森の中
森の中をひたすら歩く。のんびりだからそんなに疲れない。
「疲れたー」と言えば、ラビッシュがうーうー(乗って下さい)と言うので、背中に乗らしてくれる。
もふもふとの出会いは最高なのだ。
木々の掠れる音が耳をさす。心地よいヒーリング音楽のようだ。
数分歩いた所で分かれ道が出現した。看板の一つも無く、この森では不気味さすら感じられた。
「どっちに行けばいいかな?」
うー
(右)
「ほんとに?」
迷ったが、ラビッシュを信じることにした。そのまま右に進む。
すると……
「きゃっ」
急に木から蜘蛛が飛び出してきた。
慌ててラビッシュに寄りかかる。
「本当にこの道で合ってるの?」
不安そうな目でクリスティーナはラビッシュに問い質す。
うー
(合ってます)
道の通りに従って進む。
今度は草がぼーぼーな道になった。
膝よりも高く草が伸びており、管理されていないのが伝わる。
(歩きづらい……)
疲弊したのに気づいたのか、ラビッシュが背中をアピールする。
「乗っていいのね」
ラビッシュの白いもふもふな背中に乗った。ラビッシュは瞳がルビーのように赤く、耳はピンクと白で体も真っ白というウサギらしい見た目をしていた。
ふわふわ過ぎて寝てしまいそうになる。睡魔を殺して何とか意識に集中する。
うーうー
(着きましたよ)
「……ここは」
そこは川が流れていた。川のせせらぎが心地よい。ラビッシュはちょこんと丸太の上に座った。その隣にクリスティーナも座る。
「ここは静かで落ち着くね」
うー
森で過ごしていると癒されて、先ほどのフラッシュバックも忘れてしまえる美しさだった。
うー
(喉が渇いたでしょう)
丁度喉が渇いていたので、川に辿り着けて良かった。
川の水を掬って飲む。
それは何とも美味しい天然水だった。自然の水の透き通った感じに感動さえ覚えた。当然、川の水は水を司る神によって浄化されている。
「美味しい! 100点満点」
ラビッシュは飲めないのか、クリスティーナの様子に嬉しそうにしていただけだった。
うーううー
(いつでも飲めるようにコップに保存しておきましょう)
(コップ?)
クリスティーナが首を傾げていると、ラビッシュは魔力を念じ込めた。
そして、赤紫色の光がラビッシュから放たれた。
そして、透明のコップが宙に浮かんだ。
クリスティーナはびっくりしてあたふたするのみ。
「何、これ。ラビッシュ、今何したの?」
うー
(魔法でコップを出現させました。早くコップに水を入れましょう)
クリスティーナはコップ一杯に川の水を入れた。
それから、クリスティーナはラビッシュとのんびり会話を楽しみつつ、一休みした。ラビッシュは先ほどの頭痛をすごく心配していた。気遣いの言葉が掛けられる。それにクリスティーナは「大丈夫だよ」と笑ってみせた。
一休みを終え、最後に水を一口飲み、また立ち上がった。ここはオアシスのようで、回復所のような役割をしてくれているそうだ。
立ち上がり、歩こうとしたその時だった。
うー!
(アイテム回収)
えっ、何!?
ラビッシュはまた魔力を念じ始めた。今度は水色の光に包まれた。ラビッシュの体にコップが吸収された。
「何! 折角、コップと水用意したのに食べちゃったの!? 嘘でしょ。早く吐き出しなさい」
うー
(食べたわけではありません、姫様。勘違いなさらないで下さい。私は吸収したのです。取り出す事も可能です)
元気の無さそうで悲しそうな声で鳴いた。
「そう、それなら良かった。取り出してみて」
うー
(魔力の無駄なので取り出せません。喉が渇いたらいつでもお申し出下さい)
「やっぱり食べちゃったの?」
うーうー
(何でそうなるんですか!)
そんな会話を交わしながら、森を歩いていると、グルルッグルゥという魔物の鳴き声が聞こえた。
かなり近くから聞こえる。
少しもしない内に魔物に遭遇した。




