不機嫌な神獣
不快な轟音と共にソレは魔法陣に現れた。
召喚士達は大歓声で召喚成功を祝い、互いの肩や背を叩き喜びを分かち合う。
「流石だな大召喚士ガイマ、父上も喜ぶことだろう。褒美は奮発するよう口添えするぞ」
偉そうな若造はブラセイア国の第三王子ダニエル。
「有難きお言葉、感謝いたします」ガイム召喚士長は腰を折り礼を述べる。
混沌とした世、まさに僥倖だ。と皆喜びに沸いた。
乱世においてなにが僥倖だとガイムは腹のうちで毒を吐いた。
「それでは呼び出したモノと契約を」
「うむ、わかっている」高揚に王子は頷き、ソレに近づく。
「覚醒し我と契約せよ、アメジストのOOOO。我が名はダニエル・ブラセイアお前の主である」
――目ヲ覚マセ?
――誰ヨ、エラソウニ契約?主?
――中二病カヨ、痛々シイヤツ
ソレは「ガオオオォン!」と大音量で咆え、紫水晶の瞳で睨めつけた。
***
「ガオオグルルン……」(なんか、あったま痛ぁ~)
「ガゥゥゥゥウ、グルルルルーン」(んだよ、さっきから耳元でガオガオ喧しいったら……)
「ンガアア?ガオオオオー!?」(え?なにこれ喋れない!?)
まるでOッO-ラの慟哭のような声……。
自分の口からガオガオと唸り声が出ていると自覚したソレは辺りを見回す。
巨大洞窟に祭壇のようなものが設えてあり、マントを羽織ったオッサンたちが十数人倒れている。
「ガオオオオオ!グラァアア!ンガアアアア!ギャオオオオ!」
(なにこれ!明晰夢!?こんな夢みたくないっつーの!洞窟狭い外出たい!)
「お、お静まりください、神獣様。どうか、どうか」
たった一人起きていたらしい青年が、必死に頭を下げて懇願してきた。
「ガアアアアア!」(だれだ、お前!)
「ぎひいいい!御赦しくださーい!」
ここは何処だと聞きようにも出てくるのは唸り声だけ、途方にくれてシュンと項垂れた。
――
どうやら今の自分は相当デカイ図体らしい、青年が虫くらいに見えるよ。
それとも青年が小人かなんかか?
『恐れ入ります、念話はできますか?』え?青年の声が頭に響いてる?
『念話?中二かよ』
『おお、聞こえますよ。神獣様!』
はて?しんじゅう……神獣のことか?いよいよ中二病だ。
私のことかと首を傾げてみる。
『はい、あなたは神獣様で。本日、召喚されました』
『……は?』
「ガアアアアアアア!グアラアアアアア!グルラアアアア!?」
(召喚とかバクワラ。中二の夢かよ!バッカじゃない!?)
「ひぃい!お静まりくださひぃっぃ~~~」
ちょっと笑いながら呟いただけで、泣く事ないでしょ。
やり難い!