表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
負け犬のくせになまいきだ  作者: 石山 雄規
本章 禊 Otherworld
47/59

43話 沈黙

 ちょうど別れ道にいる。誰の声も聴こえない静寂の真っ只中に立たされて、無関心な沈黙に進むべき方角を決められずに呆然としてる。坂道に、転がり落ちていく。


 物事、順番があるもんだ。栄光と没落は表裏一体――死ぬほど嬉しいこともあった。


 けれども俺は知っている。それは嘘だと。世界はそんな風に回っていないことを。


 目が回りそうだった。実際、回っていたんだろう。下手くそなターン、土砂降り、仰向けの飛行機雲、深海に佇むシーラカンス――回り続けていたはずなんだ。


 ――――悪気はないさ。


 目の前に大迫力で広がる沈黙に、そんな声。


 おじさんは待合室で天井を眺めていた。ただぼんやりと。


 扉を開けて。部屋の中は真っ暗だった。薄明かりのランプがベッドを照らしていた。


 ――――意味なんてない。意味なんてない。意味なんて、ない。


 轢かれた意味なんて、ない。世界は俺に無関心で、だから何でも自分のせいにして。


 自分のことが嫌いになるんだ。だから、朝起きて目が冴える度に、気付く。


 俺のせいじゃないって。


 目を背けは出来なかった。尻を隠し忘れた駝鳥にはもうなれない。ただ、圧倒的にそこにあって、けれど音のしない――不足した現実が、色鮮やかに目の前に立っていた。


 綺麗だったんだ。本当に、嘘みたいに。神様に感謝したくなるくらい、綺麗な光景。


 心臓の鼓動さえ聴こえない――とても落ち着いた静寂が。


「ねぇ」


 結局、俺はただ、受け止めるだけで精一杯だった。


「もう、喋らないの? 泪」


 泪が亡くなったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ