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無能勇者の烙印  作者: 汐倉ナツキ
第二章

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能力の成長



「………………神の贈物(ギフト)、使ってしまったのではないか?」

「? ……っ!? うおぁ、しまった!?」

「ちょっと抜けてるところも可愛いが、こいつはどうするつもりだ?」

「どうしよっかぁ……俺の神の贈物(ギフト)は一つの命につき一度しか命令できないんだよね」


 だから今まで永続的、かつ無制限に命令できるようにしてた訳だし。


「だったらもう……殺すしかない、か……。うーん。使ったつもりは無かったんだけどなぁ……」

神の贈物(ギフト)の暴走……? いや、そんな体験、私達はしていない。『神の御言(ヒプノシス)』の発動にはマヒルの意思がトリガーになる。無意識にトリガーを引いた可能性もあるが……マヒルはどう思う?」

「んー……」


 まったく分からない。

 本当に使ったつもり無かった訳だし。

 マジで何で発動したんだ?


「私の攻撃を受けなぜ生きてるのかは知らないが、我が王国の為に貴様には死んでもらう。悪く思うな」


 ボォオオオ!

 また赤の魔術『火炎弾』が飛んできた。

 俺は無抵抗のまま考え続ける。

 無防備な俺に再び『火炎弾』が着弾した。


「命令として声を落としたままなのは事実。命令を下した覚えは無いけど……どうなってるんだろうなぁ、これ」


 土煙が晴れ、またも無傷の姿を晒す俺にカルメロルツの騎士は怖気付き、無意識に半歩足をさげた。


「貴様、なぜ魔術が効かない? ありったけの魔力を込めた私の『火炎弾』はAランク相当の実力者でも無傷では済まない。だというのに……」

「さっきから鬱陶しいな。今考えてるってのに──《動くな》」

「ああ、分かった」

「………………………………ん?」


 黙った。動かなくなった。

 まあ、神の贈物(ギフト)使ったし……ん?

 …………ちょ待てよ?

 ひょっとしてだけどこれって……。


「マヒル……。今の能力の二度掛け、か?」


 驚いた顔のアリス。

 多分俺も似たような顔をしてる。


「どうやら俺の神の贈物(ギフト)も……成長、してたらしいな」


 いやぁ、たまげたなぁ。




 ▽




『なっ!?』


 ゴォオオオ!

 突然、ぼくに向かって赤の魔術である『火炎弾』が放たれた。

 命の危機……そのはずなのに、ぼくは呆然と立ち尽くす事しかできなかった。

 ──死ぬ。

 何も成せないまま、それも無意味に。


 ぼくはサンブルックスで魔物を倒してレベルを17も上げた。

 なのに、動けない。

 強くなったはずなのに、体が動かない。

 一瞬、また一瞬とまるで時がゆっくりと流れているような感覚に陥る。

 燃え盛る『火炎弾』が徐々に、徐々にと迫り来る。

 その刹那に物心ついた頃からの記憶が脳裏に鮮明に流れてくる。


『よっこいしょ』


 まるで日常の一幕のような平静な声が後ろから。

 それと同時にグイッと腕を引っ張られ、人影に隠された。

 走馬灯が途切れると共に『火炎弾』が爆発した。

 直撃すれば火傷は免れないだろう爆風が広がる。


『ま、マヒルさんっ!?』


 とてつもない威力の『火炎弾』が直撃した。

 あの人はぼくよりレベルが少し上。

 つまり耐え切れる訳がない。

 それなのにぼくを庇って……そんな、何で……!?


『む、無傷……だと!? 一体どんな手を……くっ、侵略者だとか引き摺り落とすだとか……貴様テロリストだな!』


 爆風によって巻き上げられた土煙が晴れた時、マヒルさんの姿を視認する事ができた。

 服に汚れすら付いてない。

 まったくの無傷。


『テロじゃない。革命だね』


 普段通りの飄々とした態度。

 アリスさんと普段通りの会話をしてたところに──。


『私の攻撃を受けなぜ生きてるのかは知らないが、我が王国の為に貴様には死んでもらう。悪く思うな』


 ボォオオオ!

 再び迫り来る『火炎弾』。

 マヒルさんに着弾し、二度目の爆風が大通りを襲う。

 爆発の光でマヒルさんの細い後ろ姿が瞳に鮮明に映る。


(兄……様……?)


 シルエットも性格もまったく違うのに、なぜか今は亡き兄バラトス・リ・カルメロルツの屈強な後ろ姿と重なって見えた。

 なぜかは分からないけれど、ぼくはマヒルさんの背中に、とてつもないほどの安心感を得たのだ。

 目の前にいるのは敵対してる者に遠慮が無く、洗脳という卑劣な手段を使ってる男だというのに。


『メシアが神託を下す! 《私の指示通りに動け》!』




 ▽




「マヒル様!」

「サマァ!? え、なに、どうしちゃったのこの子……」


 ずっとこっちを利用してやる気満々って感じだったソラスが急に柔らかい雰囲気を纏って俺の手をぎゅっと握ってきた。

 え? マジでなんなん? こわぁ〜。


「ずいぶんと懐かれてるではないか」

「そうなの……? いきなり過ぎない……?」

「人の気持ちとは移ろいやすいものなのだ。ともあれぃ…………いい加減その手を離さぬかぁ!! マヒルは私の運命だぞ!? マヒルの手は私が握ぃいいるっ!! うぉおおお離れろぉおおお!!」


 俺とソラスの手を強引に引き剥がしたアリス。

 こいつ、大人げねぇ……。


「マヒル様……ぼく、マヒル様のそばにいたいです……」

「おう?」


 捨てられそうな子犬のように寂しげな顔でうるうると目尻に涙を溜めるソラス。

 待て、マジでこの豹変具合は何なんだ?

 本当の本当にマジで怖い。


「あっ」


 懲りずに近寄ってくるソラスをガードするアリス。


「ふふんっ!」


 胸を張り勝ち誇った顔で鼻を鳴らすアリス。

 だから大人げないってばよ。


「う、うう〜〜……」


 アリスがいじめ過ぎたのかプルプル震えながら決壊寸前のソラス。

 いや、何でこんなにしおらしいの?

 どうして急に可愛げが全開になってるの?


「あっ、えへへ……」

「うっ」


 しまった。思わず頭を撫でてしまった。

 愛想の良い歳下の子を相手にするとなぜか甘くなってしまう。

 ソラスは嬉しそうに顔を綻ばせる。が、反対にアリスは裏切られたような信じられないものを見たように青い顔をする。


「な、なぜだ……マヒルぅ……」

「そんな世界の終わりみたいな顔するんじゃないよ。なんだかんだこの世界で出会った中だとアリスが一番なんだから」

「そうだろうそうだろう! マヒルは私の運命なのだから──なっ!」


 急に息を吹き返すアリス。

 アリスは分かりやすいから助かるわ……。


『ねえ真昼君! 手を繋ぎましょう!』


 …………?


『だから真昼君⎯⎯私と、生きて。昨日、自分で言ってたでしょ? 『生きる事は諦めたくない』って。あの言葉は嘘だったの?』


 ふと黒色長髪の美人が脳裏を過ぎる。

 誰だ? この女は……。

 あ、あぁーーー…………………………あ?

 俺は今、何を考えてた?

 うーん。まあ、思い出せないって事は、そこまで重要な事を考えてた訳じゃないって事だろう。


 けど、ソラスの豹変についてはマジでよく分からん。

 今まで『さん』付けだったのに急に『様』付けに変わったし。

 この態度の違いはなんだ?


「うーん……まあいいや。やる事は変わらない訳だし」


 何かを企んでようと企んでまいと、この調子ならアリスが余計に目を光らせるだろうしね。

 アリスがいると気楽にやれるからいいな。

 一家に一台ほしくなるレベル。




 ▽




 はい。ビルポタス・カルメロルツ領は本日より独立しました。

 今まで旧王宮の上ではためいていたカルメロルツの王冠やらが入った国旗は燃やされ、俺の描いたメシア教の旗が掲げられている。

 描いたと言っても無能の烙印と同じ赤丸と簡素なデザインなんだが──。


「メシア様! いくら貴方様が手ずから描かれたとしても私は納得できません!」


 うん。反対意見が出るんだよね。

 目の前のこの若い女性は神の贈物(ギフト)に掛けてないから文句を言ってくる。彼女の周りの人達は必死に諌めてる。

 別に意見を言うのは悪くないんだけど、反対する理由がねぇ……。


「無能の烙印は魔術を使えない案山子(カカシ)の代名詞ですよ!? 世界平和を謳う高尚なメシア教に相応しくありません!!」


 世界平和を謳うからこそ、その差別的な姿勢はダメなのでは?

 意図的に隠してるけど、俺だってその案山子な訳だし。

 しかし彼女を支持する人間も少なからずいる。

 というか、そのほとんどが神の贈物(ギフト)に掛かってない人間だ。悲しいね。


「これから世界の平和を脅かすカルメロルツを討つ者の言葉とは思えませんね。カルメロルツの原理主義者とまったく同じ事を言う者が私の信徒にいたとは、何と嘆かわしい事でしょう」

「くっ! でも、魔術を使えない者は人間じゃないんです! メシア様はそこら辺を誤解されてます! どうかお考え直しを!!」


 こーれは腐ったミカン箱だ。

 カルメロルツの魔術士至上主義的思想を受け継いだ植民エリアの労働奴隷の不満の捌け口の一つだったんだろうなーっていうのが見え見え隠れ見え見えの割合で透けて見える。

 神の贈物(ギフト)が無かったら反対多数で反乱起こされてたかもだね。

 これは俺の胸に刻まれた無能の烙印見たら発狂して俺を殺しに来るんじゃないか? 割とマジで。


「貴様、メシア様に向かって無礼な!」


 俺のそばに控えていた信徒の一人が棒状の拘束具を使って文句たらたらな目の前の女を取り押さえた。


「そんな……っ、なぜ分かってくれないのですか!?」


 さっきまで赤かった顔を青くする女。

 この大陸人達は総出で非魔術士を排斥してるっぽいな。知らんけど。

 やっぱしカルメロルツ王国だけじゃなかったのかぁ……。

 うーん。何だか大陸ごと浄化した方が良い気がしてきた。

 俺の為にも、この世界の為にもこの野蛮人的思考を保持してる輩は排除するべきだな。

 念の為に一族郎党皆殺しにするが吉……なんだけど、でも良かったネ。

 俺が人を操る神の贈物(ギフト)保有者で。


「メシアが貴女に神託を下します」

「は、はいっ!」


 信じる組織のトップからの神言に嬉しそうな顔をする女。

 こういう自分に都合の良い事だけ考えてる奴は見てるだけで吐き気がする。


「──《私の決定に従いなさい》」

「はい。分かりました。手間をお掛けして申し訳ありませんでした」


 そんな奴らは駒扱いされても仕方がないだろう。

 畜生にも劣る君達でも、俺がきちんと利用してあげるさ。

 最終的には君達の宿願も果たされるんだ。

 それなら文句は無いだろう?


「メシア様、宗旗『夜明けの星』を国内中に設置完了しました」

「ありがとう。では、我々は明日の早朝より──ロアルナ・カルメロルツ領へ向かいます」






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