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13/59

13 森


 ホビットたちには男女の区別があるし、子供たちもいる。

 しかし、ドワーフの女って全然見ないし、少なくとも俺が見たドワーフってみんなひげもじゃ親父しかいない。

 普通の生き物じゃなくて、いわゆる妖精的な存在なんだろうか。問いただしたりする程のことではないが、たまに気になったりする。


 まぁ、俺だってバンパイアだし、俺自身良く分からないことも多いから、あまり深く追求しても仕方がないのかもしれない。

 そういえば、俺は太陽光で灰になったりしないし、流れ水を渡れないこともないし、十字架には興味すらないし、鏡にも写る。映画や小説の設定が間違っているのかもしれないが、俺が実はバンパイアとは違う存在なのかもしれない。

 よく考えたら、なぜ自分をバンパイアであると認識しているのか。目が覚めたときに、すでにそうに違いないと確信していたのだが、なぜそう思ったのか謎だな。

 答えの出ない問いが頭の中をぐるぐる回る。


 そろそろ夜が明ける。

 すこし横になって頭を休めよう。俺は自室の布団に潜り込んだ。

 寝床の中で伸びをして、やれやれと息をついたところ、


 ズドーン


 一瞬地面が持ち上がったような非常に大きな振動が一度、直後にびりびりと小さな振動が続いた。


「……む、地震か? 震度5ってとこか?

 そういえば、この感じ、何か既視感があるな……」


 ポチがガゥガゥと何かを訴えながら部屋に入ってきた。

 やはり単なる地震ではなさそうだ。


 下の階に降りてみると、ホビットたちがやはり大騒ぎしていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ大変だぁ!」

「地面が爆発したんだ!」

「いや、タイタンの襲撃だ!」

「神様がお怒りなのだ」

「魔人か魔王か悪魔の仕業に違いないぃぃ!」


 ざっと見渡したところ、どこも壊れてないし怪我人もいなさそうだ。


「まてまて、落ち着け。

 誰か怪我をした者はいるか?」


「「「領主さまぁ~!」」


 ホビットたちが集まってくる。


「どうだ、怪我をした者は?」


「「「……いえ、誰も」」」

 

「大丈夫。

 これぐらいの揺れじゃぁ、この建物は何ともならんよ。

 前にもこんなことあっただろ?」


「おぉぉぉぉ!」

「さすが領主様のお屋敷だ」

「落ち着いておられる」

「やはり格が違う……」


 ようやくホビットたちが落ち着きを取り戻す。


「この展開は以前にもあったな……」


 ピンときた俺は屋上に駆け上がった。

 屋上から庁舎の周囲を見わたすと、すぐに異変に気が付いた。

 俺の後から上がってきたホビットたちも、口を開けてポカンとしている。


「嘘だろ……」


 ドワーフたちの鉱山とは庁舎を挟んでちょうど真反対の位置に、巨大な森が出現していたのだった。この高さからでは森の果てが良く分からない。富士の樹海もかくや、という程の大森林だった。


「ちょっと見てくる。

 お前たちは中にいろ」


 俺はポチ達を連れて、森まで走った。


 距離的にもドワーフの鉱山と同じくらいで、三十分ほどで森に到着した。

 人の手が入っていない、全くの自然な状態の森に見える。

 種類は良く知らないが、幹が真っすぐの針葉樹が、それこそビル程の高さにみっしりとそびえ立っている。

 木の根元には、落ちた枝葉が高く積み重なり、倒れた木がさらに折り重なり、そのすき間にはシダ植物がわさわと生い茂っている。

 分け入っていくには相当の覚悟が必要だ。見える範囲には中へ続く道などは存在しない。ポチ達ですら、森の前でウロウロするだけだ。


「これは何もしようがないな」


 俺たちはしばらく森に沿って歩き回ったが、同じような光景が続くばかりだった。俺は頭を抱えながら庁舎に戻った。




「「「領主様!」」」


 心配していたらしいホビットたちが駆け寄ってくる。


「問題ない。

 単に巨大な森が飛んできただけだ」


 もちろんとんでもない異常事態だが、原因不明だし対処不能なので、なるようにしかならない。素直に受け入れて、納得するしかないのだった。


「「「えぇぇぇぇ!」」」









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