大山 雄太②
「悪いが、俺は女が相手だからって手加減はしないぞ?」
「その方が良い。後で実は本気じゃなかったんだよなとか言われたら堪らないからな」
「...その減らず口! 今に塞いでやる!」
地を蹴って俺の方に走ってくる奴の動きにカウンターを狙う。
「カウンター狙いだろ!? はなっからバレてんだよ!」
俺のカウンターに合わせて動きをワンテンポずらしてくる神業を披露された!
「なっ!?」
俺のカウンターは見事に宙を切り裂き、その後に彼の拳が腹にめり込んだ!
「ガハッ!」
俺は口から血を吐きながら腹を抑える。
そんな様子の俺を見て彼は笑い声を上げた。
「悪いな、手加減はできないって言ったろ?」
「...ぐっ」
何とか立ち上がった俺を見て奴は拍手をしていた。
「やるな、女にしてはなかなかだ」
「だから俺は男だって言ってるだろ!」
「ここまできてそれを言うか。なるほど気に入ったぜ佐藤...だったよな?」
「ああ、名前を覚えてくれたのか! 大山!」
俺が奴の名前を呟くと、彼はニヤリと笑う。
「くくく...! 俺の名前を呼ぶとはな...! 少し興奮してきたぜ!」
ぐっと拳を握り込む奴の一撃を刀身で受け止める!
(ぐっ! 重い!)
「がっ!」
若干飛ばされたが、せいぜい5メートルって所だな。
「これでも消し炭にならないとは...。佐藤武。楽しませてくれるな」
「へへっ、そりゃどうも」
(危なかった〜! もうちょっと受け止める先がズレてたら死んでたかも...)
奴はなんだか調子良さそげに呟いてくるが、俺にとっては余裕がありすぎて不気味に思えるのだった。




