとしたジャンヌにはピッタリ合っていた。実に恰好良くきまっていたのだ。


「すごいな! 良く似合ってるよ。何というか、カッコイイな」


「おほっ、そっ、そうかぁ?」


 ジャンヌの頬がゆるむ。


「これはオマケじゃ」


 ドルフが革貼りの兜とグローブを持って来た。

 もちろんこれもワイバーン革だろう。


「いいのか!? ありがとう」


 さっそくジャンヌはそれも身につけた。

 頭からつま先まで、総ワイバーン革の渋い暗赤色の戦闘装束は、なんともいえない凄みすら感じる。


「そうだなぁ……例えるなら、紅の竜騎士って感じだな」


 俺はなんとなくそれっぽい単語を口に出した。


「なぁっ!? ブラドは世辞が上手いな、ハハハ」


 ジャンヌは顔を真っ赤にして照れている。


「どうじゃ? サイズ直しの必要はありそうかの?」


「いや、驚くほどピッタリだ」


「そうじゃろうそうじゃろう、わしらの作るものに狂いはないのじゃ」


 ドルフは自慢げに胸を張るのだった。


「あとは剣じゃったの。

 わしらが鍛えた本物の剣じゃ。人間の作ったナマクラとは違うぞ」


 ジャンヌがもらった剣は、俺のよりももう少しだけ長い。


「剣の長さは体格に合わせてある。

 まぁ、お前さんなら二メートルの剣でも振れるじゃろうが、

 やはり使い勝手を考えれば、体格に合ったものが良い」


「おぉぉぉぉ! これは、これは本当に良い物だ。ありがとう」


 剣を受け取ったジャンヌは感激している。


「ドワーフの剣は見た目も良いけど、切れ味もなかなかだよな。

 こないだゾンビ集団を倒したときも、サクサク首が落とせて助かったし」


「当たり前じゃ。ゾンビなぞ斬ったうちに入らんわぃ。ただの剣のサビじゃ。

 わしらが鍛えた剣なんじゃ。ドラゴンをも倒せるはずじゃ……たぶんの」


「ふぅぅぅむ。確かにこの剣なら、あるいは……」


 ジャンヌの鼻息が荒くなるのだった。


 ドワーフが作ったワイバーン革の戦闘装束も剣も、ジャンヌが想像していた以上に良い物だったのは間違いない。帰り道では、いつにもまして上機嫌なのだった。

 満面の笑顔でスキップする女騎士を見て、俺もいつの間にか笑顔になっていた。













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