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――――――――――――――――――――――――


 わたしは教室の窓から文化祭の花火が上がるのをぼうっと見る。小さい花火であっても大きな音を立てて空を鮮やかに彩ってくれる。良く見知ったふたりらしき人影が照らし出されていた。


「やっと、か」


誰に向けてでもなく小さくつぶやく。ほんとうにここまで長かったなあ。どっちも変なすれ違い方するもんだから時間かかっちゃった。


彼女の方から告白したのかな。なんとなくそうじゃない気がする。普段はサバサバしてるのにとたんに臆病になるのは悪い癖だよ。別にメイクしたりおしゃれしたりでかわいくなんてなる必要もなかったけど。そうでもしないと勇気がでないんだから。


まあでも可愛くなって焦らせる作戦はちょっとは成功したのかも。彼の方から文化祭に誘ったようだったしね。中学のころワックスをつけ始めたのだって彼女に振り向いてもらうためだってのも知ってる。彼だって回りくどいことばっかりで何度早く告白しろと思ったことか。


あーあ。ほんとにふたりともばかだなあ。……でも、一番ばかなのはわたし。


わたしにはなんでもわかってる。彼女が彼のことを昔から想い続けていること。ふたりがお互いのことを意識していること。――彼の気持ちがわたしに向かないことだって。


早くくっついてくれないかなと何度も背中を押して。これでやっと、やっと諦めることができる。私は想いを伝えなくたっていい。


めでたしめでたしで終わる話じゃないけれど彼女はわたしの親友だもん。親友が悲しいなら私も悲しいし嬉しいなら私も嬉しい。だから今までの彼女の行動が報われたのは単純に嬉しい。これは嘘じゃない。


いつの間にやら外から音が聞こえなくなっていた。あんなにもきれいだった空には花火の跡を思わせる煙だけが残っている。ただよう煙の焦げ臭さが目にツンと染みた。


「明日にはおめでとうって言えるようにする。けど、今だけは」


後夜祭からもどってくるみんなに見られないようにわたしは帰り道を急いだ。



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