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なにかがちょっと違う毎日のまま小学生の日々は過ぎ私たちは中学生になった。。


そのまま潤也とは同じ学校で、放課後はお互い部活で一緒に帰ったりできなくなったけれども、クラスではそこそこ話した。私は陸上部に潤也はサッカー部に入った。


今の親友であるりっちゃんともこの陸上部で出会った。



それでも私と潤也の関係は確実に変わってしまった。


体育の授業は男女が別になって競争したりできなくなった。それでも体力測定の結果を比べることはできた。


「潤也。100m走何秒?」

「十二秒ちょいだけど。千秋は?」

「十四秒代……。あー私の負けかあ」


私は女子の中では一番足が速かった。それなのに大きく離されて負けてしまっていた。小学校のころはほとんど同じタイムだったはずなのに。これが男子と女子の違いというやつなのだろうか。唯一勝てていたのは柔軟のやつだけ。



 それに潤也は大人っぽくなった。

背も伸びて部活のおかげかがっしりとしている。それに髪もちょっと伸ばしてセンターパートなんかにしていた。先生にバレないくらいのワックスだってつけている。潤也くんかっこよくなったよねー、なんて声も聞くようになった。


「潤也。ワックスなんかつけてどうしたの?」

「いや、なんだ。てか、よく気づいたな」

「朝からなんかそわそわしてるし、髪いじいじしてるし」

「いや俺のこと見すぎだろ」

「うるさいばーか」


なんかごまかされてしまった気がする。潤也からふわっと香る嗅ぎなれないワックスの匂いはなんだか別人にようだった。つながりが消えてしまったみたいで胸がきゅっとした。



 二年の終わりごろのことだっただろうか。前の席のりっちゃんが振り返って私にこそっと話しかける。


「なんかちょっとうわさを聞いたんだけどさ」

「また恋バナ~?」

「まあそうなんだけど。いや、今回はちょっと違ってさ。潤也君が後輩と付き合ってるみたいな。いや噂でしかないんだけどね」


よく聞いて見ると一年のサッカー部のマネージャーとショッピングモールにいるのを見たとのことらしい。私は息の根をとめられたようなそんな気がした。ぷかぷかとおぼつかない気持ちのまま一週間が過ぎた。部活にも身が入らず先生にも叱られたりした。


さすがに一週間もたつとどうにかしなければという気持ちが湧いてくる。これで変わってしまうことがないようにと祈りながら、よし、と気合を入れてなんでもない雑談のように潤也に話をふる。


「ねえ、潤也さ。いま付き合っている人とかいるの?」

「いや、いないけど。急にどうした?」

「……別に何でもないけど。じゃ、じゃあさ好きな人、とかはいるの?」


まずい、踏み込みすぎた。そう思ったつかの間、そんな言葉がかけられた。


「うん。いるよ」


芯の通った強い言葉だった。


「そ、そうなんだ。へえー、頑張ってね! あ、私トイレ行ってこなきゃ」


私は逃げるように教室を出る。その先を聞くのは怖かった。冷え込んだ廊下の空気は私の心を映しているようだった。


 それからは潤也と話すのがちょっと気まずかった。気温も下がってきて寒いはずなのにじっとりとしていて落ち着かない。どうしてもぎくしゃくしてしまって心地よくない。


そんな関係を決定的にしたのがクラス替えで別のクラスになってしまってことだ。部活も違うから話すきっかけもなくなって、朝のおはようすら言うことができなくなった。


けれども裏腹に私の思いは積もっていった。廊下ですれ違うときに何げなくかわす言葉が嬉しかったり、窓から眺める運動する姿を目で追ってしまっていた。


「はあ、どうしよ」

「どうしたのよ。ため息なんかついて」


私の独り言を耳ざとく聞きつけたりっちゃんが優しく言葉をかけてくれる。けれどもこんなこと言う勇気はないので何となくごまかす。


「いや、ちょっとね」

「ふーん。あのさ。悩んでるのさ、潤也君のことでしょ。マネとの噂がでたときとおんなじ顔してるもん」


核心を突くように言うりっちゃんは正直になっちゃいなよ、と私の頬をつつく。少し考えた後小さい声で口を開く。


「……そう、なんだよね。潤也のこと」

「うんうん。やっと言ったか。だって潤也君のこと好きだもんね」

「そ、そこまでは言ってない!」

「顔赤くしちゃって。言い訳しても意味ないよー」


聞かれてないようにと周りをうかがう私。だれもこちらも見ていないのを確認してほっと息をついた。


「これからどうしたらいいのかなって」

「急に神妙な顔して相談ですか。まあそうだねぇ。うーん。なんというか、自分に自信を持つだけでいいと思うよ」

「だって……。私ってば男の子っぽいし、がさつだし、昔っからおままごととかよりも外で体動かす方が好きだし。女の子らしくないんだもん」


こんなんじゃ自身なんかもてないよ、とぽつりとこぼす。


「なら、女の子らしくしてみればいいじゃん。それだけだよ」


にししと良いこと思いついたとばかりに笑うりっちゃんの顔が印象的だった。


「じゃあ日曜服とか買いに行こうよ。そのまま千秋んち行ってメイクもしよう。うんそうしよう! 気合いれてくよー!」

「私よりやる気だしてんじゃない。まあ、そのありがとう、りっちゃん」

「いまなんて?」

「……ありがとう、って言ったの!」

「どういたしまして!」


なんてことない一日のちょっとした会話。そんなきっかけひとつで人って変われるのかもしれない。


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