43話 沈黙
ちょうど別れ道にいる。誰の声も聴こえない静寂の真っ只中に立たされて、無関心な沈黙に進むべき方角を決められずに呆然としてる。坂道に、転がり落ちていく。
物事、順番があるもんだ。栄光と没落は表裏一体――死ぬほど嬉しいこともあった。
けれども俺は知っている。それは嘘だと。世界はそんな風に回っていないことを。
目が回りそうだった。実際、回っていたんだろう。下手くそなターン、土砂降り、仰向けの飛行機雲、深海に佇むシーラカンス――回り続けていたはずなんだ。
――――悪気はないさ。
目の前に大迫力で広がる沈黙に、そんな声。
おじさんは待合室で天井を眺めていた。ただぼんやりと。
扉を開けて。部屋の中は真っ暗だった。薄明かりのランプがベッドを照らしていた。
――――意味なんてない。意味なんてない。意味なんて、ない。
轢かれた意味なんて、ない。世界は俺に無関心で、だから何でも自分のせいにして。
自分のことが嫌いになるんだ。だから、朝起きて目が冴える度に、気付く。
俺のせいじゃないって。
目を背けは出来なかった。尻を隠し忘れた駝鳥にはもうなれない。ただ、圧倒的にそこにあって、けれど音のしない――不足した現実が、色鮮やかに目の前に立っていた。
綺麗だったんだ。本当に、嘘みたいに。神様に感謝したくなるくらい、綺麗な光景。
心臓の鼓動さえ聴こえない――とても落ち着いた静寂が。
「ねぇ」
結局、俺はただ、受け止めるだけで精一杯だった。
「もう、喋らないの? 泪」
泪が亡くなったことを。




